第五十二話
第五十二話
僕は母さんの記憶を壊してしまったが、身体は治った。
ならば母さんを傷つけた何かがいるということになる。
……こいつが都合よく現れたのも何か関係しているのだろうか?
もしそうだとすれば、この家に潜んでいる可能性がある。
アイツは僕と朱莉にとって屈辱的なことをしてきた。
僕の心を読んできたのだ。
僕の心を読んでいいのは朱莉だけ……朱莉以外から読まれるのは屈辱でしかない。
「この家には風香のお母さんをこうした犯人はいねぇぞ」
この家にはってことは犯人はいる。
「居場所を知っているなら教えて!」
僕がいくら詰め寄ってもあしらわれてしまう。
その上何故か思考が読まれ先回りされる。
こいつは朱莉の魔法が使える……しかも朱莉以上かもしれない。
その時僕はおかしな仮説を立ててしまった。
中身が変わりこいつもしくは別の誰かのそのどちらかが朱莉の魔法を朱莉以上に使っている。
飛躍していることは分かっている。
だけど、こいつは中身が変わったような言動をとった。
朱莉もそのことに気づいているようで……僕の腕にくっついてくる。
するとこいつはいつも通りくしゃっと顔が歪み僕に聞いてきた。
「テメェら、少しは進展してんだろうな?」
こう聞いてくるということは中身はこいつだ。
僕はあの時とは違う。
あの頃の僕は人死にも疎く魔葬少女の肉塊を回復させず一般人……母さんを治して(壊して)いない。
だからこそ答えられる。
「僕は朱莉と付き合っている。誰になんと言われようとも僕は朱莉を愛している!」
母さんが聞いている目の前で僕は声を裏返しながらも宣言した。
そこに恥はない、本気だ。
なぜなら母さんが記憶を取り戻してくれた時に伝えなければならないのだから。
こいつは満足気に去っていくように僕には見えた。
僕と朱莉を利用しようとしているのは目に見えている。
だからこその僕と朱莉は正式な魔葬少女になった上で利用されても契約霊を殺せるように強くなることに目標を変えたのだから。
少し目を離していた時に母さんについてまた一つ壊れたところを目にした。
それは……母さんが魔法を使っていたことだ。
魔法で水を生み出し飲んでいたのだ。
様子を見ている感じ、感情は減っていなさそうなのが謎なんだけど、減っていないなら記憶を取り戻せる可能性もあると信じられてちょっと嬉しくて複雑だ。
契約をしていない一般人に僕が魔法を使ったことでより一層人間として壊れてしまったのだと逃れようのない事実を魂に刻んだ。
魔法を使う母さんに僕は問いかけることにした。
「ねえ母さん、その水出した時って何か感じたりする?」
母さんは分からないと言って、改めて感じた。
そういえば僕も最初は分からなかったと。
……どう聞いたらいいのだろうかと悩んでいると朱莉が助け舟を出してくれた。
「お義母さん、私の手を握ってもう一回水を出してもらえますか?」
朱莉は僕に心で話しかけて教えてくれた。
『私がお義母さんに風香ちゃんとの記憶と感情を少し渡してみる。そうすれば共有されているから、分かるかもしれないでしょ』
朱莉から受け取った時、母さんが少し優しい笑みに戻ったのを見て僕はこれなら母さんは戻せるのではないかと希望を抱いてしまった。
だが、魔法を使うと記憶のなくなった今に戻ったのをみて希望を打ち砕かれたような気分になった。
魔法に関して朱莉は深刻な顔をして僕に伝えた。
「お義母さんは感情は使ってない。だけどその代わりに記憶を使ってる」
朱莉はその手の冗談を言わない事実が余計に僕に重くのしかかる。
朱莉は付け加えて僕に少し明るく教えてくれた。
「記憶を使うなら私の記憶を渡せばいいだけだよ。それに希望的になるけど、お姉ちゃんも似たことが出来れば読んだ私の記憶を渡してくれればプラスマイナスで言えばゼロになるはずだから安心して」
こういうのはやっぱり……複雑極まりない。
「朱莉は、いいの? 僕は正直言って嫌だ。それって母さんの記憶も朱莉の記憶も両方消える可能性だってあるわけでしょ」
僕の気持ちを汲んで朱莉は提案をしてくれた。
「だったら思い出をい〜っぱい作れば渡せる記憶も増えるでしょ、だから……たくさんデートしよう風香ちゃん」
「デートはいいけど記憶に関してはお姉さんが朱莉に記憶を送れるのを確認してからにして……じゃないと僕は嫌だ」
「分かった、そこはお姉ちゃんに頼んでみる。デートはたくさんしてくれるんだね、やったー!!」
希望と絶望が入り混じったようなそんな感覚すら今の僕にはある。
「この後母さんを連れて魔女会に行こう。記憶に関する人がいれば助けてくれるかもしれない。お姉さんに頼るのもいいけど、専門の人に頼めばより確実だと思う」
読んでいただきありがとうございます!!
更新は出来る時にしますね




