悪巧み
七月中旬の部室を出て、他のイラスト部員と歩くのは久しぶりな気がした。
いつもはバイトがあるからと、すぐに帰るが今日は違った。
暇だ。
最近、バイトをするのを控えている。来週からはバイトをしなくなるからもっと暇になるだろう。
アルバイトばかりでも良いのだが、それではいけない気がして、そうすることにした。これも大学受験があるからだ。勉強をしなければならない。
しとーだって、その為に塾の夏期講習に行くと言っていたし、オレは家で勉強をしよう。
そんな今後の事を考えながら歩いていたら、リーダーが言った。
「あ、そうだ! 夏祭り、迷子になった人は自動販売機のじゃなくて、屋台として出てるジュースを買っておごるのはどう?」
「良いね~」
何勝手に盛り上がってる? 手影絵の声で気付いた。
「おい、それなし!」
「もう決まってしまいました~、残念!」
リーダーは楽しそうに言う。
「それ、白見さんも入ってるんだろ?」
「入ってません! みずほちゃんはゲストなんだから。それにまだ『白見さん』って呼んでるの?」
「うっせー」
悪態を吐く。それでしか反抗できない。
彼女達の思い付きが凶と出るか、吉と出るか。
分かるはずもない。
「で、夏祭り、いつ行くんだ?」
「それがね……」
リーダーは言い難そうに言った。
「八月の隣町の夏祭りが有力かな」
「ふーん、何で隣町? まあ、オレとしてはその方が近いし、ありがたいけど」
「成績の問題」
「ですよねー」
リーダーの話にオレしか答えない。メガネも手影絵もロリも黙ったまま、下校する。校門まで来た時にやっと「じゃ、さいなら~」なんて言って帰って行った。
白見さんには誰かちゃんと連絡しているんだろうか? と、ふと思った。
「白見さん、か……」
もし、白見さんと呼ばなくなったら、オレは何と呼ぶだろう。
スズユにも言われた言葉を思い出す。
悩んだ、正直。まだオレにはまだ、彼女は『白見さん』なんだと思った。
いつか、しとーみたいに『白見』と呼ぶ日が来るだろうか。それとも『みずほちゃん』? いや、それはないな。きっぱり言い切れるのは何でだろう。もっと良いあだ名を付けたい。だって、彼女はオレのことを『紺野はん』と呼ぶから、それに対になる呼び方……何かないかな……なんて考えながら、オレは彼女も使う駅のホーム目指して歩き出した。この学校から駅まで約三十分。バスやら自転車やら使えば良いのだろうが、歩いている。白見さんも歩きなんだよな……なんて思い、一人笑ってしまった。
彼女が歩くのは少しでも遅く学校に行く為だろうか、オレは運動の為だけど。
おじいちゃんみたいな考えだと、ふと思ってしまった。
そのくらいになった時、オレの隣には誰が居るんだろう。とぼとぼと蒸し暑いまだ明るい夕方の夏の時間を歩く。




