第29話 次いつ来る?
観月が竜崎家へ遊びに行ってから。
まだ一週間も経っていなかった。
その日の昼休み。
大輝のスマホが震える。
家族グループメッセージだった。
母
『亮太くん元気?』
大輝
『元気』
母
『そう』
終了。
「何なんだ」
思わず呟いた。
◇◇◇
数分後。
再び通知。
今度は菜月だった。
菜月
『次いつ来るの?』
大輝
『誰が』
菜月
『観月さん』
大輝
『知らない』
菜月
『聞いて』
大輝
『自分で聞け』
菜月
『連絡先知らない』
大輝
『そうか』
菜月
『聞いて』
しつこい。
◇◇◇
夜。
消防署。
休憩中。
スマホを見る。
今度は勇輝だった。
勇輝
『観月さん今度ゲームやるって言ったよな?』
大輝
『言ったな』
勇輝
『いつ?』
大輝
『知らない』
勇輝
『聞いて』
大輝
『なんで俺が』
勇輝
『兄ちゃんだろ』
理不尽だった。
◇◇◇
翌日。
また通知。
今度は美咲だった。
美咲
『亮太くん元気?』
大輝
『元気』
美咲
『今度うちの子連れて行く』
大輝
『どこに』
美咲
『実家』
大輝
『なんで』
美咲
『亮太くんに会わせる』
大輝
『なんで』
美咲
『良い人だから』
意味が分からなかった。
◇◇◇
そして。
数日後。
休日。
観月の部屋。
ソファ。
二人並んでいた。
その時。
また通知が鳴る。
「……」
大輝は画面を見た。
家族グループメッセージ。
開く。
父
『次いつ来る』
大輝
『俺?』
父
『亮太くん』
即答だった。
「親父までか」
思わず額を押さえる。
「どうしました?」
観月が不思議そうに聞く。
大輝はスマホを差し出した。
観月が画面を見る。
数秒後。
吹き出した。
「ははっ」
珍しく声を上げて笑っている。
「人気者だな」
大輝が言う。
すると。
観月は少し困ったように笑った。
「皆さん優しいですから」
「違う」
「?」
「お前が好かれてる」
観月は首を傾げる。
全く自覚がない。
そこへ。
さらに通知。
菜月だった。
『観月さん元気?』
勇輝
『ゲーム忘れてない?』
美咲
『今度うちの子連れて行くね』
母
『またご飯食べに来てね』
父
『BBQやるか』
一気に増える。
「すごいですね」
観月が笑う。
「すごいだろ」
「仲良しですね」
「いや」
大輝は即座に否定した。
「おかしい」
「そうですか?」
「おかしい」
本当におかしい。
だって。
この前会ったばかりだ。
それなのに。
家族全員。
観月の話しかしない。
◇◇◇
その日の夜。
再び家族グループメッセージ。
母
『今度のお盆どうする?』
大輝
『帰る』
母
『亮太くんも?』
大輝
『行くと思う』
数秒後。
菜月
『やった』
勇輝
『ゲームしよう』
美咲
『子供連れて行く』
父
『肉買っとく』
大輝
『俺も行くんだけど』
沈黙。
そして。
美咲
『知ってる』
勇輝
『知ってる』
菜月
『知ってる』
母
『知ってる』
父
『知ってる』
全員だった。
大輝はスマホを見ながらため息を吐く。
その様子を見て。
観月が笑う。
「愛されてますね」
「誰が」
「大輝さんの家族に」
その言葉に。
大輝は少しだけ笑った。
そして。
「まあ」
観月の肩を引き寄せる。
「俺も嬉しいけどな」
観月は少し照れながら笑った。
その横で。
竜崎家の家族LINEは。
すでに次回の観月歓迎会の話で盛り上がっていた。
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