第六十一話
第六十一話
「ここが怪寿村か、見た目は普通の村っぽいけど本当に人魚の肉があるのか心配だな」
一般的なイメージの村だと僕と朱莉はそう思っていた。
実際はその真逆だと言うことを知らないが故に。
「風香ちゃん、あそこみて!」
朱莉が指差した場所には村人がいた。
「あの人から話聞いてみようよ」
僕の手を握るなり朱莉は走り始めた。
「ちょっと朱莉、もう少し落ち着こう」
村人に近づいてみて分かったことがあるのだが、空気が異常だ。
汚いとかそういうのじゃなくて、重いというか突き刺さるというか……なんて言葉にしたらいいのか説明しづらいけど……契約する日に初めて魔物に出会った時のようなそんな空気なんだ。
「危ないかもしれないから僕が先に行くから朱莉は下がってて」
顔を上げ僕たちを見る村人は笑みを浮かべている。
だけどその笑みには咎のような恐怖は感じなかった。
気のせいだったのか?
「そこのお二人さん、危ないからもうちょい下がって!」
村人は僕たちに何かを忠告していたけど、何が危ないのか僕たちには分からない。
「早く下がらないとパックリと喰われて死んじまうよ」
「喰われるって何に!?」
僕が叫ぶと村人はポケットから何かを取り出し、美しいフォームでぶん投げてきた。
「ふんっ!!」
速すぎて思わず拳に恐怖を纏って取ってしまった。
「危なかった。朱莉大丈夫、怪我とかしてない!?」
「私は大丈夫だけど、風香ちゃんこそ魔法使って大丈夫なの?」
「纏うだけならそこまで消費しないから大丈夫だよ。それより……生臭くないかなこれ」
僕が掴んだものを見るために手を開くと何かの生肉だった。
「あの~、これなんですかー!!」
僕が声を張り上げ質問すると、村人は急かしてきた。
「とりあえず今すぐ二人で食べて!! 食べれば私が伝えたい危険が分かるから!!」
生肉を食べるって……絶対死ぬやつじゃん、本当に大丈夫なの?
……でも朱莉が食べることに…………あっ、そうだ食べる瞬間に肉に接触する部分に恐怖を纏わせれば多少は安全になるかもしれない。
僕はそう考え、すぐに試した。
そして肉を呑み込んだ瞬間に見えたものに、僕は腰を抜かしてしまった。
「ごめん朱莉、逃げて……僕を置いていいから今すぐ逃げて!!」
僕の言葉を聞かずに手の中に残った肉を朱莉は食べた。
「……凄い、凄いよ!!」
朱莉は僕とは逆に目を輝かせた。
「風香ちゃん、食べられないように一旦この子から逃げよう」
朱莉は腰を抜かした僕を担ぎ上げその場から離れた。
「お二人さん〜、うちの子がほんとごめんなー!! お詫びにうちに来なー!」
目を輝かせた朱莉は担ぎ上げた僕を連れて村人について行った。
『風香ちゃん、さっきの子は大嶽丸って呼ばれてる妖怪さんなんだよ。本物が見られるなんて……生きててよかった』
『生きててよかった……か』
『ごめん風香ちゃん。私は蘇っただけなのに、風香ちゃんの気持ちを考えてなかった』
『良いよ、朱莉の楽しそうな顔が見られたから。僕は怖くて腰抜かしちゃったけどね』
僕と朱莉が心の中で会話していると村人さんが話しかけてきた。
「お二人さん、楽しそうだけど何かあった?」
雰囲気で分かるぐらい漏れ出てるのかな?
「それとさっき食べた肉が人魚ってことは、この村に来たってことは知ってるんでしょ?」
「……今なんて言いました?」
聞き間違いか何かだろうか?
「さっきお二人さんが食べたのが、人魚。お二人さんが不老不死に適した身体にそろそろ変わり始めるぐらいだから家に来てもらってるわけ」
またこんなに都合よく進むのか……だけど、今回ばかりは、感謝するしかないか。
「さてここが私の家だよ、さあ入った入った」
村人が扉を開けるとずらっと並んだ家政婦のような人たちが立っていた。
『おかえりなさいませ、主様』
「ただいま〜、なんか良さげな子達がいたから連れてきたよ」
「村長さんってこと……ですか?」
僕と朱莉が驚いていると、ものすごく軽い感じで返事した。
「あれ、言ってなかったっけ?」
「「言われてません」」
「そっか、そっか、それは謝るわ。ごめんごめん。それなら自己紹介しないといけないか、私は怪寿村の七十二代目の村長をさせていただいている中継智子だ。これからよろしくな」
読んでいただきありがとうございます!!
更新は出来る時にしますね




