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第33話 妹と観月


 お盆最終日。


 朝。



「観月さん」


 菜月が言った。



「はい」



「今日暇ですか」



「予定は無いですね」


 観月が笑う。



「良かった」


 菜月も笑った。



「買い物付き合ってください」



 ◇◇◇



「買い物?」


 大輝が聞く。



「うん」


 菜月が頷く。



「観月さんおしゃれだから」


「服見てほしい」



 観月は少し驚いた。



「僕ですか?」



「観月さんです」


 

 即答だった。



 ◇◇◇


 

「じゃあ送る」


 大輝が言う。



「送るだけ?」


 菜月。



「いや」



「一緒に行く」



 当然だった。


 菜月は勇輝を見る。


 勇輝は笑っていた。



「兄ちゃんだしな」



「お兄ちゃんだもんね」



 母も笑う。



 ◇◇◇



 ショッピングモール。


 到着して十分後。


 大輝は後悔していた。



「観月さん」


 菜月。



「はい」



「これどうですか?」


 観月は服を見る。


 少し考える。



「似合うと思います」



「ほんと?」



「うん」



「菜月さん明るい色似合いますし」



 菜月の目が輝いた。



「えー!」



「嬉しい!」



 ◇◇◇



「こっちとこっちなら?」



「こっちですね」


 観月。



「なんでですか?」



「普段の服装に合わせやすいので」



「なるほど!」



「あと菜月さんこういう色好きですよね」


 菜月が固まる。



「そう!!」



 完全に当たっていた。



「観月さんセンス良……」


 感動している。



 ◇◇◇



 一方。


 大輝。


「……」



 暇だった。


 非常に暇だった。


 完全に女子会みたいだった。


 入る隙がない。



 ◇◇◇



「兄ちゃん」


 菜月が振り返る。



「何」



「そこ邪魔」



「何で」



「服見えない」



 理不尽だった。


 観月が吹き出した。



 ◇◇◇



 しばらくして。



「そうだ」


 菜月が言う。


「兄ちゃんの服も見よう」



「俺?」


 大輝が自分を指差す。



「うん」



「せっかくだし」



 観月も頷いた。



「いいですね」



 完全に二対一だった。



 ◇◇◇



 数分後。


 菜月は一着の服を持って戻ってきた。



「これ」


 黒のサマーニット。


 

「絶対似合う」



「俺こういうの着ないぞ」



「だから着るの」

 


 有無を言わせない。



「観月さんもそう思いますよね?」



 急に話を振られる。



「え?」



「似合いそうですよね?」



 観月は服を見る。


 それから大輝を見る。



「……似合うと思います」



「ほら」



 菜月が勝ち誇った。



 ◇◇◇



 数分後。


 試着室のカーテンが開く。


 大輝が出てきた。


 黒のサマーニット。


 黒のスラックス。


 シンプル。


 なのに。


 妙に目を引いた。


 肩幅の広さ。


 しっかりした体格。


 長い脚。


 普段のネイビーシャツやTシャツとは違う。


 落ち着いた大人っぽさがあった。



「……」



 観月は思わず言葉を失う。


 一瞬だけ。


 本当に一瞬だけ。


 見惚れた。



 ◇◇◇



「どう!?」


 菜月が聞く。


 観月は我に返った。



「……似合います」

 


 少し遅れて返事をする。



「でしょう!?」



 菜月は満足そうだった。


 しかし。


 見逃さなかった。


 菜月は。



(今固まった)


(観月さん今見惚れた)



 心の中で確信する。



 ◇◇◇

 


「そうか?」


 大輝は首を傾げる。


 自覚はない。



「はい」



 観月は少し笑った。



「格好良いと思います」



 その言葉に。


 今度は大輝が少し照れた。


 菜月は吹き出しそうになる。


 この二人。


 本当に面白い。



 ◇◇◇



 夕方。


 買い物終了。


 帰宅。



「ただいまー」


 菜月が荷物を置く。



「おかえり」


 母。



「楽しかった?」


 勇輝。



「めっちゃ楽しかった」


 菜月が即答する。


 そして。



「聞いて」


 勇輝を見る。



「何」



「観月さん」



 父も新聞を下ろした。


 母も振り返る。



 ◇◇◇



「兄ちゃん見て固まってた」



 沈黙。


 数秒。


 勇輝が吹き出した。



「マジ?」


「マジ」


 菜月。



「試着室から出てきた瞬間」



「見惚れてた」



 父。


「ほう」



 母。


「まあ^^」



 ◇◇◇



「兄ちゃん気付いてた?」


 勇輝。

 


「気付いてない」


 菜月。



「だろうな」


 父。



「気付かないわねぇ」


 母。


 全員一致だった。



 ◇◇◇



 その頃。


 二階。


 観月と大輝は荷造りをしていた。



「今日楽しかったです」



 観月が言う。



「そうか」



 大輝が笑う。



「菜月さん服選ぶの上手ですね」



「だな」



 少し沈黙。


 観月は服を畳みながら。


 ぽつりと続けた。



「あと」



「ん?」



「今日の服」



 大輝が顔を上げる。



「似合ってました」



 観月は自然に言った。


 何でもないことのように。


 でも。


 大輝は一瞬止まった。



「……そうか」



「はい」



 観月は笑う。


 その様子を見ながら。


 大輝も少しだけ笑った。


 やっぱり。


 この人には敵わないと思った。


 そして一階では。


 菜月が勇輝と母と父に向かって。


「ほらね」


 と得意そうに言っていたのだった。

読んでいただきありがとうございます!

毎日12時に投稿予定です५✍⋆*

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