人は存在しない過去を思い出すのか
数万行の翻訳を三日で終わらせたんだ。自分でもびっくりだよ。
酒場に足を踏み入れた瞬間、時間の流れさえも遅くなったかのようだった。
暖かな黄色い灯りが銅製のシャンデリアから降り注いでいた。
壁沿いのカウンターは様々な種類の木材が使われ、表面は無数のグラスによって磨かれていた。
バーテンダー——痩せた高身長の男で、六十歳前後に見えた。
彼は浅茶色のリネンシャツを着て、革製の道具ベストを羽織り、右手は精密な機械義手だった。
その男はグラスを拭きながら、光にかざして確認していた。
空気には古い木と海塩のしょっぱさが漂っていた。
焼き魚とパンの香ばしい香り、薪の燻煙、数十種類の自家製酒の芳醇な香りも混ざっていた。
古い蓄音機が隅で回り、音楽が物憂げに響いていた。
壁には様々な装飾が掛けられていた。
とっくに止まった時計、四方八方から集められた記念品、色褪せた海図。
既に死んだ大陸、死んだ人類の結晶、死んだ旧時代を偲ばせていた。
何百もの徽章が並べられ、残りの隅を埋めていた。
おそらく、過去にこの海で生き抜いた誰かの証であり、あるいは既に去りし伝説の証でもあるのだろう。
命の終わりに、彼らはこの証をここに託した。もはやいかなる立場も帯びることなく。
笑い声、ペン先が走る音、机の上に置かれた道具が持ち上げられ、また置かれる。
ここには怨恨はない。ここは、時代の潮流の中で、狭間にある酒場なのだ。
「相変わらずだね、」
由夢の口調には少しの軽やかさが混じり、バーテンダーに手を振った。
「BOSS、ただいま。」
BOSSは手にしたグラスを置いた。白髪混じりの頭の下、茶色の瞳が二人を見つめた。
「やはり……そっくりだな、博士……」
彼は後ろに手を振ると、二人の小さな女の子が走ってきて、カウンターを任された。
「さあ、話をしよう。」
BOSSは二人を連れて二階へ上がった。
孤鍵は目の前の老人を見つめながら、何かを考えていた。
「ふん、誰かを思い出したか?」
BOSSは振り返らず、部屋のドアを開けた。
孤鍵は手にした【零域コード】を弄りながら言った。
「父さんは……一体どんな人だったんだ?」
BOSSは木製の机の向こう側に座り、引き出しを探っていた。
「博士はね、とても真面目な人だったよ。」
孤鍵は戸口の枠に寄りかかった。
「何にでも心配性で、まだどこか足りないんじゃないかってずっと思ってた。」
BOSSの手が一瞬止まり、そして箱を取り出した。
「ファイルの暗号化は自ら行い、研究資料は厳格に別々に保管するよう求め、よく教授と喧嘩していた……」
由夢は高い椅子に座り、脚をぶらぶらさせていた。
「教授の方はとても理想主義的でね、研究成果が必ず人類を正しい軌道に戻せると信じていた……でも当時の周りには誰もそんな考えを持っていなかったんだ……」
BOSSは箱の埃を拭い、蓋を開けた。中には古い写真と、奇妙な金属の塊だけが入っていた。
写真には、BOSSは四十代くらいに見え、隣には同じくらいの年の楓教授と鎖博士が写っていた。
一人はボサボサの黒髪にヤギひげを生やしている。
もう一人は手際の良い灰色の髪に、あごひげをたくわえている。
二人とも三十代半ばくらいだった。
そしてもう一人、金色の眼鏡をかけた二十代の少年もいた。
「クラフツマンだ。才能ある発明家であり技術者だ。君が手にしているものも、彼の作品だよ。」
BOSSは一人一人を指さしながら、過去を回想した。
「七年前、博士は彼と様々なものを私の船に押し込み、あの炎の中から連れ出した。」
「君の父親は君のそばにいる時間を一度も持てなかったが、彼が君に残したものは、この職人が君にもたらしたものだ。」
BOSSはため息をついた。
「そして彼は、忽然と姿を消した。」
孤鍵は何も言えなかった。ただ写真に写る父親を見つめるだけだった。
何も感じなかった。
「もういいだろう、BOSS。Kにしかこのキューブは動かせないんだろ?」
由夢は椅子から飛び降り、両手を孤鍵の肩に置いた。
BOSSは由夢を見て、何かを言おうとしたようだったが、結局飲み込んだ。
孤鍵は既に写真を置き、その立方体を研究していた。
軽く笑い、声を出して笑った。
「初対面が写真っていうクズが、こんな後始末を残していくのかよ。」
BOSSは隣の棚から小刀を取り出し、拭いて机の上に置いた。
「これも、彼が残した遺品の一つだ。君が手にしているものの一部でもある。」
由夢は自分の手のひらを切り、血を表面に垂らした。
立方体の表面に紋様が浮かび上がり、孤鍵の手の中で溶解し、そして【零域コード】に溶け込んだ。
残ったのは、まだ手の中にある一枚のチップだけだった。
【零域コード】は絶えず震え、そのチップを自ら飲み込もうとしているかのようだった。
「COM-0、彼はそう呼んでいた。」
BOSSは由夢の傷を手当てし、また棚のそばへ戻った。
孤鍵はチップを【零域コード】に挿入すると、膨大な情報が一瞬で彼の脳に流れ込んだ。
「もちろん、まだまだある。だが……まあいい、ゆっくり休むといい。」
BOSSは一冊の本を引き抜くと、棚全体が右へと移動した。
その後ろには、入念に手入れされた一揃いの装備が並んでいた。
「久しぶりだね〜」
由夢はその中の一振りのユニークな拳銃を手に取った。
同じく変わった形状の短剣を腰に差し、残りの数枚の投げナイフ状の金属片を太もものホルダーに収めた。
「BOSS、『紫電』が戻りました。」
小さな女の子が駆け上がってきた。
わずかに押し開けられただけだったドアが、勢いよく最後まで開かれた。
一人のスタイル抜群の女性が入ってきた。
深い紫色の長い髪はすっきりとしたハイポニーテールに束ねられ、何本かの落ちた髪が額に掛かっていた。
鋭い筋肉の線が胴体と左腕を覆い、袖なしのタンクトップが張り詰めていた。
短パンも動きやすさのために強制的に切り詰められていた。
右腕と両脚は銀色の義体で、その表面には一点の錆びもなかった。
彼女は二十代に見え、機械の左目と濃い紫色の右目が部屋を見渡した。
「よっ、白毛ちゃん、」
瑠璃が口を開いた。
「天上の水はお前を軟らかくしなかったようだな。」
由夢も笑った。
「L、海風でお前の毛はもっとざらついたみたいだね。」
二人は肩をぶつけ合い、戦友としての挨拶を交わした。
「紹介するよ、」
由夢が横に身をずらした。
「博士の息子、K、ナイトウルフだ。」
瑠璃はこの少年を品定めした。
「体つきは悪くないな。普段から鍛えてるんだろ。」
孤鍵は彼女の気場に圧倒され、何を言えばいいのか分からなかった。
「L、瑠璃だ。紫毛の虎娘。今も生き残っている数少ない『ジェネシス』実験体の一人だ。」
「……まあいいや、物は手に入った。」
瑠璃は防水ケースを机の上に置いた。
「それと、下に『客』が来てる。」
由夢は伸びをし、目線で孤鍵に合図を送った。
「行こうか、デビュー新人?最初の仕事をやりに。」
COM-0 基本形と構造拡張のベースモジュール。コンパイラが手動で構造を作れるようにするやつ。
簡単だけど、めっちゃ奥が深い(
最初に考えた時は、まさかこんなことになるとは思わなかったよ。
でも今は一緒に悩める仲間ができたってわけか_〆(´Д` )




