閑話その15
閑話その15
最近の趣味である料理が完成した私は急いで母上に持って行きましたわ、当然転ばないようにですわよ。
「母上、食べてくださいませんか? 今回の料理は上手く出来た自信がありますの!」
今回は学校での調理実習も取り入れましたから美味しくなっているはずですわ。
「ほんと葵はそそっかしいんだから。そんなに走らなくても私は逃げないから」
母上は約束を守ってくれる、私の自慢の母ですのよ!
「……どうですか? 母上に食べてほしくて練習しましたのよ」
「そんなに緊張しなくても葵の作ってくれる料理は世界で一番美味しいのよ、三つ星だって夢じゃないわよ、もっと自信持ちなさい」
「そっ、そこまで言われてしまっては仕方ありませんわね」
嬉しいですわ、これは夢かしら……分かっていますわよ、夢じゃないことぐらい。
はしたないと分かっていますが、飛び跳ねちゃいそうですわ!!
「ねえ葵、一つ聞いてもいい?」
母上が私に質問してくるということは、覚悟しなければなりませんわね
「いつになったらお友達を連れてきてくれるの? 葵のお友達に会ってみたいの!」
やはりこの質問でしたわっ!!
架空の友達を作る作戦にいたしましょう
「私のお友達は大人の女性なので、お仕事が忙しくなかなかお時間を作れない方なのです。もう少しお待ちいただけませんか?」
もっと細かく作らなければ母上から質問が飛んできますわ!
「お仕事をしているといえど有休を取ればお休みは可能なはずですけれど?」
「だっ、大学を卒業したばかりの方なのでお忙しいのですわよきっと」
「大学を卒業といえど会うことは出来ますよね」
母上、私を心配してくださるのはいいのですが……少し顔が怖いですわよ!!
「えーっと、そのですね……その方は卒業したばかりの二十四歳の方で人助けでボランティアにお時間を割くのでお会いさせるのが難しいのですわ」
こっ、これならどうですか母上
「そんな立派な方とお友達になったのね。だけど葵……もう少しマシな嘘をつきなさい。お母さん、分かるんだからね。いつかその嘘を本当にしてほしいのはお母さんのワガママかしらね……チラッ」
「……本当にできるように努力いたしますわ」
「別に努力しなくていいのよ。葵の素を見て仲良くしてくれる人ならきっと現れるから取り繕わずに正面から向かい合いなさい。葵にはその方が合ってると思うわよ」
その素がなかなか出せないのですけれどね、私は。
「そういえば葵、お母さんのワガママをもう一つ聞いてくれない?」
「なんですか?」
「お母さんね、突然なのだけど今年から毎年羊羹が食べたくなったから買ってきてくれない? 葵にしか頼めないのよ」
「毎年って母上も突飛なことをおっしゃいますわね、分かりましたわ。この霜月葵は母上に恥じない働きをしてみせますわ!」
「いってらっしゃ〜い、葵」
扉から出る際の母上の何かを堪えている表情に疑問を抱きながら、私は気のせいだと振り払った。
ですが、気のせいではなかったことを帰宅してから分かりましたわ。
「母上、買ってきま……し……」
ドサッ
これは夢ですわよ、こんなの現実なはずがない。
「母上っ!?」
胴体を何者かに食い漁られ辺り一面に母上の肉と血液が飛び散り、右の眼球は抉り出され空洞になり、下顎はなく両脚は手羽先の下手な食べ方のように中途半端に肉が残っていた。
唯一綺麗に残っていたのが左腕だけだった。
吐き気より先に私は母上の左腕を握っていた。
「母上、おかえりって……い…………」
結局涙でこれ以上言葉が出なかった。
誰が母上を……必ず、必ず母上が味わった以上の苦しみを与えて殺してやる。
たとえどんな手段を使ってもいい……母上には褒められないだろうけど……今回だけは許してください。
「…………母上見ていてください、霜月家の娘として、そして母上の娘である霜月葵として必ず仇をとってみせますわ」
あの様子から母上は何かを察知して私を逃した。
ならば母上を殺した人間は必ず近くにいる。
「今からでも必ず……殺す」
そんな私の前に現れたのが、犬の形をした化け物だった。
「君のその願い叶えてあげるよ。その代わりに私と契約してくれないかな。契約してくれれば復讐できるよ」
「復讐出来るのなら、契約でもなんでもしてあげますわよ。その代わりにあなたは何をしてくださるの」
この質問は私にとって一番重要なことですわ。
「それなら復讐相手に会わせてあげるよ」
その言葉は私を契約へと背中を押すのに充分すぎるものでしたわ。
「分かりました、契約いたします。約束は必ず守っていただきますから」
「そんなに圧をかけなくても大丈夫だよ。それと契約後は魔葬少女として活動してもらう」
魔法少女でもなんでもいい、復讐が出来るのなら私はそれでいい。
その後この犬が連れてきたのは一人の無口な少女だった。
「この子は松島美月今日から君の相棒になる子だから仲良くしてやって」
仲良くすれば母上とのお友達に会わせるという約束は破らなくてもすみますわよね
「よろしくお願いしますわ美月」
美月はこくりと頷くだけで一言も話さなかった。
仲良くなれるのか、今から不安しかありませんわね。
魔法少女って本当にこれって夢なのかしら……そうなら良かったのですけれど、母上のあの感触を感じた今なら分かります、ここは現実ですわ。
読んでいただきありがとうございます!!
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