第八十二話
第八十二話
変な人に絡まれはしたけど、ようやく朱莉との時間を過ごせる。
消された下半身がすぐに治ってよかった。
もし治らなかったら、朱莉の隣を歩けなかった。
それに本来何もなければ今日は朱莉やみんなと文化祭準備をして、笑ったり……してたんだろうな。
結局源綾音に文化祭準備を崩壊させられて化け物扱いされたり、畠中さんに新聞部の部室の壁を破壊されたり…………琴桐さんに、どう謝ろう。
手紙は書いたけど、弁償するお金なんて僕にはない。
そうだとしても朱莉には出させたくない。
「……はぁ、今日だけで考えることが多すぎて困る。迷惑かけてごめんね、朱莉」
今の僕には謝る事しかできないのが、もどかしくて仕方ない。
源綾音に無理矢理捩じ込まれたとはいえ、僕は学校の先輩を喰らったことに変わりはない。
化け物と罵られたことが今後の学校生活に大きく影響を残すだろう。
「朱莉、クレープ屋さんが見えてきたよ」
趣のある雰囲気の外観に開店当初ということもあり長蛇の列は出来ているが、お客さんは僕や朱莉と同年代の人たちが多い印象がある。
僕たちの前に並んでいる二人組の女性が
「もう少し落ち着いてから来た方が良かったかもね」
「だよね、これだと買えるか不安だね」
やっぱり僕の他にも似たようなことを考えている人がいるんだなと心に僅かな安心感を覚えながら朱莉と順番を待っている。
十一分後
「もうすぐだね風香ちゃん! あんなに美味しそうに食べてるの見てたら余計にお腹空いてきちゃったよ」
はしゃぐ朱莉の姿は希望と言っても差し支えない。
「朱莉、愛してるよ」
僕の口は本心を意識と関係なく出していた。
「私も愛してるけど、結構視線集めてるみたいだけど風香ちゃんは大丈夫なの?」
ボンッ!
そんな効果音が鳴ってもおかしくないぐらい僕の顔は熱くなっていた。
「だっ、大丈夫だよ。だってほらもう少しで買えるから」
順番が回ってきた僕はその場から逃げるように店員さんの前に走った。
「次のお客様ご注文は何になされますか?」
「チョコバナナクレープと……朱莉は何にするの?」
自分のことばかりで朱莉が何を注文するのかを確認していなかった。
その事実に胸に痛みを感じるのと同時に、デートって感じがすることに胸の高鳴りも感じていた。
恐怖の高揚に近いけれど、この高鳴りは安全なものと思っても大丈夫だよね。
「私は……クッキークリームいちごアイスのせクレープをください」
「了解致しました、少々お待ちください」
「これなら風香ちゃんと食べ合いっこしてもおかしくない味でしょ。それにクッキークリーム好きなんだよ私……あとこれと、これとこれも好きなんだよ」
朱莉はメニュー表を指差しながら僕に教えてくれた。
「それなら僕の好きなものも教えるよ」
朱莉同様にメニュー表を指差して教えた。
覚えてもらえたら嬉しいとは恥ずかしくて言えないな。
朱莉なら覚えてくれるって嬉しい信頼もある。
「んふふ、風香ちゃんに信頼してもらえるのは嬉しいものだね」
朱莉と戯れていると注文していたクレープが完成した。
「お待たせしました。……少しクリームの量を増やしておきましたので、楽しんでください」
どうやら他の店員さんが発注をミスってしまい、いつもの二倍のクリームが届いたようで困り顔で教えてくれた。
理由はどうあれ朱莉と楽しめる時間が増えるのは、幸せなのに変わりはないんだから。
「「ありがとうございます」」
最近朱莉と息が合うことが増えてる気がしてものすごく心が躍る。
「友達にも買ってもらえるか頼んでみます」
僕は水本さんや委員長たちなどにLIOMした。
「一応連絡はしてみました」
僕が報告をすると店員さんの頬はほんの少しだけ緩んだ。
店員さんに一礼し、僕と朱莉は近くに設置されているベンチで食べることにした。
朱莉は自分のを一口食べた後、そっと僕の口元にクレープを持ってきた。
「それなら遠慮なくもらうね朱莉」
間接キスにはなるけど、行為までした後だし今更だよね。
「……んん、美味しいねこれ! ほら僕のも食べてみて……最初の一口は朱莉に食べてほしい」
「いいの!? ありがとう風香ちゃん」
……なんか朱莉に犬の耳が生えてる幻覚が見える。
「ん~ん!! ねえねえ風香ちゃん、またあのクレープ屋さん行こうよ!! これ毎日でも一緒に食べたい」
「毎日食べたら太るよ。まあそうなっても僕的にはありだし一緒に運動もするから問題はないけどね」
あれ、朱莉の口元にクリームがついてる。
「クリームついてるよ」
僕は朱莉のクリームを舐めとった。
「にゃにゃにゃにゃ、にゃにしてるの風香にゃん!?」
今度は猫みたいになってる、かわいい。
可愛い朱莉を見ていると胸の高鳴りが激しくなる。
これは魔法ではなく恋の高鳴りなのかもしれないけど、実際のところは僕には分からない。
だけど、一つ言えることがある。
「朱莉が焦ってるところ見てみたいと思ってね。普段見られないからね、ご馳走様」
こんなの朱莉の前じゃないと絶対に出来ないよ。
さすがに大胆すぎたかもしれないけど、たまには攻めてみたい。
……なんかシャッター音が聞こえるような気がする。
周囲を確認すると、僕と朱莉を写真に収めている人々がいた。
……やっぱりやりすぎだったのかも。
「朱莉、行こう!!」
恋人として注目されることが、罵られて注目されるより何倍も良いものだなんて知りたくなかったな。
人気のない物陰に隠れた僕と朱莉はそのままクレープを食べ終えて身体を寄り添いあった。
「朱莉の隣ってなんでこんなに落ち着くんだろうね」
「それを言ったら風香ちゃんの隣なんて天国みたいだよ」
「「お互い様だね」」
本当に、朱莉と過ごすこの時間は心身が満たされる。
二十分後
「もう少ししたら魔女会に行こうか」
「そうしたいけど、もう少しだけ風香ちゃんの肩にすりすりしたい」
「可愛いけどダ~メ、行くよ朱莉」
「は~い」
依頼を受ける為、そして海外に行ける方法を聞く為に魔女会に向かった。
読んでいただきありがとうございます!!
更新は出来る時にしますね




