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スーパーカブおっさんの家ごと異世界転移スローライフ〜「燃費」良すぎて物流無双しちまったわ〜  作者: 池田大陸
第十二章 東区開拓編

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606/611

606 ミスリル村にて

 こ、こんなに曲がりくねった道だったのか……。


 俺は今さっきマグナ村から走ってきたルートを見て驚いた。



「す、凄いですー! グニャグニャです!」


 カブも似たような感想を漏らしている。


「いやー、地図見たら曲がりくねってるって分かるけど、走ってると分かんねーもんだなしかし……ん!?」


 俺はふと気になり、その地図上の現在地を指差した。


「今の位置って地図でいうと()()だよな? じゃあ……」


 思い立った俺は即、道路の真横の急な斜面を駆け登った。


「あ、待ってーおじ!」

「僕も行きます!」


 後ろからターニャとクリスも付いてくる。

 地理局の奴らは俺が何を確認したいのか分かっているような顔だな。そう――。


“近道”の発見だ!


 15メートルほどの斜面を登り切り、そこから下を眺めるとやはりあった。地図にあった通りの道路が!!


「ほら見ろ。今登ってきた斜面を通ってあそこまで行くと多分10数キロはショートカットが出来るぞ! 多分同じような最短路がいくつかあるだろう。ちゃんとした道にするには大分山を削らなきゃいけないけどな」


 するとターニャが、ワクワクしたような顔で聞いてきた。


「そっか! ……でもおじ、新しく道を作るとして、凄いお金と人数がいるでしょ? またヤマッハや王都から集められるかな?」


 ふふ、随分現実的な質問だなターニャ。でも心配はいらねーぜ。俺は参加しないからな。


「流石に俺の軍資金でなんとかできるような話じゃねーな。この規模の工事は国が業者に依頼するべき案件だ。CBトンネルのときと同じようにな。国も実際そうする予定だから地図を描かせてるんだろう。ってわけで、今回俺は参加しねーぞ」


 ターニャは少し不満気な顔だ。


「むー……おじのことだから俺が何とかする! って言ってくれると思ったのに」


 あ、コイツ俺を万能人間か何かと勘違いしてんな。ちょっと現実を教えてやろう。

 俺は軽く笑って教えを説き始めた。


「言っとくぜターニャ。俺は出来もしないことは絶対に引き受けない! 何でもホイホイ安請け合いしてパンクするってパターンを何回も見てきたからだ」


「……それは分かるけど、出来たら色んな人から“凄い”って言われるでしょ?」

「はっはっは!」


 ターニャの純粋な意見に、俺は思わず笑いが出てしまう。

 続けて苦笑いしながらフルフルと首を振った。


「今の俺はな、会社を回すことだけを考えていたスーパーカブ油送やメールの時と違って、多方面にやることがある。領主としてシグナス区を発展させ、住民達の生活を守るっていう責任もある。名誉のために工事に手を出して領地を治める政治活動に手が回らなくなったらどうなる? 本末転倒ってもんだろ?」


「むぅ……」


 ターニャは何か思う所があるような表情をして、そのまま黙ってしまった。

 このところターニャも自分の意見を言うことが多くて頻繁にこんな感じの会話になるのだ。

 ま、成長してるってことだろう。うん。全然悪いことじゃない。



 ここで、俺はクリスに視線を移し軽く肩を叩いた。


「それによ、無茶しすぎて体や心が壊れたら元も子もないだろ。なあ、クリス?」


 クリスはハッとしたように頷く。


「はい、カイト社長! 今回のことで僕は身を以て知りました。人の向上心というのは、ときに自分の身を滅ぼす毒にもなる――ということを。ターニャさんは若いので理解しづらいかもしれません!」



 俺とクリスの会話を聞いてターニャは顔を上げ、やっと笑顔を見せた。


「自分が出来ることをやるのが大事……ってこと、か。うん……」


 やはりまだ釈然としてないようだ。まあしょうがねえよな。歳も生き方も違うんだ。



 それから俺達は再び王国の地理局の連中と合流した。


 そして聞いたところ、やはり国はこのマグナ村――ミスリル村間の道路開拓をしてくれるつもりらしい。


「いやー、ありがてえ! ここが最短で結ばれたら大分行き来も楽になるな。俺もいろいろ頑張るってジクサール公にも伝えといてくれな」


「承知致しました! ジクサール様も東区の開拓は宿願でしたのでお喜びになられるでしょう。では失礼します」


 お互い笑顔ですれ違い、俺達はミスリル村へと急いだ。



 ――ドゥルルルルー。



 そして嗅ぎ覚えのある温泉地特有の匂いが漂ってきた。

 硫黄の微かな匂いが鼻腔をくすぐってくる。


「おおっ!? だ、大分様変わりしたんじゃねーか!?」

「なんか人が結構いる!? 建物もこんなに建ってなかったよ??」


 村を歩く人はどう見てもミスリリウム採掘場で働いている鉱夫らしき人物が5割、あとは商売人とか、身なりの良いのは旅行者とかかな?


 ちょっと遠くに見える長屋みたいな建物はマグナ村で現在建設中のものによく似ている。

 鉱夫達が出入りしているところを見ると、彼らの宿だろうか?



 冬から半年近くで確かに村っぽくなったなー……。

 俺は感心すると同時に二人に話した。


「まずはあの長屋に居るだろう村長に会いに行こう。“村”になってるからいるハズだ」

「了解です! 僕がしっかりメモを取りますよ!!」


 メモ帳を取り出しニカッと微笑むクリス。やはりどことなくカブに似てるな……。



 一方ターニャは村を見回しながらこう言った。


「おじ。ちょっと私、歩いてこの村見回ってくる」

「ん。分かった。俺達はあの長屋のどこかにいるからな。遠くには行くなよ」


 まあ小さい村だし、迷子になったりはしないだろう。



 ……というわけで俺達はそれぞれのカブを長屋の前に停めた。



 ……。



 やはり長屋の一室が村長の家だった。


「おお、どうもどうもカイト様! ようこそミスリル村へ。私が村長のカルロスでーす!」


 なんとも陽気な男だ。俺も笑顔で応えるぜ。


「どうも。カイトだ。いやー、しかしえらい変わり様だな」

「おお!? 昔のここを知っておられる?」

「ああ。半年ほど前に温泉につかりに来たんだけど本当に採掘場と温泉しかなかったんだ。でも温泉は強いぜ!? 東国のレブルからも旅行者を呼べるし、採掘場は安定してミスリリウム鉱石を採石できる」

「はっはっは。鉱業と温泉……いやー、つくづく私は運が良い!」

「あとはマグナ村(ウチ)もそうだけど、土地の拡大が必要だろうな」


 ……。


 どこか再会した旧友のような感じで話ははずみ、気付けば俺は村の情報を自然に吸収していた。

 今後の課題も話した上で、村長のカルロスと別れることにした。



「いやー社長! 貴重な話が聞けました」


 書記に徹していたクリスは満足そうに微笑んでいる。俺もそうだ。ここに来て良かったぜ。



「さーて、じゃあ帰ろう。ターニャはどこだ……ん? カブどうした? なんか青い顔してるぞ?」


 カブは比喩でなく本当に青い顔をタブレットに貼り付けている。なんだよ?



「あ、あの、カイトさん! その……ターニャちゃん、ベージュカブでどっか行っちゃったんですけど! ……しかも男の子と一緒に!!」



 え……。


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