第五十六話
第五十六話
朱莉を助けるために恐怖を利用するために傷つけた人たちに謝るために家の前についた。
「どうしよう朱莉……インターホンを押す指が動かない」
自分の行ったことの重さを理解したが故だとしても相手からすればそんな言い訳通用しない。
僕だって朱莉を傷つけられて言い訳されたら激怒するだろう。
己の罪の重さに押しつぶされそうになり震える手に朱莉はそっと手を添えてくれた。
「風香ちゃんだけに背負わせないから」
朱莉の力強い言葉は僕の魂が震えた感覚で涙が止まらなかった。
「朱莉……本当にありがとう。それと朱莉、僕が何をされても我慢してほしい」
「出来る限りは頑張るけど、無理そうなら止めるからね」
「その時は頼むね朱莉」
ピンポーン
「はーい、だ……れで」
少女はインターホン越しに僕を見るなり走っていった。
一分程経った時、玄関が開いた。
そこで見たのはナイフを持ち、僕へ殺気を向けて涙をこぼして走ってくる少女だった。
「お前のせいでぇぇぇぇ!!」
その瞬間の僕には避ける選択肢はなかった。
ズブ
僕にナイフが刺さるなり、少女は僕を押し倒し何度も刺した。
「待って、それじゃあ風香ちゃんが!!」
僕は首を横に振った。
「お前のせいで父さんが、おかしくなったんだ!! 私にさえ怯えて……部屋から出てこない! お前が……お前が…………」
少女は冷静になったのかナイフを落とした。
「……なんで、父さんなんだ。……父さんが何をしたって言うんだよ、答えてくれ!!」
少女の問いかけに僕は包み隠さず話した。
「……誰でも良かったってことか。それなら……なんで私たちなんだ!! 別の誰かでも良かったじゃないか……日常を返してよ」
この光景に胸が苦しめられ胸の高鳴りなど一切しなかった。
これは僕の……いや、今は僕と朱莉の罪なんだ。
「もう二度と私たちに顔を見せないで……次に来たら絶対に許さない」
結局僕たちは追い返された。
そこは予想通りなんだけど、少女はなぜ僕の治療を見てなんとも感じていないんだ?
あの少女のナイフは全て臓器にまで達していた。
確実に殺す覚悟で刺していたにも拘わらず僕は目の前で治療しているというのに、顔色ひとつ変えていない。
見た目的に六、七歳だというのに顔色ひとつ変えずに僕の目の前にいた。
その事実が涙を流して僕を刺したと考えると罪の意識に苛まれてしまう。
当時の僕だと…………あれ、あの頃の僕ってどんな感じだったっけ?
思い出せないけど、今はそこまで大切なことではないと思いたいところだな。
『朱莉には僕の記憶見られないかな?』
朱莉にも何故か僕の幼少期だけが見えないようで、また出来すぎていると感じてしまった。
「それなら、お姉さんのところに向かおう」
これから父さんだけじゃなく、僕自身のことも調べる必要があるのかもしれない。
朱莉にお姉さんの居場所を聞いてもらった。
「風香ちゃん、デートしよう!」
朱莉は居場所を教えてくれる前にデートの誘いを何度もしてきた。
傷心した僕のことを思ってのことなのだろうかと考えつつ僕は誘いに乗った。
思い出せない記憶が朱莉との時間で取り戻せる可能性を感じてしまった。
……それは建前にして、正直言って僕は許されなかった事実に安心している。
デートに行くのは朱莉に僕が刺される光景を止めてくれたお礼みたいなものだ。
読んでいただきありがとうございます!!
更新は出来る時にしますね




