閑話その12
閑話その12
「ねえいぬサブロウ今日はおめでたいことがあるんだよ、聞いてくれる? それはね……」
帰宅後サプライズ準備を終了しウッキウキでぬいぐるみに今日の出来事を報告していたら、本人が帰ってきちゃった。
「……ただいま〜って、何してんの美月?」
「何ってそんなの簡単だよ!」
私は隠し持っていたクラッカーを取り出した
パァン!!
「柊さん、誕生日おめでとう!」
サプライズで柊さんの誕生日兼入学祝いを私は数日前から計画してたの!
「柊さんにバレないかヒヤヒヤだったんだよ、もう」
私が冷や汗で濡れているのを見た柊さんは自然にタオルを渡してくれた。
「柊さん、いつもありがと」
「早速食べてもいい?」
「うん、いいよ! ふんふんふんふんふ〜ん」
私が準備した料理を柊さんはいつも美味しそうに食べてくれる。
あの笑顔を見てるだけで私は力が漲ってくる。
「ねえ美月、どこまで夢に近づけたの?」
夢にいて聞かれた私は自信満々にこう答えたの!
「魔物になった人を三人魔葬少女に戻せるところまでは進んだんだけど、まだ契約前には戻せてない!」
私の希望を使う魔法でここまで出来るなんて思わなかったけど、これならみんなを元に戻せる。
そして私の夢は魔葬少女のみんなを契約前に戻せるようにして、みんなで笑い合いながらご飯を食べること!
アツミには絶対に目をつけられると思うけど、柊さんと一緒に絶対に叶えてみせるんだから!
だけど今ぐらいは目の前の幸せに浸ってもいいよね〜。
「楽しそうだね美月」
「分かっちゃう? いや〜、柊さんの食べる姿見てたら癒されるなぁって考えてたんだよね〜」
柊さんは照れ臭そうに私の肩を叩いてきた。
「もう、恥ずかしいこと言わんでよぉぉぉ!!」
「痛い、痛いからちょっと待って柊さん!」
私が柊さんとの時間を堪能していると、依頼の電話がかかってきた。
「また行くの?」
「うん、助けてを待ってる人がいるってことだもん。私に出来ることはしたいじゃん」
柊さんは、袖を引っ張って心配そうな眼差しを向ける。
「安心して帰ってくるから。こんな大切な日に死んだりなんてしないよ」
「でも私たちにそんな保証ないでしょ……」
それを言われたら何も反論出来ない。
「安心して、私が柊さんを置いて逝ったりしないよ。約束したでしょ、逝く時は一緒って」
「……美月が約束破ったことないもんね、分かった。だけど、危なくなったら帰ってきてね」
「当たり前でしょ、そもそもこんな可愛い恋人を一人になんて出来ないって」
私は軽口をぶっ叩き家を出た。
だけど、これが間違いだった。
依頼内容は魔物の討伐だったはずなのに、現地に到着して、私の目の前に広がっていたのは一人の魔葬少女が数百人の人を殺している光景だった。
「何これ」
魔葬少女は私を見るなり怒りを露わにした。
「貴様が咎様の邪魔をする魔葬少女か!! 咎様に代わり私が粛清してやる」
何を言っているの、この人は。
「話を聞いて、邪魔も何も私は何もしてない!!」
「貴様が咎様の指揮下の魔物を魔葬少女に戻した影響で咎様のご機嫌がいいのだ!!」
「機嫌がいいのに邪魔ってどういうことなの!?」
「貴様が魔物を戻したせいで、肉体と精神がぐちゃぐちゃの狂ったものが生まれてるんだ。どう考えても邪魔しかないだろうが!」
それからこの人が話していることはとても受け入れられない内容だった。
この魔葬少女システムが咎という人物により作られたこと、魔物化の原因も感情を使う魔法も何もかもが人により作られたと、それ以上に……私たち魔葬少女が道具として利用されている事実の方が耐えられなかった。
「それって私たちが道具ってことなの」
この人は私の発言より、私の表情に反応を示した。
「良い表情をするではないか! 解答はイエスだ! 貴様たち魔葬少女は咎様の道具であり、絶望を見るための存在だ。希望など抱いたところで全ては無駄なのだよ」
私は内心でこの事実を否定しようとしても身体が否定しきれず反応してしまった。
「貴様……震えているではないか。そう怖がる必要はない。魔葬少女になったのだから必然であろう」
「私はみんなの希望になる、そのために魔物になったみんなを人に、人間に戻すの! 戻れる前例を作って、安心出来るように……するって約束したのに……こんなの、どうしようもないじゃない」
私がどれだけ希望を持つ発言をしようとしても……何も思い浮かばない。
こんなこと今まで初めて。
柊さんを守らないと。
「おお!! そろそろ変化の時か!!」
「変化?」
私の身体は溶け始めた。
怯えはしたけど、柊さんに帰ると約束した。
ならば私は柊さんの希望に応える!!
「こんなことで私は堕ちる訳にはいかないの!! 柊さんに帰るって約束したの!!」
正直危なかった、身体が溶け始めた時は本当に終わりかと錯覚してしまった。
私の決意は虚しく、魔葬少女は増えた。
「どうしたの、そんなに強張って……睡眠が足りないんじゃないの?」
「睡眠なら柊さ……んと……」
意識を失い次に目を覚ますと、目の前には殺されかけた柊さんがいた。
「やめて、それだけはやめて!! それ以外ならしてもいいから、私を殺しても魔物にしてもいいから、柊さんだけは殺さないで!!」
焦りすぎた私の発言を聞いた魔葬少女の笑顔には狂気しか宿っておらず、私の心は完璧にへし折る結果を生んでしまった。
「ひ……いらぎ……さん?」
突然私の身体は溶け始めた。
「何これ、何なの!? もう嫌だ、何で柊さんが……私が、私が依頼に向かったから……契約前の人間に戻ろうって約束すら守れず……何が希望だ」
「はははははは!! 契約前の人間に戻る〜!? 魔葬少女になった時点でただの道具、消耗品なのが分からなかったの? ねえ大切な人が目の前で殺される己の無力さとかさ教えてよ……守れなかった気持ちをさ教えてちょうだい!! あはははははは」
この時、魔葬少女は人間として扱われることはないんだと確信してしまい、せめて柊さんだけでも人間扱いをと感じだが殺された後に何を考えているんだ私は。
こんな最期に考えることが、人間らしく扱われたいだなんて……結局柊さんとの約束が…………守れな……た。
「ご……め…………ん」
読んでいただきありがとうございます!!
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