閑話その7
閑話その7
私が秋口峯と出会ったのは二百五十年前の村通しの交流会の時だった。
秋口峯と言われても分からないと思うが、今でいう荒川咎だ。
そもそも咎という名前は村での罪人の家族につけられる。
秋口峯の父親が連続殺人を犯し、その被害者の中に峯の母親も含まれていた。
だけど峯は母親の死を狂った笑みでいつも語る。
「どうしてか母の事切れる寸前の表情が忘れられない。またあんな表情が見てみたい」
私は峯が母親を失ったショックで一時的にこうなっているだけだと自らに言い聞かせた。
しかしそれから荒川の性を名乗り始めたのには峯なりに母親に思うところがあっだからなのだろう。
そして峯が本格的に咎と呼ばれるようになったのは齢十二の時に父親を呪術で殺したのだ。
峯の父親が死ぬ寸前に見せた表情、それが絶望だった。
その時から峯は咎と呼ばれるようになり、今のような性格に徐々に変わり始めた。
村の罪人である峯と友達だった私は、世界への生贄としてあやかし少女に選ばれた。
私と峯は齢十三の出来事だった。
あやかし少女となった私と峯は最初こそコンビとして行動していた。
だが峯は従えていた震々(ぶるぶる)を実験材料として使用し、対象に触れるだけで恐怖で絶望に歪めた末に殺すようになった。
峯は物足りないといいながら人体や妖怪を使い実験を繰り返した。
それだけなら良かった。
峯は人間と妖怪のキメラさえ作り上げた。
それが峯が齢十四の出来事だった。
あやかし少女の中で峯を天才ともてはやす者も多かったが、その人物を実験体にした。
それがどれぐらい狂っているか、想像が出来るはずだ。
あやかし少女を実験材料にしていたのだから。
全て行方不明で処理されたが、私には峯の仕業だとすぐに理解出来た。
私は峯の実験気質に耐えられなくなり、そばを離れた。
それからの私は力を磨いた、峯を止めるために。
私は一番最初に使役していた茨木童子と共に二年で酒呑童子を使役するほど強くなった。
茨木童子は私にもしもの時が起こり酒呑童子と協力出来なくなった際に助けてくれると約束してくれた。
私がもっと峯に目を向けるべきだったと、どれだけ悔やんでも悔やみきれない。
峯と再会したのは齢二十の時、その時には現在の隠神刑部と大蛤を使役していた。
いいや使役なんて生優しいものじゃない。
あれは恐怖による支配だ。
しかも支配しているのは隠神刑部と大蛤だけじゃない。
古今東西の名だたる妖怪を支配していた。
中には犬神、ダイダラボッチ、牛鬼、女郎蜘蛛などすぐに分かるような強力な妖怪も複数いた。
あんなの私にはどうすることも出来ないとさえ本能的に感じてしまった。
「浅霧見てよ。この子達のこの表情最高に沸るでしょ、浅霧は分かってくれるよね!」
「分からない。どうしたの峯、変わりすぎじゃないか。悩みがあるなら……」
私の言葉が間違いだったことは峯の表情ですぐに理解した。
「あっそ、もういいわ。浅霧のこと友達だから思ってたから見逃してたけど、その必要もなくなったみたい。浅霧の絶望を見せてちょうだい!」
「それで峯が満足するなら」
「つまらない。そんな簡単に命を差し出されても面白くもなんともないわよ」
峯はそう言ったっきり私の前に二十年は姿を現さなかった。
その二十年で深雪と出会い、ヨマワリ探険隊を設立し治安維持に努めた。
峯は再会する度に魂に恐怖を刻まられるのではないかとそう錯覚するほどの存在になっていた。
「浅霧にだけ、教えてあげる。私は妖術を使った大型実験を始めようと思うのだけど、参加してみる?」
当然私は断った。
「あっそ、相変わらずつまらないわね」
一年かかってしまったが、私は深雪と協力しその大型実験を止めたのだ。
それからというもの峯の怪しい行動はしなくなった。
当時の私は峯にも人の心があると、そう信じてしまった。
止められた峯がバレないように行動の痕跡も気配も消すのは当然だということを少し考えば辿り着いたであろうに、私は愚かだったのだ。
あとは妖怪に未来に送られて現在に至る。
「この球体を見ていると、昔を思い出してしまうな」
「思い出すのは僕にとっての人生最大の失敗さ。次こそは止めるぞ雫」
「あぁ、ヨマワリ探険隊の名に賭けて!!」
私は峯のことを何も知らない、友達と名乗っておきながら。
だから今度こそやり直したい。
昔のかけっこで遊べるような、そんな理想的な関係に。
やり直すのに遅いなんて関係ないはずだ。
たとえ峯を殺して私も死んだ後に生まれ変わったとしても私たちはやり直してみせる!
読んでいただきありがとうございます!!
更新は出来る時にしますね




