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第24話 観月くんはずるい


 休日。


 竜崎の部屋。


 ソファ。


 映画は終わった。


 テレビではエンドロールが流れている。


 その横で。



「すごいですね」


 

 観月が呟いた。



「何が?」



 竜崎はテレビ画面から顔を逸らす。


 すると。


 観月の視線は竜崎の腕へ向いていた。



「筋肉です」



「筋肉」



「はい」


 

 真面目な顔だった。


 いつもの観月だった。



「鍛えてますもんね」



「仕事で必要だからな」



「すごい」



 感心したように言う。


 そして。


 触った。



「……」



 竜崎は固まった。


 観月は気付いていない。


 本当に。


 全く。


 気付いていない。

 


「硬いですね」



 腕を軽く押す。



「……」



「肩もすごいです」



 肩を触る。



「……」



「背中も広い」



 観月は純粋に感心していた。


 医療職らしいと言えばらしい。


 人体への興味。


 筋肉への興味。


 それだけ。


 それだけなのだが。



「観月くん」



「はい」



 観月は顔を上げる。


 そこで初めて。


 竜崎の表情に気付いた。



「どうしました?」



「どうしたと思う?」

 


「?」



 本当に分かっていない。


 竜崎は思わず額を押さえた。



「無防備すぎる」



「何がですか」



「それ」



「筋肉ですか」



「違う」



 観月は首を傾げる。


 その仕草がまた良くない。


 本人は知らない。


 知らないまま。


 近付いてくる。



「痛いところでもありますか?」



 今度は腕を取られる。



 確認するように。


 軽く触れられる。


 竜崎は大きく息を吐いた。



「亮太」



「はい」



 名前で呼ばれて。


 観月の肩が少し揺れた。


 まだ慣れていない。



「それ反則」



「だから何がですか」



「全部」



 意味が分からない。


 そんな顔だった。


 竜崎は苦笑する。


 本当にずるい。


 本人だけ。


 全然分かっていない。

 


「俺も男だから」



「知ってます」



「そうじゃなくて」



 観月は首を傾げた。


 竜崎はその肩を引く。

 


「え」



 距離が近付く。


 一気に。


 観月の目が大きくなる。



「大輝さん?」



「遅い」

 


「何がですか」



「気付くの」



 竜崎は少し笑った。


 困ったように。


 愛しいものを見るように。



「好きな人にあんまり触るな」



 観月の耳が赤くなる。



「……」



「分かった?」

 


 観月は返事ができない。

 

 代わりに小さく頷いた。


 その反応が可愛くて。


 竜崎はさらに困った。



「本当にずるい」



 小さく呟く。


 そして。


 そっと額を寄せた。

 


「亮太」

 


「……はい」

 


「好き」



 観月は目を閉じる。


 次の瞬間。


 優しく唇が触れた。


 短く。


 穏やかに。


 それだけ。


 離れると。


 観月の顔は真っ赤だった。



「……」

 


「顔赤い」

 


「誰のせいですか」



「俺か」

 


「あなたです」



 竜崎は笑う。


 観月は顔を逸らす。


 結局。


 今日も振り回されたのは観月だった。



 ――いや。



 本当は。


 最初に振り回されたのは。


 竜崎の方だったのかもしれない。

読んでいただきありがとうございます!

毎日12時に投稿予定です५✍⋆*

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