第36話 手土産相談
観月家訪問が決まった数日後。
中央消防署。
休憩時間。
大輝はスマホを見ながら唸っていた。
「どうした」
中村が聞く。
「手土産って何持っていけばいいんですか」
中村が止まった。
「は?」
「今度、観月の実家行くことになって」
数秒後。
「おお」
中村の顔が完全に面白がっていた。
「何ですか何ですか?」
佐野が飛んできた。
「竜崎さん結婚するんですか?」
「しない」
「観月さんのご両親!?」
「そう」
「うわあああ!」
声が大きい。
「佐野」
「はい」
「声」
「すみません」
全然反省していなかった。
「それで手土産なんですけど」
大輝が話を戻す。
すると。
「焼き菓子」
中村が即答した。
「焼き菓子です」
佐野も即答した。
「何でそんな早いんですか」
「奥さんに聞いた」
中村。
「僕も姉に聞いたことあります」
佐野。
まさかの経験者だった。
「酒とかじゃないんですか」
「やめとけ」
中村。
「やめた方がいいです」
佐野。
即却下だった。
「焼き菓子です」
「焼き菓子ですね」
なぜか二人とも自信満々だった。
◇◇◇
その日の夜。
大輝のスマホが鳴る。
家族グループメッセージだった。
『手土産決めた?』
菜月。
『まだ』
大輝。
『焼き菓子』
母。
『焼き菓子だな』
父。
『焼き菓子』
美咲。
『焼き菓子』
勇輝。
全員同じだった。
『お前ら示し合わせた?』
『してない』
即返信。
◇◇◇
翌日。
休憩時間。
「竜崎さん!」
佐野がやってくる。
「何だ」
「姉から返信来ました!」
「聞いたのか」
「聞きました!」
聞いたらしい。
「焼き菓子だそうです!」
「またかよ」
「あと箱が綺麗なやつ」
大輝が止まる。
「……母さんも同じこと言ってた」
「ほら!」
佐野がなぜか得意そうだった。
◇◇◇
その日の夜。
再び家族グループメッセージ。
『焼き菓子買った』
大輝。
数秒後。
『よし』
父。
『よし』
勇輝。
『よし』
菜月。
『よし』
美咲。
『よし^^』
母。
大輝はスマホを見つめた。
「何なんだよ」
思わず呟く。
すると。
『写真』
菜月。
『写真』
勇輝。
『写真』
美咲。
『写真^^』
母。
『確認』
父。
「親父までかよ」
大輝が頭を抱える。
『見たい』
菜月。
『見たい』
勇輝。
『見たい』
美咲。
『見たい^^』
母。
『確認』
父。
全く引く気がなかった。
◇◇◇
数分後。
大輝は諦めた。
箱の写真を撮る。
家族グループメッセージへ送信。
すると。
『良いじゃん!』
菜月。
『箱綺麗だな』
勇輝。
『センスある』
美咲。
『素敵^^』
母。
『うん』
父。
「何でみんなそんな真剣なんだ」
大輝は本気で分からなかった。
◇◇◇
その頃。
セントラル病院。
夜勤休憩中の観月は何も知らない。
自分の恋人が。
家族と消防署の先輩後輩を巻き込みながら。
全力で手土産会議をしていたことを。
そして。
竜崎家全員が。
観月家訪問を。
本人以上に楽しみにしていることを。
読んでいただきありがとうございます!
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