第八十三話
第八十三話
魔女会に着いた僕たちは掲示板に貼り出された依頼書を見ていたのだけど、一際目につくものがあった。
「この新入荷したダルマの感想をくれる人募集だって」
この依頼書には追記がされていた。
"合言葉を知る者には追加報酬あり"
魔葬少女用に追加報酬ということならば受けるしかない。
もし本当に感想だけでいいのなら、案外楽なのかもしれないけれど、魔女会に来ている依頼ということはある程度の危険はついているはずだ。
「宮早商店だって、確か魔女会近くの商店街にあったよね」
宮早商店ってどこかで聞いたことがあるような。
…………なんでこんな大切なことを忘れていたんだ僕は!!
宮早商店といえば母さんに連れられて買い物に何度も行った場所じゃないか!
「……あるよ。オーナーさんが変な物もよく入荷してるから中学生ぐらいまでは母さんに連れられてよく行った」
そうは言っても思い出せたのは中学二年生あたりに母さんが変な形の腕輪を買っていたこと。
そして商店には常連さんとの写真が飾られていて、そこに僕と母さんも写っていることだ。
…………ならば僕の過去を知っていてもおかしくはない。
「朱莉、この依頼必ず受けよう」
僕の過去を知ることは咎に近づく可能性もある。
「この依頼受けます」
僕は依頼を受ける際に海外支部に向かう方法についても質問した。
「海外支部ですか、唐突ですね。ですが、まあ向かい方は簡単ですよ。依頼を受けて空港で合言葉を伝えれば通してくれます」
受付の人は依頼を受注する際に僕の質問に軽く答えてくれた。
その軽い返答が、本当に世界に魔葬少女のシステムがあるということを刻んできた。
母さんとの付き合いもあるオーナーさんならば、記憶について教えてくれる可能性がある。
だけど高校入って一度も行ってないから、正直なところ分からないんだよね。
「宮早商店までは僕が案内するよ」
商店街を知っていれば朱莉もある程度の場所は分かるだろうけど、僕自身が案内することでさらに思い出せることがある可能性もある。
「それなら風香ちゃんに、案内してもらうね」
……そもそも海外に行くってなっても、現地の言葉が話せないと確実に困るのは目に見えている。
「朱莉、どうしよう。外国語全く話せないんだけど」
焦っている僕に朱莉は少し思考を巡らせ、ある提案をしてくれた。
「アニメとかで何故か、国の違うキャラ同士が会話出来てたりするでしょ……だったら、そんな魔法を作れば良いんだよ!!」
「……そっか、その方法ならアニメを想像すれば作りやすいし良い考えかも。いつもありがとう、朱莉」
吾野蔵公園に挑むのは、最低でも蘇生に近い魔法を覚えてからにしたい。
畠中さんが手を焼く相手ならば、僕たちでは負ける可能性が高すぎる。
宮早商店の変な物が魔法関係の物であってほしい。
そんな馬鹿馬鹿しい想像が止まらないのも、前の生活を望みすぎているからなのかな。
「あのさ朱莉、蘇生魔法を必ず覚えるから……本気で僕のことを一人にしないでね」
海外に向かう前に朱莉の計画を頓挫させない限り、僕の不安はなくならない。
どこに行くにしても朱莉と一緒がいい。
魔葬少女になる前の生活に戻れたとしても朱莉がいないんだと戻る価値なんてない。
「行こうか朱莉」
そんなに心配そうに見つめないでも僕は居なくなったりしないよ、朱莉。
「風香ちゃん、絶対に無理だけはしないでね。私だって風香ちゃんに居なくなってほしくないんだから」
その言葉を聞けて安堵しながら、朱莉を連れて宮早商店に足を運んだ。
十二分ほどでお店には辿り着いた。
魔女会での合言葉である"感情は?"と依頼出来たことを伝えた。
「「依頼で来ました」」
「もしかして風香ちゃん?」
オーナーさんは一目見ただけで僕だと理解したようだ。
「どうして分かったんですか?」
「一度目にしたお客さんを忘れるなんてしないさ」
一度目にしたお客さんは忘れない……か。
もし本当なのだとしたら、僕には聞きたいことがある。
「あの、一つ質問いいですか?」
「なんでも聞いてくれて構わないよ風香ちゃん」
「父さんってこのお店に買い物に来たことってあるんですか?」
オーナーさんは僕の質問に即答した。
「貴教くんなら、来てくれたことあるよ」
名前呼びということはある程度の関係はあるのだろうか。
「もう二つほどいいですか? 母さんと父さんについて教えてほしいんです。学校の授業で第三者からも教えてもらうようにと言われたので、オーナーさんなら知っていると思ったんです」
授業ということにすれば、答えやすいはずだ。
「教えたいんだけど、詳しくは覚えてない。特に貴教くんに関しての記憶に穴っていうのだろうか、仲が良かったのは覚えているのだからおかしな話なのは理解しているんだ。買い物に来てくれていたお母さんについてなら話せるよ」
父さんの記憶に穴があるのなら、仕方ない。
もしかしたら誰かに干渉されているのではないかという疑念を拭うことが出来なかった。
しかし母さんについて少しでも知れるなら上々だ。
今は小さな情報でも余すことなくほしい。
朱莉と一緒に前の生活に戻るために。
分かっているんだ、こういうのが及第点の理由だということは……それでも及第点ではなくなったら僕は朱莉のことをどう思うのか、そのことが怖いんだ。
もし感情のコントロールも正式な魔葬少女だと認められるほど成長したとして、僕と朱莉がどうなるのか想像が出来ない。
だとしても、そんなのはただの言い訳だ。
咎を殺すためには必ず成長しなければならない!
「お願いします、母さんについて教えてください!!」
「良いけどその前に、このダルマの感想お願いしてもいい? いつも通り貴教くんから教えてもらったルートで買ったんだけど、他の人からも売れるかどうかの意見がほしくてね」
父さんがオーナーさんに仕入れルートを教えた?
……ぶっ飛びすぎなのは理解しているけど、咎の『オカルトを結びつけられることの重要性を検証出来た』という言葉が関係しているのなら父さんについて調べるほど咎に近づくことになる。
「父さんは何故オーナーさんにそのルートを教えたんですか?」
「……風香ちゃんとお母さんに買ってもらうためってメモに記して渡してきたからそのためじゃないかな? 家族思いの良い人だよね」
母さんが大概がオカルト関係のものを集める。
そして母さんは買い物の時に僕を連れて行くことが多かった。
まあ子供を一人にさせないためだろうから、当然って言えば当然なのかもしれないけどね。
オカルト関係の話を右から左に流すようになったのも母さんと父さんがその話ばかり聞かせてくるからなんだけど……。
『風香、魔法少女とか興味ないか!?』
なんで今父さんの言葉を…………いや待てそういえばその質問に僕は魔法少女になってみたいって答えた。
コスプレさせられた時はその質問の後だ。
もしそれが、僕を魔葬少女にするために質問したのだとすれば…………ぶっ飛びすぎていようが、父さんが咎ならやってもおかしくはないことだ。
あの時見せられた記憶や源綾音の言葉から父さんが咎なのは間違いないのは分かっていたのに、父さんと咎は別だと分けていたい僕がいたのも事実だ。
次に父さんに会った時はカマをかけよう、確実にするために。
朱莉と行為をしたあの日、カレンダーに記載された父さんのスケジュールを見たから明日のことだけなら知っている。
確か明日には会議を終えて一時的に帰宅するはずだ。
そしてその際に風香に会いに行くと記された日があった。
ちょうどその日は咎に朱莉を殺された日と重なる。
「二人とも、ダルマの感想をくれないかな?」
「僕はこのダルマ結構可愛いと思います。手のひらサイズでコロンコロンとしてるのが、愛らしくてストラップとかにして持ち歩いたりしたいですね」
こういう感想は正直に答えた方がいいからね。
「私はこのダルマは苦手かも。可愛いとは思うけど、嫌な気配というか……私が呪術を使う時と似たような感じで呪われそう」
オーナーさんは僕と朱莉の言葉を聞いて感謝してきた。
「ありがとう二人とも。キュートな呪いのダルマとして売ってみることにしてみるよ」
オーナーさんが追加報酬として手渡してきたのは、巻物だった。
「これ貴教くんルートから仕入れた巻物なんだけど、死者蘇生の伝説が記されているもので……流石に禁忌だと思って販売出来なかったものなんだ。処分に困ってたからあげるよ。風香ちゃんなら貴教くんに渡してくれたりしそうだからね」
死者蘇生の伝説……か、これを参考にすれば蘇生魔法を作り出せる可能性がある。
「オーナーさんには感謝してもしきれません。ありがとうございます!」
僕と朱莉は依頼を達成した為、魔女会に帰ろうとした際、オーナーさんに呼び止められた。
「ちょっと待ってまだ風香ちゃんのお母さんについて話してないでしょ!」
蘇生魔法で頭がいっぱいになっていた僕を現実に引き戻してくれたオーナーさんには感謝しないといけないな。
読んでいただきありがとうございます!!
更新は出来る時にしますね




