帰り道
いつもと同じ帰り道のはずなのに違うのは、隣に紺野はんが居るからだろうか。
彼はいつもと同じように笑う。
少し前までは何かに困っていたのに、それをなくそうと努力していた。いや、ただ忘れようとしているのかもしれない。
そんな話の中で、あと数日で七夕だと気付いた。
「紺野はん、妹がいるの?」
「そう、一人ね。杏子っていう名前で中学二年生。これがさ、その短冊」
「赤いね」
「そうなんだよね! って、やっべー、何でこんなのまだ持ってんの! オレ、アンに怒られるわ、これ」
「え、どういうこと?」
「いや、朝さ、これ、その近所のおじさんに渡しといてね、って言われたのにさ、ここまで持って、忘れてるって。それも予備の短冊まであるし、要る?」
手渡されたのは、黄色と青色の折り紙よりちょっと長い紙の短冊だった。
「短冊か……、懐かしいな……。最近はこういう行事、やってないから」
「そうなんだ、うちはその妹が行事好きな人間だからね、けっこうやってるよ。花見とかさ。だとしたら、これ、予備じゃなくて、オレも書いておじさんに渡せってこと?」
真剣に悩み出してしまった。
「紺野はんはお兄ちゃんなんだね。私にも大学二年生のお兄ちゃんがいるよ」
「名前は?」
「しょうぶ、正しいに武将とかの武を書いて、正武、なんだけど、たぶん、お母さん達、気付いたんだろうね。もっとちゃんとした名前付けようって。だからって、この名前になって……そこまでは気付かなかったんだろうね。お兄ちゃんよりは良い名前で良かったって、ちょっとは思ってるの」
私は笑っていた。へらへらって。紺野はんの真似ではないけれど、へらへら笑うって、少し楽かもしれない。
「白見さんは、何のお願いする?」
「私?」
彼は未来をも大事にする人だから、こう言ったんだと思う。紫桃くんなら、絶対違う。彼は現在を大事にして、一生懸命に生きる人だから。
「受験合格、しますように、かな……やっぱり」
「もう決めた?」
「うん、でも、行ける範囲で考えてる」
「そうか、オレもそう、白見さんと同じ」
こうやって、時間が過ぎて、目的地が近付いて行くんだ。




