第六十六話
第六十六話
僕と朱莉は文化祭の準備をするために学校に戻ってきた。
この風景すらも何故か懐かしく思えてならないのは、日常から離れすぎた影響だというのは言うまでもないか。
この日常に朱莉と共に戻る、この風景が僕たちの魂の誓いを強固にするには充分すぎるものだ。
「もう、秋口さん、利根島さんどこ行ってたの!?」
苦言を呈しながら駆け寄ってきたのは委員長の早崎美優さん。
少々お節介が過ぎるところもあるけれど、クラスの皆から信頼されている。
一人を除いてという注はつくけれど。
その一人というのが、副委員長の綾瀬蘭だ。
犬猿の仲とはこのことを言うのだろうと一目で分かる。
「ちょっと美優、どうして必要と言われてからと羅針盤を買ってるのよ! どう考えても従者喫茶には必要ないでしょう!」
「佐々木くんが航海好き設定の執事をしたいから必要だと言ってたから買うのは当然じゃない!」
「それで予算使い果たしたらどうするのって言ってんのよ!」
「そうなったら私の貯金を使うから大丈夫だから」
「そうね、美優の馬鹿みたいに貯めた貯金なら足りるでしょうね。そのために私がどれだけ貯金を切り崩したか分かっているの?」
「……それを言われると心が痛むけど、今回はこの文化祭を良くするためだから、またいつもみたいに付き合うからそれじゃあダメなの?」
……とまあ目の前で、行われているこの光景だ。
「朱莉行こう。僕たちのここでの仕事をしよう」
僕と朱莉は買い出しのために校門をくぐり文化祭委員の柏田さんから渡されたメモに記された場所に向かっている。
そう僕たちは買い出し担当に……なっていた。
いない間に決まるとは聞いてはいたけど、任務中だった僕たちには当然だ。
さて、僕たちが買うのは、茶葉とティーカップ……って言われても詳しくないから余計に悩む。
朱莉との……みんなとの思い出を作っておきたい。
「二人で茶葉とティーカップを選ぼ…………」
僕が言いかけたその時に、"振り切り"を思い出させる声が耳に入ってきた。
「煮えたぎっているか、二人とも!」
振り返ると高槻さんが、知らない女性と共に手を振っていた。
「高槻さん、何故ここに? それに隣の人は誰なんですか?」
僕の質問に高槻さんではなく、隣の女性が欠伸をしながら気怠げに答えた。
「ふぁ~、アタシは朝倉凛子だよ~。眠気、それがアタシの使っている感情だよ。それと~、君たちにはここからが重要かもね~?」
ここからが僕たちにとって重要だと伝えた朝倉さんは、立ったまま眠っていた。
すると朝倉さんは勢いよく瞼を上げた。
瞳を見ると黒から青に色が変わっており、口調も変わっていた。
「んじゃ、眠ったこいつの代わりに説明するぜ。アタシたちは咎様が生み出した十五期目の魔葬少女だ。ちなみにアタシが誰かって質問は無しだぜ」
僕が質問しようしたのを察したのか断りを入れてきた。
断りを入れておいて結局、説明し始めたんだけど。
「なんてったってアタシも凛子なんだからな……まあつってもこいつが眠っている間にしか出られないんだがな。……っと長くなっちまうところだった、単刀直入に聞くが孫の朝倉千紗の依頼についてこいつが聞かたがってたんだよ。……すまん、眠るわ」
眠る……おそらく、イルカなどが使う半球睡眠と似たような原理なのだろう。
次に瞼を上げた朝倉さんの瞳は黒色だった。
「ふぁ~、それでね。千紗ちゃんのことを聞きにきたんだけど~、聞かせてくれないかな~?」
僕は聞かせるより早い方法を知っていると説明し、記憶を見せた。
「…………そっか~、雛先輩がね。どうしてあの人はアタシの眠りの邪魔ばかりするのかな~!」
朝倉さんの言葉を聞いていた僕たちは香取雛の時と同じように強制的に眠らされた。
だが、目が覚めた時は違っていた。
僕たちの疲れは一気に取れ、身体も軽くなっていた。
「ふぁ~、みんなよく寝てたよ~。さっきは眠らせちゃってごめんね~、珍しく熱くなっちゃったみたいで睡魔を振り撒いちゃったの~」
この人は、敵……なのだろうか?
今まで会ってきた咎の部下より親しみやすく、敵意を全く感じない。
だが、今は様子見と行くのが先決か。
朝倉さんは僕の持っているメモに記されてる茶葉とティーカップのお店を知っているようで、おすすめを紹介してくれると言ってくれた。
朝倉さんは小声の内容を聴こえてしまった僕には、朝倉さんが敵ではないと教えてくれているようなものだった。
「雛先輩には"厳しいお礼"をしなくちゃ、アタシはぐっすり寝られないよね~」
厳しいお礼って……お礼参りと意味は同じだよね。
だとすれば、復讐ってことだと思っていいんだよね。
それなら僕たちと目的は似たようなものか。
「朝倉さん、お店のこと教えてもらえませんか?」
読んでいただきありがとうございます!!
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