第35話 そういえば
お盆休みが終わって数日後。
夜。
中央消防署。
休憩時間。
大輝はスマホを見ていた。
その時、家族グループメッセージが動く。
『そういえば』
送信者は父。
珍しい。
大輝は少し驚いた。
『何だ?』
勇輝が返す。
『亮太くんのご両親に挨拶したのか』
数秒、誰も返事をしなかった。
◇◇◇
『してない』
大輝が返した瞬間、家族LINEが動いた。
『え』
『え』
『え』
『え』
菜月、美咲、勇輝、母。
全員同じ反応だった。
◇◇◇
『ご挨拶は大事よ』
『まだ早い』
『早くない』
『早くないな』
『早くない』
『早くない』
母、大輝、菜月、勇輝、美咲、父。
全員一致だった。
◇◇◇
『お前ら暇なのか』
『暇じゃない』
『でも気になる』
『分かる』
『分かる』
大輝、美咲、菜月、勇輝、母。
父までスタンプを押した。
◇◇◇
『亮太くん何て言ってるんだ』
『別に何も』
『それは亮太くんが気を遣ってるだけでは?』
『それだ』
『それだな』
『それね』
父、大輝、美咲、菜月、勇輝、母。
◇◇◇
『お前らさ』
大輝が頭を抱える。
すると。
『ちゃんと行きなさい』
『うん』
『頑張れ兄ちゃん』
『応援してる』
『手土産忘れないで』
母、父、菜月、勇輝、美咲。
完全に決定事項になっていた。
◇◇◇
『だからまだ決まってない』
大輝。
その瞬間。
『今度亮太くんに聞いてみる』
『やめろ』
菜月と大輝のやり取りは即レスだった。
◇◇◇
その頃。
セントラル病院。
夜勤休憩中。
観月のスマホが震える。
『菜月さん』
表示を見て首を傾げた。
『こんばんは!』
『こんばんは』
明るいメッセージに観月も返す。
すると。
『観月さん』
『はい』
『兄ちゃんって観月さんのご両親に挨拶した?』
観月は固まった。
数秒。
完全停止。
◇◇◇
『してません』
正直に返す。
すると。
『だよね!!!』
『やっぱり!!!』
菜月。
その後ろで家族グループメッセージは、
『聞いた』
『どうだった』
『何て言ってた』
で盛り上がっていた。
そして。
大輝だけが知らない。
自分の知らないところで。
観月家訪問計画が。
着々と進められていることを。
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