第五十話
第五十話
目を覚まさない朱莉を背負い、僕は家まで歩いている。
本当はおかしくなった僕のことを謝りたかったんだけど、今はこの時間も悪くないかもしれない。
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「嬢ちゃん、やめてくれ……な、俺には娘が」
「なんでこんなことするの! お父さんが何したって言うのよ」
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ごめんなさい、ごめんなさい…………殺してないとかそんな次元の話でも謝って許されることでもないのは分かってる。
僕は朱莉を助けたいと理由をつけて人を傷つけた。
自分から他人を傷つけて、朱莉も助けられず……こんなので恋人を名乗れるわけがないだろうが。
こんな恋人だったら朱莉が"秋口さん"って呼びたくなるよね。
これからは朱莉に関わるのはやめよう。
僕がいたら朱莉が傷つく……僕が朱莉のことを好きになったせいで朱莉が傷つくのは絶対に嫌だ!
魔葬少女も一人で……。
僕がそう考えていたら、思いっきり頭を殴られた。
「…………何考えてるの風香ちゃん!!」
「いつもいつも一人で抱え込んで、私に口に出して伝えてくれたことじゃん。関わるのをやめるなんて…………そんなこと考えないで」
「そうだよね、僕はいつも朱莉が心を読んでくれるからって伝えず抱え込んで……僕は」
「そういうところだよ風香ちゃんの悪いところ。それに私の意識がないからって誰かを傷つけたのも知ってるんだから……次からは一人でやらないで風香ちゃん。今度からは出来るだけ録音で済ませて」
「録音は使っても良いの?」
「そうでも言わないと勝手に使ってまた誰かを傷つけちゃうかもしれないでしょ、風香ちゃんのことだから。本当は録音も使ってほしくないけど……誰かを傷つけるよりはマシだから」
「それはそうかもだけど……もう、秋口さんなんて呼ばないよね?」
「それは風香ちゃん次第かな、また風香ちゃんじゃないなあって感じたら呼び方が秋口さんに戻るかもね」
「それは嫌だ、僕は朱莉に風香ちゃんって言ってもらえるだけで……幸せって感じるんだ! だからやめないで、さっきみたいにならないように気をつけるから!」
あぁ、ダメだな僕は…………でも本当に朱莉に呼んでもらえるだけで幸せなんだ。
秋口さんだと苦しくて胸が張り裂けそうだったんだ。
朱莉はポケットからハンカチを取り出して僕の涙を拭ってくれた。
「じゃあ今度からは色んな感情を発散しようね、また爆発しそうになったら私を見て」
僕は自分でもやりすぎかと思うぐらいの返事をした。
「それと今日傷つけた人たちには謝りに行くこと! 私に謝るんじゃなくて、分かった?」
「僕が謝りに行ったら思い出させるんじゃ……」
「そうだとしても、謝らないのだけは絶対にダメだからね風香ちゃん!!」
朱莉のことを母さんに恋人だって紹介しよう。
「嬉しいけど、話を逸らさないの」
目を覚ました朱莉を下ろそうとしても、しがみついて離れてくれない。
「初めて風香ちゃんが、おんぶしてくれたんだから、まだ堪能するの!」
結局朱莉を背負ったまま僕は帰宅した。
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