第八十五話
第八十五話
咎=父さんだということが確認出来ただけで上出来とするしかない。
だけどここで引き下がったら、また朱莉が殺される……それだけは絶対に許すわけにはいかないんだ!!
「風香ちゃん、行くよ!!」
朱莉の声に合わせて僕は心霊魔法を使用した。
「「即興合体魔法、呪血紅塵!!」」
ここまで朱莉に合わせることが出来るのが咎のおかげなのは正直癪だけどここだけは感謝するしかない。
僕と朱莉が魔法を使った直後、異様な程に咎の表情は歪んだ。
「そこまで感謝するならもっと浸らせてもらおうじゃないか風香!!」
咎の言葉が耳に入った直後身体が動かなくなった。
この感覚は愛海さんの支配を受けた時と同じ……いやそれ以上じゃないか。
「思考するのは許してるからこの間に巡らせるといいよ。それとこれも送るよ」
限りなく小さな吐息の音と同時に飾り時計が停止した。
水本姉妹の支配と時間停止を同時になんて、次元が違いすぎるじゃないか。
「この程度で言葉を失うとは興醒めもいいところだけれど、初めての体験ならば仕方ないか。それならこれをもっと送るよ」
突如場所が変わったかと思ったが、何処なのかは一番僕が理解出来た。
なぜなら、移動させられたのが僕の狂卒式の体育館だからだ。
会話をする暇を与えず咎は畳み掛けてきた。
「これが風香が殺したがっている荒川咎の力の一端だよ。よく観察し学び、そして私をさらに愉悦に浸らせてくれ!!」
咎は屈辱的にも、朱莉が試験の時の愛魔法の応用を使ってきた。
「どうだい風香、愛しの愛しの朱莉の魔法を本人以上に使いこなされる気分は!」
『答えるはずがないだろうが!』
当然の如く僕が断ると咎は支配の魔法を行使した。
「それは残念だ。"風香よ気分を吐け"」
動かないでくれ、頼むから……これだけは嫌なんだ。
「朱莉の魔法は朱莉だけの特別なんだから最悪の気分で殺意が高まりました」
ごめん朱莉、僕が不甲斐ないばかりにこんな思いさせて……本当にごめん。
「風香にされたら喜ぶことを教えろ朱莉」
朱莉が答えてくれたのは積極的に僕にしてくれることばかりだった。
「行為に至るまで進んでいたとはな。絶望した際の表情を想像するだけで、胸の高鳴りが抑えられないじゃないか」
僕にされたいことを自分からしてくれてたなんて……僕って幸せ者なんだな。
なんで咎に教えられないといけないんだろうと思いながらも、朱莉に聞いた理由を考えた途端に青ざめる思いだった。
絶対に、朱莉の喜ぶことの逆を僕にさせるつもりじゃないか!
極めて不愉快な笑い声で僕に朱莉を貶めるように僕に命令した。
命令されれば僕の身体に拒否権など存在しない。
「風香の成長も併用するとしよう。"自ら愛する人を苦しめるために魔法を応用しろ"」
高槻さんの時は痛覚を麻痺させたが、貫通させられた。
その時は朱莉が、転移してくれた。
麻痺させるのが優しさならば増幅させれば、痛めつけることが出来る。
命令された僕は無理矢理、痛覚麻痺を応用させられ痛覚倍増魔法を開発させられた。
まさか正式な魔葬少女になった際の開発工程回路減少をここで利用されるなんて想像すらしていなかった。
「こんなに早く完成させるとは、予想以上だな。"このナイフを使い朱莉の皮をゆっくりと剥ぎ苦痛に歪ませろ"」
渡されたのは包丁と何ら変わらないというのに、身体の拒否反応と相まってまるで車を押しているかのような重さを感じてしまった。
その魔法を僕は朱莉にかけ咎から渡されたナイフで皮膚をゆっくり剝いでいた。
ハグの代わりがこれなのだろう、朱莉の苦痛が僕にも伝わってくる。
「二人のその表情……ほんっとうに唆るじゃないか!!」
「風香ちゃんは悪……くないからね」
咎は少し間を置き、香澄さんの結界魔法を使った。
「ここまでにしてあげるよ。今回のことを踏まえて存分に成長し、私を殺しにおいで!」
「「あははははははっ」」
香澄さんの毒の影響で僕と朱莉が返事を出来なかった。
咎が話し始める前に隣から聞こえる笑い声が徐々に小さくなっていった。
「風香に教えておくよ、明日からはしっかり私はカレンダーの予定に沿うように行動する。それを基準にしてくれ」
そう言い残し咎は何処かへ転移した。
咎が去ってからは支配による重さは消えたが、心身の苦痛に対する重みが残っていた。
似ているとすればインフルエンザ時にお米を積んだ自転車を起こすような重さだ。
思考だけならば、翼があるかのように軽く出来るというのに……身体が思うように動かないのが、もどかしい。
だが、支配時よりは身体が動かせるのは事実だ。
ナイフは左手の中に残っているが、本来の十五センチ包丁の重さになっていた。
転移された後の静寂が朱莉は苦痛によりすでに意識がない事実を認めざるを得ない。
「あ……かり、ごめ……ん」
精一杯回復魔法をかけても曖昧な意識では治すことができず右手を軽く動かす程度しか出来なかった。
朱莉に向けてその手を伸ばしたが、あと一歩のところで届かなかった。
「爪だけでいいから……届いて……ほしかった」
そこで僕の意識は途切れた。
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