第40話 報告
観月家を出て。
駅へ向かう。
住宅街を二人で歩く。
しばらくして。
「お疲れ様でした」
観月が言う。
「疲れた」
大輝が即答した。
観月が吹き出す。
「正直ですね」
「お前の親に会うんだぞ」
「優しかったでしょう」
「優しかった」
即答だった。
◇◇◇
「父さん」
大輝が言う。
「はい」
「かっこよかったな」
観月が少し笑う。
「喜ぶと思います」
「あと母さんも優しかった」
「そうですね」
「観月の親だなって感じだった」
観月は少し目を丸くする。
「どういう意味ですか」
「そのままの意味」
大輝は笑った。
◇◇◇
駅に着く。
ホームで電車を待つ。
その時。
大輝のスマホが震えた。
家族グループメッセージだった。
『どうだった?』
菜月。
『どうだった』
勇輝。
『どうだった?』
美咲。
『どうだった^^』
母。
『どうだった』
父。
「早すぎるだろ」
大輝が呟く。
観月が覗き込んだ。
そして笑う。
「皆さん気になってたんですね」
「気にしすぎだ」
◇◇◇
大輝は返信する。
『無事終わった』
数秒後。
『よし』
父。
『よし』
勇輝。
『よし』
菜月。
『よし』
美咲。
『よし^^』
母。
「何なんだよ」
観月が笑いを堪えている。
◇◇◇
『ご両親どうだった?』
母。
『優しかった』
大輝。
『でしょうね』
菜月。
『観月さんの親だし』
勇輝。
『分かる』
美咲。
会ったこともないのに納得していた。
◇◇◇
『お父さんは?』
勇輝。
『医療の話で盛り上がった』
大輝。
『想像できる』
菜月。
『めっちゃ想像できる』
美咲。
『楽しそうだった?』
母。
『楽しそうだった』
大輝。
すると。
『良かった』
父。
珍しく短い言葉だった。
◇◇◇
その返信を見て。
観月が少し笑う。
「お父さん、優しいですね」
「まあな」
大輝も笑った。
◇◇◇
その日の夜。
中央消防署。
休憩室。
「どうでした!?」
佐野が飛んできた。
予想通りだった。
「何が」
「観月さんのご両親です!」
「近い」
大輝はまだ座ってもいない。
◇◇◇
「優しい人だった」
「ですよね!」
なぜか佐野が得意げだった。
「行ったことないだろ」
「ないです!」
即答だった。
◇◇◇
「それで?」
佐野が身を乗り出す。
「それで?」
中村まで聞いてくる。
大輝が少し笑った。
「親父さんと医療の話で盛り上がった」
「あー」
中村が納得する。
「そうなるな」
「なりますね」
佐野も頷く。
◇◇◇
「救急救命士と外科医ですもんね」
「話合いそう」
佐野が言う。
「実際合った」
大輝。
「おお」
中村が笑った。
「良かったな」
◇◇◇
「で」
佐野が聞く。
「で?」
「気に入られました?」
大輝が止まる。
数秒考える。
そして。
「たぶん」
そう答えた。
中村が笑う。
佐野も笑う。
「それなら十分ですね」
「ですね」
◇◇◇
その頃。
セントラル病院。
夜勤休憩中の観月のスマホにも。
菜月からメッセージが届いていた。
『兄ちゃん無事だった?』
『無事でした』
『良かった!』
『ありがとうございます』
『今度感想聞かせて!』
観月は思わず笑う。
そして思った。
自分の恋人は。
思った以上に。
たくさんの人に見守られているらしい。
読んでいただきありがとうございます!
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