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スーパーカブおっさんの家ごと異世界転移スローライフ〜「燃費」良すぎて物流無双しちまったわ〜  作者: 池田大陸
第十二章 東区開拓編

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609 ミルコの話

 あー、良かったー!


 ターニャが無事に帰ってきて俺は心底ホッとしていた。


 村をブラブラしとくって話だったから大丈夫だろうと思ってたら……ターニャのカブは消えてるわ、ターニャ本人ももちろんいねぇわでめちゃくちゃ焦ったじゃねーか!? まったく……。


 当のターニャも流石にうつむき加減で気まずそうな顔だ。


 っていうかそもそも、こんな事は珍しいんだ。ターニャが勝手に俺の側を離れてどっか行くなんて今まで滅多になかった。

 知らない人について行くな、という言いつけを小さい頃から守ってたし、元々俺に付いていくのが好きな奴だ。


 いなくなる理由は“芋”に釣られたぐらいしか考えられねーが……。



 するとターニャの隣の少年がターニャの前に出てきてこう言った。


「おじさん、ごめん。俺がターニャを川に誘ったんだ」


 おお、なんかターニャと同じぐらいの歳にしてはしっかりした奴だ。


 俺は瞬時にターニャに見せていた険しい表情を和らげて少年に聞いた。


「君は誰だい?」


「……スコット」



 するとターニャが割って入ってくる。


「おじ、悪いのは私だよ! 私がカブを持ち出したんだから……スコットは悪くないよ!」


 な、なんだなんだ??


 ターニャがこんなに必死でこの少年をかばうなんて、これはなんかあるぞ……しっかりと事情を聞いてみよう。



 ……。



「やっぱり芋に釣られてんじゃねーか、お前!?」


「うひぃ!」


 話を聞いて苦笑いしながら、俺はターニャの頭を掴んで揺さぶった。


「おじごめん! 芋の魅力にはあらがえないぃ」


「あははははははっ!!」


「見ろ、スコットにもめっちゃ笑われてるぞ!?」



 さっきまで少し強めに注意しようと思っていた俺だったが、なんかそんな気も霧散しちまった。


 そんな俺の様子を見たカブが一言。


「やっぱりカイトさんはターニャちゃんに甘いですね!」


「うわっ! カ、カブが喋った!?」


 近くにいたスコットは当然のように驚く。また説明しなきゃなんねぇな……まあ慣れてるけども。



 ……。



 カブについて話すと、スコットは猛烈に感激していた。


「す、すげー!! これが自分だけで走れて人と話しもできるっていう、伝説のスーパーカブなんだ!?」


 なんかスーパーサ○ヤ人みたいだ……。


「ふっふっふっ――」


 早速カブが調子に乗ってきそうだったので、すぐに俺はスコットに質問した。


「スコット。君、王都から来たんだってな。王都もスーパーカブメール(ウチ)のカブが走りまくってるだろ?」


 すると意外な答えが返ってくる。



「うん! 毎日手紙配ってた。それでね、なんかこの東区にも手紙が配達されるんだってさ」



 え……なにそれ!?


「そうなのおじ?」


 ターニャも不思議そうに俺に聞いてくるが、全く知らん。


「い、いや。初耳だ……もしかして現社長のミルコが配達範囲を広げるつもりなのかもしれん。でも確実に赤字ルートだと思うんだが……まあいい、どっかで情報は入ってくるだろう」


 俺はそれも気になったが、そろそろマグナ村の館に帰らないとリーナ達が心配する。ターニャに帰りが遅いのを咎めてる俺がこれじゃ格好つかねーな。



「じゃあそろそろ俺達は帰るわ。またな、スコット」


 そうスコットに告げると、奴は少し眉を顰めてターニャの方を見た。ターニャがすぐさま駆け寄る。


「スコット。絶対また来るからね! 絶対!!」

「うん。俺、あそこの長屋に住んでるから絶対来てくれよ! ターニャ」



 そうしてしばらく見つめ合う二人。


 その横顔は今までのターニャが見せたことのある惜別のそれとは少し違っていて、本当に離れたくなさそうに見える。そしてお互いの距離が異様に近い。


 あ、あれ? コイツ等もしかして……。


 ここでやっと俺もハッとした。本人達に自覚があるかは知らんが、二人はそういう仲なのでは!? と。


 ターニャ、お前もついにお年頃になっちまったか! うおお……。


 思わずニヤついてしまう俺。

 いやー、こんな顔絶対見せたくねえわ。



「カイト社長! そろそろ館に急いだ方が……」



 それまで黙っていたクリスが催促してくる。


「お、そうだなクリス」


 最後にこれだけは伝えとこう。俺はスコットとターニャに向けて言った。



「スコット君よ、俺達月に1〜2回はここに来ると思うから、またターニャと遊んでやってくれな」



 スコットから笑顔が弾ける。満面の笑みだ。


「やった! うん。おじさん、ターニャ。絶対来てね」

「うん! またねースコット」




 ……そんな感じで俺達は帰路についた。


 ターニャはスコットのことを思い出しているのか、ベージュカブに乗りながらボンヤリしている様子。


 子供って知らないうちに成長してるもんだなぁと感心する。また会いに行こう。




「社長!」


 後ろからの声は、緑カブに乗ったクリスだった。


「今のように社長が外出時に困らないよう、領主の代役を立てた方がよろしいのでは!?」


「おう、そりゃあそうなんだけどな。中々そんな人間すぐに現れないんだよな……」


「僕がやります! 仕事は全て覚えます!」


 おお、凄えやる気だなクリス。


「先程社長の話に出てきたミルコさんと言う方は、社長の右腕として活躍してきたと聞いてます! ならば僕もそれになりましょう!」


 その目は真剣だった。


 行きの時はあんなにカブに乗りたがってたのに、自分の希望より仕事を優先して考らえれるってのは中々出来る事じゃない。


「うん! 分かった、ありがたい。じゃあ帰ったら手続きのやり方とかいろいろ教えるわ」


「は、はい!」



 ――ドゥルルルルーッ!



 そのままカブを飛ばして俺達はマグナ村へと帰ってきた。


「……!」

「…………!?」


 ん?


「なんか、声が聞こえねーか!?」


 領主館に近づいて行くと、門前で誰かが怒鳴り合う声が聞こえてきた。


 や、やべぇ、早速揉め事か!? 急がねーと……。

 しかしそれは杞憂に終わった。



「何だニャお前ら!? ここは輩は侵入禁止だニャ!」

「ああん!? だから輩じゃねーっつうの! つーかテメーあの時の泥棒猫じゃねーか!? 何で領主館ここに居んだよコラァ??」

「あ、ガスパルさん。落ち着いて……俺等はスーパーカブメールの者です。カイトさんに用があって来たんです」



 おお! ミルコとガスパルじゃねーか!?



 俺は嬉しくなって急いで門へと向かった。


「おーい、二人ともよく来たなー!」


「あ、カイトさん!」

「うおおおおっ、カイトォォ!!」


 二人はすぐに駆け寄ってきた。

 ミルコは少し誇らし気にこう話す。


「お久しぶりっすカイトさん! 実は東区にもスーパーカブメール(ウチ)の配達範囲を広げようと思って、これからポストを設置するために挨拶に来たんすよ!」


 やっぱりか!


 ミルコのセローとガスパルのアフリカツインの荷車には、しっかりミスリリウム製のポストが積まれていた。


「それで、是非とも領主様の許可を頂きたいんすよね!」


 少しおどけたように肩をすくめて話すミルコ。もちろん俺は笑顔で了承する。


「許可もなにも大歓迎だぜ! これからこの東区に住みたいって奴も都市部の情報をメールで受け取れるってのは大きな安心材料だ。単身赴任の移住者も多いから、ヤマッハとかの家族宛に近況報告を送りたいって奴も多いしな」


「はい。それにスーパーカブメール(ウチ)としても、これで“スズッキーニ()()()メールを配達します”という宣伝文句が打てます。これは大きいっす!」


 そうだな。俺はミルコがしっかり会社の後を継いでくれていて嬉しくなった。


「でも赤字路線だろ? どう見ても」


「はい、なので週に1回ぐらいの配達周期でいこうと思うっす」


 まあそれが現実的か。

 ここで、ターニャがソワソワしながら口を挟んでくる。


「ねえミルコ。メールって、マグナ村とミスリル村の間も配達するの?」


「ふふ。もちろんだよターニャちゃん。東区はヤマッハ→マグナ村→ミスリル村→王都。それと王都→ミスリル村→マグナ村→ヤマッハ、っていうルートで行くから、手紙はどこからどこにでも届くよ」


「うぇーーい! やったー。スコットに手紙書こう!!」


 ふっ、文通か、なんか初々しくていいな。

 俺はクリスに早速仕事を提示した。


「クリス。ポストが設置されたら、ヤマッハ方面と王都方面でメールの仕分けを頼む」


「はいっ! 承知致しました」


 めちゃくちゃ良い声で答えるクリス。良いねぇ。


「じゃあ早速ポストを設置してもらおうか」

「おっしゃ! 任せろォォ!!」


 ガスパルは俺が指差した門の前をすぐにスコップで堀り始める。


 その間、俺はミルコからこんな相談を受けた。



「カイトさん。相談なんすけどね、実はもう一つやろうとしてる事業があるんすよ」


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