第三十三話
第三十三話
僕と利根島さんは香澄さんを待っている間に何か依頼を受けようという話になり、受付の人に僕たちでも達成可能な依頼を見繕ってもらった。
「この依頼とかはどうでしょう? 比較的危険も少ないと思われますが、どうされますか?」
提案された依頼は行方不明の魔葬少女の捜索だった。
行方不明の魔葬少女の名は朝倉千紗、正式の魔葬少女が行方不明という自体が珍しいという。
どうやら戦闘系じゃないから危険は少ないらしいが、何か嫌な予感がする。
しかし他の依頼は戦闘系ばかりで僕と利根島さんで勝てるかどうか分からない。
ならば僕たちに出来ることをする。
「その依頼受けます。報酬は……何しようか朱莉」
僕と利根島さんが報酬に悩んでいるとギャル分身さんの方ではない人が話しかけてきた。
「報酬を頼むならこれがいい。魔物化を抑えてくれるアクセサリー、さっきみたいな物じゃなくて私が生成物だから安心して」
利根島さんが誰かと尋ねると彼女は少し雰囲気が柔らかくなった。
「私は久蔵紬、所謂本体と呼ばれる存在。装備担当がお世話になってることにお礼出来てないから、せめてものお礼だと思って受け取って」
表情自体はぴくりとも変わらないけど、雰囲気だけで分身さんのことが本当に大切なのだと分かる。
受付の人にこのアクセサリーを報酬として注文した。
「注文、受け付けました。それではお気をつけていってらっしゃいませ」
僕と利根島さんにとっては捜索依頼自体初めてで勝手が分からないのは、仕方ない。
慣れていくしかない、まあ捜索依頼は少ないに越したことはないのはそうだけど、会いたくて会えない人がいるのなら、再会させたい。
捜索依頼が出される時点で会えずに悲しんでいる人がいる、そう思うだけで胸が痛くなる。
もし居なくなったのが朱莉だったらと考えたら……怖くて仕方ない。
「風香ちゃん、絶対に見つけようね」
「絶対に見つけよう」
捜索依頼用に魔法を作るのもありかもしれないと思い、僕は魔法を……今作った。
作ったのは恐怖の強い場所を辿り探り当てるという魔法だ。
恐怖を色で判別出来るようにした。
肉体的恐怖は赤、精神的恐怖は青、両方の場合は紫になる仕組みで最終的には死の恐怖として漆黒になる。
恐怖が強くなるほど色が濃くなる。
そしてその恐怖は襲われた時にしか色は見えないという条件をつけている。
漆黒になっている場所を見つけた僕は利根島さんを連れて向かった。
「誰も居ませんね……この羽根って…………まさかゴゴゴゴキゴキブリの!?」
ゴキブリの死の恐怖で漆黒になるのならそこら中が、黒一色になってしまう。
だがそうなっていないということは、ここで誰かが殺された上に死体を消されたか別の場所に運ばれたことになる。
恐怖の濃い場所ほど記憶が見えるように設計している、それを利用しよう。
「見させていただきます」
そこで僕が見たのは、あの先輩と出会った魔葬少女が倒れてすぐに身体をゴキブリが覆い喰らい尽くした光景だった。
正式の魔葬少女が一瞬で殺された光景を見て僕と利根島さんはヤバい人に声をかけたのではないかと冷や汗をかいた。
……冷や汗って普段なら身体の震えが止まらないはずなのに、おかしい。
死を記憶を見るということは僕自身が今日を体験するのと変わらない。
その死を前にした僕はこんな冷静になれたのか?
いや、冷静になれなかったはずだ。
はっきり言って僕の精神はそんなに強くない。
死を前にすれば朱莉を求めてしまうほど脆い。
その僕が死の恐怖の記憶を体験して冷静なのはおかしい。
…………もしかして、眠っていた間に何かされたのか?
意識を失った魔葬少女から覆うほどのゴキブリが現れたというのは魔法以外ありえない。
あの先輩について調べる必要がある。
「風香ちゃん、沙知ちゃんのメモにもしかしたら情報があるかも」
僕は琴桐さんのメモを確認すると、あの先輩についての記述も存在した。
『正式な魔葬少女たちを一捻りに殺すことの出来るほどの存在たちがいる。その勢力はおそらく百五十年ほど前の集団女児失踪事件の被害者である可能性が高い。特に注意すべきは最初の失踪した香取雛氏である。夢みがちな少女だが、家庭環境が悪さ故か周囲に合わせる傾向がある。失踪先の環境次第では大きく化ける可能性大』
記述は他にもあったが、香取雛の特徴も書いてあった。
その特徴があの先輩と一致する点が多い。
「朱莉、調べてみよう。琴桐さんを誘ってから」
僕の提案に利根島さんは追加で提案をした。
「今回はお姉ちゃんと美咲ちゃんも一緒の方がいい。正式勢の人を簡単に殺すような人を調べるのなら私たちだけでは危険だからね」
僕は利根島さんの提案に乗り水本さん、お姉さん、琴桐さんを探しに向かった。
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