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救命活動with転生Girls!  作者: 涼雲ルミ
捻くれ少女と面会
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Ⅰ16.捻くれ少女は常識を聞く。

「…おはよう。」

「おはようティーアちゃん。…色々凄いことになってるね?」


気にしないでちょうだいと言う私だったが、…流石に自覚はある。

…何せ、目がパンパンに腫れているのだ。今朝鏡を見た時気づいたのだけれど、恐らくは寝不足だろう。あとは昨晩泣いた所為かしら。昨日からずっとうーちゃんが離れてくれなくって。

眠る時も話しかけてきたのよね、…まあ、無視は出来ないから答えちゃうし、それも含めて自業自得なのだけれど。

目の前にいるセラフィーナさんは心配そうに眉を垂らしてくれている。

現在私達が居るのは、プラーミア学園中等部と小学部の間にある庭園である。

話し合いをしようということで、セラフィーナさんとは昨日「明日は朝早く集合しよう」という打ち合わせをした。その流れ通り、セラフィーナさんは授業開始の1時間以上も前に学園に来てくれていた。

……セラフィーナさんは分かるわ。キャンディさんも分かる。けど…


「レオンハルトさん?リスク??…あと、スピリット様にうーちゃん???」


特に後者2人、何しに来てるの???

…百歩譲ってレオンハルトさんとリスクは分かるのよ、妹想い&兄想いで来ちゃいました〜なら分かる。だけど、精霊2人がここに揃ってるのは異常なのよ!私でも分かるわよ、異常って。せめて交代で来なさいよね、基本同じ国に2人居るなんて聞いたこと無いわよ!?

それだけじゃない。レオンハルトさんは何も変わってないのが救いだけれど、…リスクはどうして髪の毛まで切ってるのよ!来るのは良いけれど、急にそれはあり得ない!

もう、一体何があったのかしら……。


「だってティー…アちゃんとなら王都に行くって言ったも〜ん」

ティーナって言わなかったところは褒めてあげる!けど、それは言葉の綾と言うものでして、出来れば私無しで話を進めていただいても構わないと言いますかなんと言いますか…と言い訳じみたことを言う私。

しかし、反論してきたのはうーちゃんでもスピリット様でもなくまさかのセラフィーナさんだった。


「ティーアちゃん無しで話し合うと、色々厄介なことになりそうな気もするけど…」


だって…と語られるその言葉には絶句以外出てこない。

確かに言われてみれば、私無しでうーちゃんを連れてった場合、変な条件とかつけられる可能性も考えられる。

うーちゃんが少しでもクリスティーナ様に触れたらそれこそ終わりだし、私がクリスティーナなんて言ったらもっと終わりだろう。


「…分かったわ。私も行く、放課後の謁見」

放課後関係者は王城で謁見をすることになったのよね。

ホント困っちゃうわ。部屋でサボ…、いや、お部屋でゆっくりのんびりしたかったのに。巻き込まれ体質って嫌ね。


「それでですね…私、どうしても聞きたいことがあって!」

そう言いながら私達を見回すセラフィーナさん。「昨日キャンディさんとも話したんですけど…」と前置きしながら、まっすぐとした目線で口を開く。


「この世界の常識、教えてくれませんか!」


断片的にしか無いから…と言いながらも、視線は変えない。今まで勉強してきたこともあるだろうに、それ以上求める、ということは…それだけ前世と現世の違いが大きい、ということだろうか。

だとしたら協力しないわけには行かない。私は「もちろん良いわよ」と一言つぶやくと、セラフィーナさんは興味津々でこちらに目を向けた。


「まず、魔法っていうのは基本的に組み合わせて使う物なの。」

「…改まってる所悪いが、多分違うと思うぞ」


あれ? 私が一言説明しただけで、レオンハルトさんからそんなことを言われてしまう。おかしいわね…違ったかしら。それなら…


「えっと…精舞の極や清水の調、あと…魔術の陣は基本的には誰でも使え…」

「ないよ?使えないから!」


今度はリスクに否定されてしまう。

それならば…と色々ある型を言っていくけれど、全てはねられてしまう。それどころか…


「そもそも型は今の時代あまり使われていないかと…」

キャンディさんに申し訳なさそうにそんなことを言われる始末。

……え、型ないの!? い、言われてみれば…他の皆は魔法使うときには大抵、水氷とか風雷、とかしか言ってなかったかもしれない…? あとは単純だけどなーがい魔法詠唱…。

もちろん、セラフィーナさんは例外だけれど…。


「で、でも…!昔エンシャンツ家に行った時、カイザルト様おっしゃっていたじゃない!この家には結界が〜って…」

「あれは魔道具を使ってるんだ、…お父様が結界魔法を使うわけじゃない」


レオンハルトさんにそう言われてしまい、絶句で声も出なかった。

「じゃあじゃあ、基本的にあの長ったらしい詠唱を唱えてるの…?」

「事実上は…そういうことになります。」

キャンディさんが少し困ったようにそう言い放つ。

ここまで来ると、陛下に色々言われても文句は言えなかったのかもしれないと思えてしまった。なるほど、…確かにその点を考えれば私は怪しいわね…


「私にも教えてくださいこの時代のこと…」


これは無理。セラフィーナさんに教えるどころか完全にボロが出たようなものだわ。まさに墓穴を掘る、だったかしら?

「だよね〜」「うんうん!流石ティーアちゃんです♪」

皆して分かってましたみたいな反応は辞めてほしい。

特に精霊2人、普通に声に出てるわよ。これでも私人間なんだから、ちょっとは遠慮とかしなさいよね。


それから、本に載ってる物でもしきたりでもない。

本気の常識、本気の世間一般的理論を教わる。

魔力の器は、聖、光、火、風、水、土、炎、雷、氷、栄、闇、療、打、幽、算、治、斬、呪、機の計19個あり、基本的に一つの属派、しかも自分の魔力器以下の属性しか扱うことはできない。

あ、うん。怖い、全然違う。

セラフィーナさんも何か考えている様子。でも、説明は続いていく。

光属性の魔法はランク付けされており、冒険する際ギルド登録時にステータスカードに記載されるようになる。下級、中級、上級、更に上は特級になり、水魔法の場合、下級は水を手に溜める程度、中級はこの前のセラフィーナさんの水鉄砲程度、上級は上級魔獣に致命傷を与える程度なんだそう。特級は設定されているだけだって。

…うーちゃん、分かりやすいけどやり過ぎ、実際に地面を水で抉らないで。

種族の種類はセラフィーナさんもそこはまだ大丈夫と言ってくれたので省略することに。

精霊やクンペル、ドラゴンにエルフ等、彼らがまだまだ生きてると分かっただけで十分だ。なんならうーちゃんで証明されているし。

ただ問題なのは、それが何処まで浸透しているのか。

ずっと前にセラフィーナさんはこう言っていた、「今の時代にドラゴンが通用するとでも!?」と。つまり、ドラゴンは居ないもの扱いされている。更に、精霊と知った時の皆んなの反応から見ても、精霊は伝説として扱われているのだろう。エレミヤさんもそんな感じの反応していたし、森の汚れ的に何百年もそんな感じだったのだろうと推測できる。

故に、関わりが少なくなっている、ということ。…私が死んでから一体何があったのかしら。


なんだかんだあって、人の声が増え始めた印象。

もう時間も迫ってきているので、最後に一つだけ。


「…クリスティーナ伝説って何?」


そう聞けば、ここにいる全員が黙りこくる。

そういえば皆知ってるんだっけ、私がクリスティーナだってこと。唯一スピリット様は知らないだろうけれど、なんとなく察してはいるだろうしなぁ。

この前エンシャンツ公爵家で見せてもらった物や一般流通本は知っているけれど、…そもそもの根本がよく分からないのよ。

起源は…って想像すればある程度分かるとは言え、想像の領域。鵜呑みにするわけにはいかない。


「…ティーアちゃんと同じ考えだっただけなんじゃないですかっ?」

どういう意味よ、とうーちゃんに聞けば、そのまま私分かってます!みたいな顔をしながらこちらを見てくる。


「昨日皆に手柄を押し付けようとしたティーアちゃんと同じで、あの2人も同じだったってことですよ!」

皆が分からない難問解いちゃいました♪と言う笑顔を見せるうーちゃん。

2人を見てたらなんとなく理解できてしまう所が悔しいし、自分も無意識にそうしていたと自覚してしまえば、そう考えざるを得ない。

ニコニコと機嫌良さげにベンチに座って私を自身の膝の上に乗っけるうーちゃんに何も言えない。

更に、スピリット様や皆があの2人って?と聞いてくるけれど、正直答える余裕はなかった。……2人だけじゃないと思うと、余計に喉がカラカラ干からびてゆく気がした。


「あと、本当の精霊の儀は何百年も前にやめちゃったみたいだね」

それから、話題転換と同時に、「最近復活したけど、」と意味深そうにこちらを見てくるリスク。

う、うるさい!悪かったわね!最初はクセよ!

…けれど、その所為でここにいるのよね、元はと言えば。

あの時やらかさなかったら聖試験を受けることもなくスピリット様と出会うこともなく更に学園に入学することもなかったかもしれない。…まあ、それを言えばスピリット様とレオンハルトさんとの仲直り(?)は果たせなかっただろうし、私が居なくともセラフィーナさんが頑張ってくれただろうけれど、危険に晒してしまう可能性も十分考えられたので、それを考えれば悪くなかったと結論づけることはできる。…結論づけることはできるけど!!!

それに、昨日思ったのよね。私が居なくても成立しそうだなぁと。

元々セラフィーナさんが知っている乙女ゲームに(ティーア)は居ない訳で…。…そこを考えると難しいものね。このまま私が彼らに関わり続けて良いものなのか。


「……あ。呪い、って…どこまで浸透してますか?」


それから、セラフィーナさんが一言そう述べた。

「私は知り合いが研究してたからなんとなくは…」

うーちゃんが何か言いたげな顔をしていたが、私は端的に述べる。これ以上常識知らずだと思われた所で痛くも痒くもないもの。

リスクやレオンハルトさんは「幽呪の一部」としか見られていなかったみたいだったが、キャンディさんは一言…「家の人に聞いてみたら何かわかるかも…?」と述べた。


「やっぱりですか〜?! さしゅがですねぇ〜」

うーちゃんがそう言いながらキャンディさんをよしよしとする。

セラフィーナさんが「聞いてもらっても良いですか…? 返事はいつでも大丈夫なので!」と言い切った所で、朝の会開始10分前の鐘が鳴り響く。


「じゃあ、またあとで」

セラフィーナさんのことを一回撫でて、私達を見ながらそう言うレオンハルトさん。一言ずつ返事をした所で皆同じ方向へと戻っていく。



私も行かないとな…と思うけれど、…うーちゃんが中々離してくれない。

「…うーちゃん?」

私が声をかければ、うーちゃんは背中に顔を押し付けてくる。


スピリット様もどっか行っちゃったのだから、うーちゃんも時間まで落ち着く場所に居れば良いのに。

特にここは人がいっぱいいる所だから苦手なんじゃないかしら、と思いながら、うーちゃんの方を振り向く。

俯いていて表情は見えなかったけれど、…うーちゃんが押し込めていた背中が少しだけ濡れている気がした。さっきまであんなにお姉さんって感じだったのに、…今の彼女は、小さな子供みたいだった。


「…ごめんなさい…っ、…でも、怖くて…」

「……」

そんなに泣かないでよ、って言いたい。けど多分、そんなこと言ったら罰当たりだよね。

そう思ったら、私も瞑った目から雫が零れ落ちてきた。


「…私の方こそ、っ……ごめんなさい。…ごめんね…っっ」

…ずっとずっと、生き続けてくれたんだよね。私が居なくなっても。私だけじゃない、お兄様やお義姉様、スーやリーくん達が亡くなっても、それでもずっとこの世界に居続けた。

1000年間という長い年月を経て、彼女はまた私と出会ってくれた。…私からしたらついこの間のように感じる出来事も、彼女にとってはずっとずっと昔の記憶なのかもしれない。幾ら精霊様だと言っても、生きているし、死ぬこともある。そんな長い時を、…過してくれた。まだ赤ちゃんだった海の精霊は、1000年の時を経て水の精霊に昇格した。

先代の精霊王が引退しても尚、…この世界に残り続けている。


「っ…そういえば、もうすぐお誕生日でしょう?」

「……そう…でした…っけ…っ?」

……私からしたら、貴女が生まれてから10年くらいしか経っていない。…誕生日、忘れちゃったのかしら。もう何年も祝ってないのね、きっと。

「今度さ…お誕生日会、やろ? 何年も溜まってる、…セラフィーナさんや皆もきっと祝ってくれるわ」

私はお兄様達の所為(おかげ)で、生誕祭…なんていう物が作られているけれど、正直私よりも讃えられるのはお兄様の方でしょ、と思う。今の王家はお兄様のことをちゃんと知ってるのかしら。

大罪魔導師の扱いは?古代魔術の研究は?…宇宙魔石の開発は…?

……ホント、お兄様ってば…自分がやったことは何も残さないで、私の居らない所ばっかり残しちゃって。私がやったわけでもないのに私の功績かのように語られたり、その所為で私の存在自体が伝説扱いされてたり、…私、そんなに凄くないんだの。


だけど、…うーちゃんや皆が…私の、私達の背中を見て前に進んでくれるというのなら。

私は、その目標として生きていく。

例え違ったとしても、…その正体を隠してでも、偶像としてでも何でも良いから、なるべく理想に近づけられるように、これから先も生きていくわ。


だから……



「あ…!?」



…ちょっと待って。皆の生きる糧となる為に生きると誓ったのは良いけれど、それ以上に…と。耳に入ってきた音に固まってしまう。

うーちゃんは私の後ろから顔を近づけてきた。さーっと自分の血の気が引くのを肌で感じとる。


「…朝の会の鐘、鳴っちゃった…」


今まで幾ら休みたいと思ったとしても、目立たないように遅刻とかは一回もしたこと無かったのに!と思いながら急いでうーちゃんに離してもらうことにする。

うーちゃんはハテナを浮かべていたが、私の焦りようから何となく察してくれたのか、今度はちゃんと離してくれた。

それから私は急いで庭園から抜け出す為に走り始める。

それを浮きながら追ってくるうーちゃんに一言口を開いた。


「うーちゃん、また後で会うからね? 暫くはどこか…スピリット様の宮殿で待ってなさい!」

はーい、とちょっと不貞腐れたように言ううーちゃん。

そりゃ王都に来る条件は私だったけども!!流石に学園には連れていけないわよ、ただでさえ国王陛下の所に連れて行ったら厄介なことになりそうなのに。

とにかく、教室には連れていけない。うーちゃんにきつく言った後、そのまま教室へと向かったのだった。


先生からは、怒られはしなかったけど、代わりに心配はされたのだった。…そっちの方が心に染みるなぁと思ったりしましたとさ。



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