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救命活動with転生Girls!  作者: 涼雲ルミ
捻くれ少女と面会
92/96

Ⅰ21.尽力令嬢は主人公。

「そうか。分かった、すまないね、ロータス殿、彼女を連れて退出を、」

「は…はい!」


ティーアちゃんが部屋から退出すれば、若干の沈黙が場を支配する。

誰も皆、陛下の言葉を待っているかのように動かない。そんな時、はじめにその沈黙を破ったのは…うーちゃん先輩だった。


「私も帰ってい〜ですか〜?」

どこまでもマイペースな精霊様。しかし、陛下は「少し待て」と言い放つ。……こっちもまたマイペースだな。

先程放たれたナイフを回収し、そのままうーちゃんに向かって口を開く。


「……これ以上待ってたらおばあちゃんになっちゃうんですけど、」

それは言葉の綾だろうか。

少なくとも1000年生きてる精霊がシワシワのおばあちゃんになる未来が見えない。


「言いましたよね?……邪魔をするなら容赦しないって、」

陛下を可愛く睨みつけるうーちゃん先輩。

陛下は少しため息をつき、そのまま「あぁ、」と力なく呟いた。相当疲れてるよこの人、一旦休んでほしい。


「もちろん、邪魔はしない。むしろ、折行って話したいことがあるのだ」

「まあ!なんですかぁ〜?」

邪魔はしないと言われ安心したのか、小さな殺気は見せずにふわふわとして国王陛下に向かっていくうーちゃん。

ジャンルカ宰相が、「水精霊様だけでなく、貴方方にもですが」と私達を見ながらそう付け加えてくれる。

突然指名された私達は、各々辺りを見た。

モーセはアロンさん達故郷の人達の方やエレミヤさんを、ネフェルちゃんは男爵様と私達とを見比べる。

リスクはアスタさんを見ながらアボイドちゃんを抱き締め、お兄様もお母様と国王陛下を見回した。

嫌な予感の末、私は一人で下を向いて俯き国王陛下の言葉を待った。


「君達のその力を、…どうか貸してほしい。先程話が上がったように、1000年間音沙汰が無かった“大罪魔導師”が復活した可能性があるのだ」


大罪魔導師…

それは、【古の乙女と永遠なる誓い】第三作目から登場する設定だ。しっかりとこの頭に刻み込まれてある。

簡潔に述べるのであれば、大罪魔導書に選ばれた人が、大罪魔導師と呼ばれるとのこと。第三作目では「嫉妬」「傲慢」「怠惰」「憤怒」「強欲」「色欲」「暴食」を担当する計7人が該当していた。…その上に、更なる強さを持つラスボスが立っていたのである。

それぞれ第三作目に登場する主人公サイドの「慈愛」「忠義」「勤勉」「寛容」「分別」「純潔」「節制」のイメージに合わせて敵が構成されていたのだと思われ、アニメでは第一作目のような最終決戦…所謂全員集合かつここは俺に任せて先に行け決戦だった。

第三作目ではその大罪魔導師7人が倒されてハッピーエンドを迎えた物語だったが、以降の物語で、【魔導師が消えても魔導書は消えない】、というフレーズと共に別の担当者が復活しており、その度にユーザーを驚きと歓喜と恐怖とでいっぱいにしていた。

登場はとてつもなく嬉しいけど、攻略するのに困難って言うね。かくいう私もその一人だったのだが、正直第三作目の初代っ子の印象が強すぎてそれ以降の子達はあまり思い出せない。第四作目以降は家庭の事情も重なってたし、思い出せないのも無理はないよねって自分に言い聞かせているのだ。


ちなみに、大罪魔導師は1000年前から存在していた。

それはうーちゃん先輩の反応から見てもゲームの設定通りで間違えないだろう。

てことでつまり、恐らくは私が初代だと思っているメンツが実は初代でなく、更にこの1000年間のうちにうーちゃん先輩が知っているメンツと入れ替わりなどが行われているという可能性も考えられる。

つまり、この段階での大罪魔導師が誰なのかは不明。

大罪魔導師達の過去なんかは一部掘り下げがあったんだだけど、…肝心の根源である大罪魔導書の秘密はゲームで明かされることは無かった為、若干不安だ。

それに、第三作目がいつの話なのか分からない以上、心して聞くべきだろう。第一作目と第二作目の差が数年だということは攻略対象者の年齢から大体推測出来るけど。

…だからこそ、いつの話なのか分からない第三作目は非常に怖い。


しかも、気になるのは大罪魔導師の件だけではない。

先程の国王陛下の言葉はまさに、第一作目開始時のプロローグ後初めのエピソード。王子との再会を果たしたセラフィーナが、他の攻略対象者と出会う時の文言とそっくりだ。


―『君達のその力を、…どうか貸してほしい。先程話が上がったように、最近我が国では魔物の無差別被害が増えているのだ』


あの時は魔物が増えたから、という理由だった。

特に初めは蠍や蛇等の大群の無差別被害。…でも、そのことが告げられるのはまだ先の筈。しかも、今日告げられたのは大罪魔導師のこと、どういうことなんだ…?

第三作目から入った私からしたら、その時の攻撃も大罪魔導師の仕業だったんじゃ…と思っていた時期もあったなと思いながら考え始める。


「…ふーん、それで大罪魔導師をどうするつもりなんですか?」


うーちゃん先輩はじっと見つめ、陛下に向かってそう言い放つ。

異様な光景に見えるのが普通なのだろうけれど、私からしたらあまり気にならない。むしろ、少しキツい言い方のうーちゃん先輩に違和感を覚える。


「……倒す、民を守る為に」

「………貴方ごときに出来るとでも思っているのですか?」

「…クリストファー様は託してくれた」

「彼ができなかったからでしょう?…それを、…クリストファー様を…貴方は超えられるの?」


間髪入れず進んでいく、ゲームの知識では分からない世界。

……そもそもクリストファー様っていう人がゲームにいること自体知らないし、……クリスティーナ様のお兄様の名前…ホントにクリストファー様だったっけ?って感じなんだけども。


「………超えてみせる、」


うーちゃん先輩と目を合わせ、そう言い切る陛下。

うーちゃん先輩は諦めたのか、「あっそ」とぶっきら棒に呟いた。


「君達はどうするの?」


そして、今度は私達に向かってそういう。

すると、私やお兄様よりも先に…彼が口を開いた。


「お、俺は…!」


…モーセだった。先程までずっと黙っていたモーセが、ようやく口を開いたのだ。


「元々学園卒業したらギルド登録する予定だったし…だから、やります、やる…もっと、強くなる為に!」

チラリとアロンさんの方を見ながらも、国王陛下に向かってそう言うモーセ。その後すぐに、「でも!」と言い放つ。

「ネーちゃんはダメだから!」

初めはネーちゃんって聞いて姉がいるのかと想像した私だったが、どうやらネフェルちゃんのネから取ってネーちゃんと呼んでいるらしかった。

突然そちらに飛び火したことで驚いたのか、ネフェルちゃんは頬を膨らましてモーセを見あげた。


「なっ…なん…どうしてよ!」

「どうしてもだから!!!」

小声で会話をするモーセとネフェルちゃん。

そういえば、モーセの苗字…アロンさんはアロン・ナイルって言ってたし、弟であるモーセもモーセ・ナイルなのだろう。だとしたらミリアムさんことミリアム・ナイルさんの弟でもあるんだよね。

改めて見れば、3人とも目の形が似てるような気がしなくもない。



「僕もやります、」「俺もやらせてください」


そんな二人を尻目に、リスクとお兄様も声を上げた。

2人はほぼ同時に声を上げており、国王陛下とうーちゃんを真っ直ぐに見つめる。


「昨日分かりました、僕らは学園で守ってもらっているんだって、だから守りたいんです。大好きな人を、自分の手で守れるようになりたい」

ゲームでは、守れなかったことを悔やんでいたリスク。

大好きな人を守れず、それを自分の所為だと思い、復讐の道を選んだ。笑顔になることは無く、無表情で、ただ復讐という言葉しか頭に無かった。


「恩返しをしたいんです。助けてくれてありがとうを、言葉だけでなく行動で伝えたい!」


そんな彼が、口にしたのは…、復讐なんかではなく、別の道に対して。

…今、彼は!大きな決意を持って、…“やらなきゃならない”ことではなく、“やりたいこと”を選んだのだ。



「我々は騎士の皆さんに遠く及びません。ですが、それでも出来ることはやりたいから。童話のように全てが上手くいく訳じゃないかもしれない。だけど、それでも…」


そして、お兄様はそう言って口を噤む。

意識してかせずかは分からないが、一瞬だけティーアちゃんが去っていった扉を振り向く。すぐに国王陛下の方を向いているけれど。

ゲームでは妹に一途で、少しの人にしか心を開かなかった。

…少し前に思い出したけど、お父様やお母様はあの時亡くなっていた。だから魔力器測定の時も舞踏会にもいなかったんだ。

それで、そこからお兄様は一人で…あんな子供の頃から公爵当主の座についた。…まだ、年齢は一桁台だったそんな子は、妹を守る為だけに生きていた。

だから、妹が大好きで大好きでたまらなかったんだろうな。守らなきゃって…思いすぎてたんだろうな。


「それでも、…未来を担う我々にだって、戦う権利はある筈ですから。是非協力させて下さい、困っている誰かを…助ける為に。」


そんな人は今、私ではなく…“誰か”を助けたいと願っている。

困っている人を助けたい、と。

自身を傲慢だと卑下していた面影を感じられないくらいに、真正面から国王陛下にそう言い切る。第三作目の王道ルートくんのように、忠義の心を持っているみたいだ。

妹に一途だったレオンハルトお兄様も格好良いけど、…ティーアちゃんを見る目が優しくなっている気がするのも忘れてはならないだろう。…好きでしゅ。


「…ありがとう、」


国王陛下は、先程までとは違い、穏やかな微笑みを浮かべていた。…そうか、そうだったんだ。…そうだよね。

国王陛下は、ティーアちゃんの…クリスティーナ様の子孫で、イグニス様のお父様で。…嫌いだとか苦手だとかそう言う人、って言われてるけど…それでも一人の人間なんだ。

…そんな人が、心の底から悪い人なわけがない。



「…私も、やらせてください!」


だから、こそ。

ゲームでは伝説であるティーアちゃんが協力するのなら、ゲームでは完璧超人なお兄様が協力するのなら、ゲームでは復讐の道を選んだリスクが協力するのなら、…ゲームではメイン登場すらしなかった筈のモーセが、協力するというのならば。


―…ゲームでは主人公でありヒロインだったこの私…セラフィーナ・エンシャンツが協力しないでどうするのよ。


主人公として、死ぬまで任務を全うする。それが主人公としての責務でしょう? 大丈夫、私なら出来る。今まで頑張ってきたじゃん。パパやママや弟が事故で亡くなったあの日から、困っている周りの人は私の手で守り抜くんだって…そう誓った。

だから、私はやれる。…ずっとずっと前から、もう覚悟は決まっている。生まれる前から決めてるんだから。

…この人生は私自身が自分で決めた道だと思うから。

だから、自分ができる精一杯のことを…やり遂げていきたい。…それが私の永遠なる誓いだよ。







結局、私達は協力することになった。

ネフェルちゃんだけはモーセの猛反対により実戦以外を担当することになったみたいだったけれど。

その時ネフェルちゃんから、「絶対会いに来てくださいね!私からも会いに行きますから、約束ですよ…!」と微妙に泣き気味で言われたのは印象深い。モーセからの視線が濃くなったし。

まあ、「クラス同じだしほぼ毎日会えると思うよ??」と言ったらクールながらもぱぁっと華やかな笑みを浮かべてくれたから良しとしよう。

ネフェルちゃんの運動音痴は私も見ちゃったからね。ティーアちゃん以上に走れてなかったから、相当なんだと思う。


詳しいことは学園で説明があるそうで…、何かあったら王子伝手か君達自らここに来てくれ、と言われ解散となった。


部屋を出ると、廊下でティーアちゃんが待っててくれていた。


「ティーアちゃん!待っててくれたの!?」


思わず駆け寄ってしまう。後ろ上あたりからうーちゃん先輩も飛んで、ティーアちゃんに飛びついた。


「ティーアちゃぁぁん!!!」

「うーちゃん…セラフィーナ様……落ち着いてください…っ」

ティーアちゃんは曖昧に笑みを浮かべながらうーちゃん先輩を受け止めた。

……様って呼ばれてちょっぴり寂しいような気持ちもあるけれど、…私だけの秘密ってことでちょっぴり嬉しいような気持ちもある。


「私ね、大罪魔導師のこと協力することにしました!

…だけど、ティーアちゃんは何もしないでくださいね」

「大罪魔導師…???」


若干引きつったような笑いを浮かべるティーアちゃん。

確定で知っているのだと思われる。うーちゃん先輩は念押しするかのように目を合わせた。私も、ティーアちゃんにはなるべく平穏無事に暮らしてもらいたいから、……頑張らないとなって思う。


「そ、それより!!そろそろ帰りましょう!明日も学校だから!」

空気を変えようと私は声を上げた。すると、お兄様がティーアちゃんに向かって口を開いた。


「……そうだな、……俺が送ろう」

「ありがとうございます?レオンハルト様?」


なんだかんだ物申したいことはあるのだろう。

普通に、初めて出会った数年前からティーアちゃんの身体にはクリスティーナ様が乗り移ってて、今は君達のこと何も覚えてない子供です〜って可能性もあるわけだし。

まあ、お兄様は全然そう思ってなさそうだったけれど。


馬車乗り場について、私達はそれぞれ帰ることになる。

ロータスさんが申し訳なさそうにしていたけれど、お兄様は持ち前のイケメンフェイスで乗り切っていた。


「またね、ティーアちゃん!」

「ええ、ばいばい」

私達はハイタッチをして別れ、その後私はお母様とキャンディさんと共に家に帰る。


……にしても、今日も昨日と同じくらい濃い1日だったな。

昨日はゲームとは関係ない所で濃かったけど、今日はガッツリゲームに関わる内容だったから余計に頭を使った気がする。


落ち着いたらまたあそこに行ってみたいな。…私もギルドの登録してみたいし。

第三作目の主人公は確か、初めに国外追放とかなんかになって…ギルドに登録してたから。

…そして、どの国の領地でもない辺境の地に冒険して…、それで大罪魔導師とかクリスティーナ伝説のことが深掘りされてって……


それで……


「……しゅ…、が…て…」


それで、種族も増えた。

攻略対象者にはハーフエルフがいて、ドラゴンがいて、深く関わってた2人は…ハーフオーガで……。

そんな事を考えながら。…思ったより疲れていたのか、私は眠りについてしまったのだった。




ーーー



大樹からの木漏れ日と共に、少年の元へ手紙が届く。


「……父さん、姉さんから手紙」

「!?!?!? 帰ってくるのか!?」

「いや?全然」

「…………………ガーン」


父親を呆れたような冷たい辛辣な表情で見下ろした後、少年は本を手に取りパラパラと捲り始める。


「………いい加減素直になりなよ、二人共」

「…だって、だって……」

「せめてくよくよしないでくれる?邪魔」


眼鏡の奥から見える射抜くような視線に、父親は「ぐぅ…」と唸る。


「……ったく、……どうでも良いことで喧嘩して…」

「どうでも良くないから!!!」


そしてクヨクヨクヨクヨ体育座りをしている父親を少年は呆れたような目で更に見下ろしていく。




『キャラメーへ。お元気ですか?私は元気です。早速なんだけど、調べ物をお願いしても良いかな。呪いや屍兵についてを知りたいです。父様にはなるべく何も言わないでね。返信待ってます、よろしく』




弟使いの荒い姉だと思いつつも、頼られたことが嬉しかったのか口元を緩ませる少年―キャラメー。

そして姉が気になっていることを調べる為、村の長老の所へと向かうのだった。



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