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救命活動with転生Girls!  作者: 涼雲ルミ
尽力令嬢とフクシュウ
85/88

番外編 騎士達は頭を抱える。

「珍しいっすねぇーセルヴィラが貴族の言う事素直に聞くなんて!」

「うるさいノイッシュ、お前はちょっと黙ってろ…」


頭を抱えながらタリティ男爵領のギルドを後にするのは、ソレイユ王国騎士団第五番隊隊長セルヴィラ・ネルソン。そして、そんな彼にあっけらかんとした態度で口を開くのは、第八番隊隊長ノイッシュ・ポロック。

2人は、裏手側に位置するタリティ男爵家の屋敷へと向かっていた。そこには、奴隷にされそうになっていた人々の治癒を行う第七番隊隊長ヴァレリアン・ハートがいるからだ。


「あれ!?ノイッシュさん!」

「お久しぶりですポルックさん!」

「おまっ…ノイッシュか!?」

治療が終わったのか、元々別の場所にいたのか。

すれ違う人達からそう声をかけられるノイッシュ。一人一人丁寧に「久しぶりっす!」「ノイッシュっすよ!」「髪型変えたっすか!?」と伝えていく。

セルヴィラは歩く足を止めないので、ノイッシュは駆け足気味になりながら向かった。


「待ってくださいっすよぉーーー!!!」

「うるさいなノイッシュ!走れ!!」

「酷いっす!!!」


そんな感じで言い争っている所で、男爵領屋敷へと辿り着く。その門の前には幾人かの騎士が集まっており、何かを話しているようだった。

2人が声をかければ、騎士達は彼らの方を向き挨拶する。


「どうした?お前ら」

「隊長!…いえ、第七番隊が治療している中自分達は何もしないわけにはいかず…門を直せないか模索していた所です!」

部下の言葉に一言返事をし、そのまま後ろを振り返る。


「ノイッシュ、ヴァレリアンには俺が伝える。お前はコイツら頼んだ、」

「うっす!ジャミルさんには改めてオイラが話しておくっすね!!」


ノイッシュの笑みを見た後、セルヴィラは屋敷の中へと入っていく。幸い、第七番隊隊員であるアルシア・グレイスが案内してくれたので、すぐにヴァレリアンの元へと辿り着いた。


「隊長、セルヴィラ隊長連れてきました」

「あらあらまぁまぁ!ありがとうアルシアちゃんっ♪」

ふわりと笑みを浮かべこちらを振り向くのは、第七番隊隊長ヴァレリアン・ハート。

アルシアちゃん、と呼ばれたアルシアは片眉を上げるも、この場には第五番隊隊長がいる為下手に叫ぶことはできない。本当ならいつものように「俺は男だ!!」と言ってやりたい気持ちをぐっと堪え、頭を抱えるだけに留めた。

セルヴィラもその気持ちを察したようで、特に触れることなくヴァレリアンの方へと視線をズラす。


「患者は?」

「そうねぇ…私達じゃどうにもならなそうな人達は病院への招待状を書いたわぁ〜…ただ、最近医療業界は危険って噂もあるのよねぇ、だから、なるべく自然な回復を勧めてるわぁ〜」

困り顔でそう言い放つヴァレリアンに、セルヴィラは眉をひそめながら聞き返す。

「医療業界が危険?」

「医師の知り合いから聞いた話によれば、最近病人だけを狙う輩がいるとのことです、国境を跨いで指名手配をしているのですが、情報は掴めておらず…」

それに答えたのは、2人を見つめるアルシア。

視線を外し、そのまま窓の外を見つめた。


そう、現在国境を越えて指名手配されている…数少ない者の一人。病人のみを狙うという変わった性癖の者であり、男なのか女なのかも分からない。数年前も指名手配されており、何歳なのか、同一人物なのかすら分からない。

ただ一つ言えるのは、彼は明らかに危険だということだけ。


「ノイッシュ隊長にも伝えますか?」

「そうねぇ…んー…シリル団長が伝えていないということは、まだ伝えなくていいと思うわぁ〜」

「それに、ノイッシュはそこら辺考えない主義だからな」

セルヴィラも考えるのをやめ、そのままため息をついた。


「終わったら一度戻るぞ、」

「あらあら…タリティ男爵家の方はなんて?」


その言葉に、セルヴィラは少し黙る。

タリティ男爵家の方とは殆ど話しておらず、ノイッシュに任せきりだった。その上、男爵より偉い公爵子息と公爵令嬢が居たので、益々何と言っていたかは覚えておらず…。ここで何というべきなのか一瞬躊躇ったのだ。

それに気がついたのか、ヴァレリアンはアルシアを部屋に残し、2人きりで廊下に出る。


「…レオンハルト公爵子息とセラフィーナ公爵令嬢がいた、」

「あらあら…ここにいたの?」

「あぁ、恐らく洞窟にいたのだろう。…どう思う?」

セルヴィラは割と真剣だったのだが、ヴァレリアンは特に気にする様子もなく窓から空を見上げる。手を伸ばせばその指先に小鳥が一羽。


「…、……聞いてますか、ハート隊長」

セルヴィラは睨むようにヴァレリアンを見る。

ヴァレリアンは「あらあら」と鈴のようにころりと鳴り響く声で笑いながら、セルヴィラの方を笑顔で見つめた。

小鳥は飛び去り、ヴァレリアンは懐かしげに見つめた。


「大丈夫よぉきっと。…2人一緒だったならねぇ」

「…怪我でもしたらどう責任取るんです、」

「うふふ、…その時は私が命を懸けて助けるわぁ」


ヴァレリアン・ハートは、セルヴィラ・ネルソンが騎士になるよりも前から第七番隊隊長。

シリル騎士団長が本隊騎士になるよりも、…現国王ブレイズが国王の座に就くよりも前から、…彼女はその座についている。


だから分かる。…そのイレギュラーが、実はそれ程問題ではないということを。

そして知っている。…もしもの時に責任を取れるのは自分自身だということを。

その覚悟が彼女にはある。

けれど、そんな素振りを全く見せることなく、ヴァレリアンは笑い続ける。…患者に安心してほしいから。彼らに癒しを届けたいから。


「…マージでアンタには敵わねぇよ、」

「あらあらまあまあ!うふふ、セルヴィラちゃんもまだまだ子供ねぇ〜」

セルヴィラはヴァレリアンから目を逸らしてそう言い放つも、ヴァレリアンの言葉に再び眉を顰めた。頭を抱え、ため息をつく。


「戻るぞ、ヴァレリアン」

「はいはーい、了解セルヴィラたいちょー」


そして、2人はアルシアや患者達がいる部屋へと戻っていく。その時には既に、ノイッシュら第八第五番隊隊員、アルシアら第七番隊隊員、そしてタリティ男爵家が領主ジャミル・タリティが戻ってきていた。


「お待たせしてすみません!」

「いえ、我々の方こそ、この度はなんとお礼を申し上げれば良いか…」

貼り付けたような笑みを浮かべて頭を下げるセルヴィラ。そんな彼に、ジャミルもまた冷や汗をかきながら答える。

後ろからは小声で「いい加減言うっすよアロン!」「声が大きいですノイッシュ!」という話し声が聞こえてくる。普段ならば気にならないが、シーンとした空気の中では、部屋にいる全ての耳に届いてしまう。


「…あとは我々が。…ジャミル殿には一度通達が行くかと思いますが…如何せん公爵子息殿の意向が分からないので、」

「そう…ですよね、…所で、ネフェルは…」

「ネフェル様ならオイラが守るっすよ!安心してくださいっす!!!」

娘を思って心配そうなジャミルだったが、ノイッシュの言葉で少し緊張が和らぐ。

流石のセルヴィラもこれには敵わないな…と思いながら、代表として色々指示を出す。…特に異議を申し立てる者はおらず、そのまま現地解散となった。


「ノイッシュ、お前はどうする?」

「オイラ今日はここに残るっす!セルヴィラ、ヴァレ姐、シリル団長に伝えといてくださいっす!」

そう言いながら去っていくノイッシュ。


「ヴァレリアンは?」

「私は帰るわぁ〜アルシアちゃん達も帰さないといけないものぉ〜! セルヴィラ隊長は?」

「…私は…」

答えようとしたその時、腕につけていた腕輪の宝石が光を帯びる。夕焼け空に溶け込むかのような橙色の光に、セルヴィラもヴァレリアンも不思議そうに首を傾げた。


「あ、これ…ファイか、」

「あらあらぁ〜ファルクちゃん?そういえば魔道具による魔法関係の第四番隊所属だったものねぇ」

「…隊長なってますし、」

「そうだったかしらぁ、駄目ねぇ…そろそろ年かしら」

その言葉に特に反応することなく、セルヴィラは他の隊員をヴァレリアンに任せ、一人王都へと戻っていく。


「悪いな、マイカ」

『しょーがないわね!飛ばすわよ!』


マイカと呼ばれたのは、彼が乗っている鳥。

獣騎による特攻を得意とする第五番隊隊長の名の通り、彼には契約獣がいる。それが、彼の乗っている鳥である。その正体は、幻獣が一人鳳凰なのだが、セルヴィラ自身はそれを知らず。


彼女の迅速な飛びにより、すぐに王都へと辿り着く。

そして、夜風にあたる中、その長い髪をはためかせ、修練場で本を読んでいたのは…セルヴィラの同期である第四番隊隊長ファルク・イリージュ。


『あー!ファーくん!』

「ファイのとこ降りてくれ、」

『うんっ』

強風に乗って彼の元へ降り立つマイカとセルヴィラ。

それに気がついたファルクは、切れ長い瞳を彼らに向けた。


『早く飛んであげたんだから、感謝してよね!』

「ファイ、感謝って」

「ありがとう、マイカ嬢」


鳥の姿なのにドヤ顔にしか見えない顔をするマイカ。

そのままセルヴィラは「で、」と聞き返せば、ファルクは魔道具を指し示した。


「微かに魔力反応が発見された、セルが行った男爵領だ」

「…それくらいならあるんじゃねぇの、現にギルドだし他種族も多かった」

セルヴィラはなんてことなくそう言い放つ。しかし、ファルクは真剣な表情をやめない。


「いや、通常とは違う反応だった。…本来あんなに途切れ途切れになるわけがないんだ、」

その視線に気がついたセルヴィラは、そのまま頭を抱えてため息をつく。


『セル!…ため息ばっかりついてるわね!人間なんだから老けるわよ!』

「なるほどなファイ、…うるさいマイカ。」


その言葉でさえも頭を抱える理由になるのだが、それ以上何かを言うこともなく空を見上げた。


「だからマイカを借りたいと?」

「出来ればセルも来てほしいかな」

即座にそう言われ、セルヴィラは少し黙り込んでしまう。


「…マイカ、ファイと俺をさっきの所まで連れてってくれないか」

『えぇーあたしが?』

そう言いながらも、背中を屈めて乗りやすいようにするツンデレチョロイカ。


『しょうがないわね!さっさと乗りなさいよ!』


その言葉を聞いたセルヴィラは、ファルクと共に彼女の背中に乗る。


そして、再び先程の場所へと戻っていく。

辿り着いた時には既に夜となっていた。マイカは少し離れた所で飛び回っている。



「お〜い、そっちどう?」

崩れ落ちている洞窟の前で佇みそう口を開くセルヴィラ。

「ファイ〜聞いてるか〜?」

「わ、すまんセル」

いや、良いんだけど…と呟くセルヴィラは、そのまま足場の悪い所を進みながらファルクを見下ろす。

ファルクは何やら妙な道具を手に、洞窟の岩を調べている様子。 


「で?なんかあった?」

「この辺りだ、変なまりょ…」


ファルクが口を開こうとすると、「うわぁぁああっっっ〜〜〜っっっ〜」という、赤子の様な声が聞こえてきた。

騎士としての性なのか、人間としての反射的行為なのか…2人は顔を見合わせることもなく、一目散に駆けていった。

しかし、一通り探してもこの辺りに子供は居ない。


「ッたく…どうなってんだよ…」

「まあまあセル!落ち着けって」

イライラしたように岩に八つ当たりをするセルヴィラに、ファルクは優しく声を掛ける。

周りには我慢して大人の対応を心がけるセルヴィラだったが、同期であるファルクには容赦ない。

…ファルクのその長く艶がかった髪が月明かりに反射し、セルヴィラはヤンキー座りのままジト目でファルクを見あげた。


「…へいへい、ファイはキラキラを振り向かないでくださ〜い」

「振り向いてるつもり無いけど?てか、セルこそ今日も新兵と…」

「うるさいうるさい!隊長は良いご身分だな〜」

「いや、セルも隊長でしょうが!」

口喧嘩になりつつも、中の良さがわかる会話。

隊長枠の2人は、喋りながらもタリティ男爵領ギルト地区の洞窟を周回し始める。



「で?その魔力をどうするんだ?陛下からはなんて?」

「……セルは通達の手紙を読んでないのか?」

「まあ、普通に全然…」


セルヴィラがあっけらかんとそう言うので、ファルクは呆れたように見つめてしまう。

しかし、セルヴィラ自身、隊長枠とは言え完全に王族に忠誠を誓っているわけではない。騎士として彼らを守る義務を感じていると言うだけだった。


セルヴィラは貰った手紙を懐から取り出す。

基本的に洞窟を復興させるのは不可能なので、瓦礫の撤去と今後の使用計画、再発防止、…やる事は山積みではあるものの、それは彼らの分野ではない。

第五番隊は、獣乗…ということで、馬や契約魔獣によって素早く現地に到達することに長けている隊。

対して第四番隊は、魔道具…ということで、魔法に関することに長けている隊だ。

通常であれば、特攻の五番隊はまだしも、研究の四番隊が現地に赴くことは少ない。特に、セルヴィラに関しても先程解散したばかりなので、ここにいる理由もない。


「…あ〜、この最後の備考欄追記な、」

「セルの契約魔獣なら早く来れるからな、明日の訓練にも間に合う」

ファルクは何てことないようにそう言い放つ。

サボれば良かったじゃんと思うセルヴィラだったが、敢えて何も言わないことにする。その上、魔道具使えば一瞬だろ…と思うも、面倒なことになりそうだと言葉を飲み込んだ。

そのまま短い髪を掻き上げ、ヤンキー座りを辞め立ち上がる。


「で?この【周囲に魔力異常がないか調べること】って書いてあるけど、…それがお前の言う変な魔力?見つけたのか?」

「…いや、…さっきの泣き声の後…パタリと消えた、」

その言葉に眉をひそめる2人。

先程の泣き声が魔力の原因なのか、それとも…と色々考え始めるが、これと言った結論には至らない。

加えて、あの場にはスピリットも水精霊ウンディーネも、そして彼らは知らないがクリスティーナことティーアも居たのだ。そのような魔力異常があれば簡単に見つかってしまう。


「ただ、気になることが…」


そして、その近づくに連れ大きくなっていた筈の魔力が一気に消えたことが、ファルクの表情を不安げにさせる。

…未だ嘗て体験したことがないから。


「一応報告しとくか?」

「ああ、頼む」


それからある程度歩き回り危険がないことを確認した彼らは、そのままマイカと共に王都へと戻っていくのだった。




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