第6話 俺何したんですか会議
観月くんから連絡が来た。
竜崎大輝はスマホを見つめていた。
正確には。
最後のメッセージを。
『覚悟してください』
「怖い」
素直な感想だった。
何をした。
俺。
何をした。
分からない。
だが。
確実に何かをやった。
しかも結構大きめの何かだ。
でなければ。
『覚悟してください』
なんて送られてこない。
「怖い……」
その時だった。
「隊長」
隣から声がした。
後輩隊員の佐野だった。
「さっきから何見てるんですか」
「いや」
「彼女ですか」
「違う」
「じゃあその顔なんですか」
そんな顔をしていたらしい。
「俺さ」
「はい」
「飲み会で記憶なくしたんだけど」
「最低ですね」
「早くない?」
「事実ですよね」
否定できなかった。
「で」
「はい」
「病院の人から覚悟してくださいって来た」
佐野が真顔になった。
「何したんですか」
「だから分からないんだって」
「怖すぎる」
「俺もそう思う」
怖すぎる。
非常に怖い。
そこへ。
「竜崎」
別の声が飛んできた。
先輩隊員の中村だった。
「なんかやらかしたらしいです」
佐野が即報告した。
「また?」
「またじゃない」
「酒か?」
「酒です」
「酒だな」
二人とも即答だった。
ひどい。
「覚えてないんですよ」
佐野が説明する。
「病院の人に何かしたらしくて」
「病院?」
「セントラル病院」
中村が少し考える。
「ああ」
「?」
「観月くんか」
竜崎は目を瞬いた。
「なんで分かったんですか」
「お前飲み会でずっと話してた」
「え」
「気付いてなかったのか」
気付いていなかった。
「観月くん優しいからなあ」
「仕事できるし」
「そうなんですよ」
思わず頷く。
本当に仕事ができる。
引き継ぎもしやすい。
気配りもできる。
話しやすい。
そして。
今怒っている。
「……」
余計怖くなった。
「何したんだよ」
中村が笑う。
「だから覚えてないんですって」
「キスとかじゃないですか」
佐野が軽い調子で言った。
「ないない」
竜崎は即答した。
「ですよね」
「さすがにない」
ない。
絶対ない。
たぶん。
おそらく。
「……」
その時だった。
ふと。
記憶の断片が浮かぶ。
夜道。
誰か。
近い距離。
いい匂い。
柔らかい感触。
「……」
「隊長?」
「いや」
嫌な予感がした。
非常に嫌な予感が。
「まさかな」
「何ですか」
「なんでもない」
気のせいだ。
たぶん。
きっと。
そうであってほしい。
その時。
スマホが震えた。
【観月くん】
「うわっ」
思わず声が出た。
佐野と中村が覗き込む。
「来た」
「来ましたね」
「観月くんだ」
竜崎は恐る恐るメッセージを開いた。
『電話できますか』
「終わった」
「まだ終わってません」
「終わった顔してますよ」
「終わったんだよ」
絶対怒られる。
竜崎は本能で理解した。
そして。
なぜか少しだけ。
観月の声を聞くのが楽しみだった。
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