第八話 ”時の証”コウ、キュウ
「おぞましい殺気だな。よく隠し通していたものだ」
少し感服したように、そして煽るようにして告げる。
「我らが真の王、ヴェスペロ様の名にかけて、ルシファー。あなたの命をいただく」
「この命。安くはないぞ」
キュウが彼に斬りかかる。切っ先が頬に触れようとしたとき、窓ガラスを割りながら氷刹が飛び込んできた。
「国王様!」
「氷刹か」
「キュウ、コウ!血迷ったか!国王様に刃を向けるとは。その忠義はどうした!」
「我らの忠義はただ御一方。ヴェスペロ様だけ」
「貴様ら……まさか宵の国の!」
「邪魔をするというのなら、あなたを殺してでもいく」
再度、キュウが向かってくる。
「国王様、お逃げください。ここは俺が食い止めます」
彼は少し渋ったような顔をしたが、すぐに頷いて後ろの扉から出ていった。
「”氷の証”」
氷刹の剣から冷気が漏れ出てくる。
「絶対零度‼」
剣を一振りすると周りの空間が一瞬にして氷漬けにされ、扉が固く閉ざされた。
「なるほど、扉を閉ざしましたか」
「国王様のあとは追わせない」
氷刹が戦闘態勢に入る。
「氷柱‼」
氷刹の背後からいくつかの氷の柱が出現し、2人のもとへ飛んでいく。2人はそれを躱しつつ、氷刹との距離を詰める。
「粉雪」
コウは剣をふるったが手応えがない。それどころか氷刹の姿が見当たらない。かと思ったが、突然コウの背後に現れ斬撃を繰り出す。
「く……」
キュウが援護に行くが、氷刹の体は粉雪となって消えていった。今度はキュウの背後に現れて切りつけた。
「雪崩」
氷刹の背後から雪の塊が襲いかかってくるような感覚に陥られる。次の瞬間には、コウとキュウは攻撃を受けていた。コウとキュウは地面にうなだれる。
「”時の証”とは、こんなものか」
「さすがは”氷の証”。冷気を纏う攻撃で思うように体が動きませんよ」
「今度はこちらのターンです」
何事もないかのように立ち上がる。
「”時の証”」
暗い紫色の禍々しいオーラが立ち上がる。
「セコンド・ハンド」
「アワー・ハンド」
氷刹が警戒を取る。キュウが一秒とかからず氷刹との間合いを詰める。氷刹は攻撃を剣で受けようとした。しかし、体がうまく動かない。防御が間に合わず、斬撃をもろに食らう。
「一体……」
困惑する氷刹のもとに第二波が来る。コウとキュウの息のあった連携攻撃、氷刹は空中でやり過ごそうと足に力をいれる。しかし、飛べない。思ったように体が動かない。またもや攻撃を受ける他なかった。
「まだまだ」
「いくよ」
満足いく動きができない氷刹にヒットアンドアウェイでひたすらに攻撃をし続ける。あたりに氷刹の血しぶきが散る。
「なるほど……」
攻撃を受け続け、ボロボロになった氷刹がやっと口を開く。
「時間の操作か。さすが”時の証”」
言葉を続ける。
「対象の動きを遅くする能力か。どうりで動きが鈍くなっていたわけだ……いや、それだけじゃない。俺の攻撃を受けたものは体の体温が奪われ、運動能力が低下する。それにもかかわらず、お前たちは以前よりも速さが増した。つまり……」
少し口角を上げながら告げる。
「相手の動きを遅くし、そして自分の動きを速くする能力。それが”時の証”の能力だ」
「この能力の正体がバレたところで問題はありません。あなたを殺すという結果は変わらないのですから」
2人が攻撃を仕掛ける。
「動け!」
氷刹も剣を構え、対抗しようとする。
「もっと速く!」
「さらに遅く!」
2人の動きはどんどん加速するとともに、氷刹の動きがどんどん遅くなっていく。
「動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け!!」
やっとの思いで動かせたのはわずか数センチ。
「じゃあね」
「氷刹」
無数の斬撃。剣を持っていた右腕が宙を舞う。氷刹はその場に倒れた。地面には血の湖ができている。
「ヴェスペロ様、この者はどうしますか」
「宵の国につれてこい。我々の国で大々的に処刑を行う。
「承知いたしました」




