第八十一話
第八十一話
最近学校付近に開店したクレープ屋さんに朱莉を連れて向かっている。
「風香ちゃんは、やっぱりチョコバナナのクレープを頼む感じなの?」
瞳を輝かせながら僕に尋ねてくる朱莉を見ていて、魔葬少女が僕たちにとっての日常なのではないかと怖くなってしまう。
「風香ちゃん、大丈夫だよ。一緒に魔葬少女になる前に戻るんでしょ、だから両方とも私たちにとっての日常だよ」
学校での出来事で、諦めかけてしまった僕がいるのを朱莉が止めてくれた。
「ありがとう朱莉。……正直言って結構さっきのことが、堪えてるんだ」
鏡を見なくても僕自身がどんな表情をしているのか想像に難くない。
こんな僕を朱莉はいつもみたいに手を引いて走ってくれた。
何度朱莉に救われてきたか数えきれないほどで返しきれないな。
そんなクレープ屋さんに向かっている道中、知らない人に絡まれた。
「アンタらから姉貴の匂いがすることについて説明してもらおうか!!」
意味が分からない。
もうやめてくれよ、朱莉との時間を邪魔しないでくれ。
「こんな人に構ってないで早く行こう」
走るために一歩出した瞬間、僕の下半身が消し飛んだ。
「待てって言ってんのが聞こえないのか!!」
これが朱莉に向いてなくてよかったと、僕がまず考えたのがその事だった。
「そもそも僕たちは貴女のお姉さんを知らないんだけど、まずはお姉さんのことを教えてくれませんか」
このままクレープ屋さんに行こうとしたら確実に攻撃が朱莉に向いてしまう、それだけは避けなければいけない。
「匂いがついてんだから知らないはないだろ」
その言葉を聞いて反論してしまった。
「それを言ったら、チョコバナナクレープを隣で食べた人がいたとします。でも自分は何も食べてなくとも食べたことになるのは理解出来てますか?」
返答が耳に入った直後、この女は結局理解していないと確信した。
「当たり前だろ、食べてないのに食べたなんて馬鹿みたいなこと言われたらたまったもんじゃないだろ」
お前がそれをやってるんだよと口に出そうになったが、我慢した。
「もういいです、話にならない。"狂卒式"……もう行こう朱莉」
この女を狂卒式で閉じ込めておこうと考えたのだ。
あわよくば怪我でもしてくれればついてこられずに助かるとも。
その時ある疑問が湧いた。
『朱莉、この公園ってなんて名前だったっけ』
僕たちの通学路から少しズレた場所にあるこの公園を何度か通り過ぎたことはあるけれど、なぜか名前が気になってしまった。
いやなぜかではない、畠中さんから公園で集会が行われているという話を聞いたからだ。
公園だからと気にしすぎなのは理解しているが、怖いことに可能性としてはないわけではないはずだ。
『名前違うから大丈夫そうだよ、風香ちゃん』
朱莉が教えてくれた公園の名前は清閑の杜だったことに安堵していた。
狂卒式が破壊される音を聞くまでは。
「あのさぁ、この程度の魔法で縛られると勘違いしないでほしいんだけど。これでも私は二十一年は魔物やってんだよ。んでもって片岡戦隊のブルーを背負ってんだ舐めんなよ」
この畠中さんと同じく本物の殺気だ。
それになんだ片岡戦隊って……何かのグループなのは確かだな。
それに少し前なら足がすくみ一歩も動けないほどだったが、案外動いた。
ただ朱莉と幸せになりたいだけなのに、どうしてことごとく邪魔してくるんだよ。
僕がとった行動は簡単だ。
「貴女のお姉さんの名前を教えて、そうしたら分かるかもしれないから」
「姉貴の名前か? 知り合ってても名前は知らないってことはあるわな。姉貴は片岡美佑だ、知ってんだろ」
「「知らないです」」
女は僕と朱莉の顔をまじまじ見るなり殺気が消えていった。
「…………その顔は、本当に知らなそうだな。そっか私の勘違いか。いやぁすまないな」
軽い感じに謝られて僕は初めて嫌味を口に出した。
「下半身消し飛ばしておいてすまないの一言だけで済むことじゃないと僕は思うんですけど」
「だから謝ってるじゃん。それともまたやられたい?」
「やられたくないので、失礼させてもらいます」
朱莉を連れて足早にクレープ屋さんに向かった。
読んでいただきありがとうございます!!
更新は出来る時にしますね




