好きな奴と嫌いな奴
また、雨。下駄箱にはクラスの女子が一人。苦手な奴だ。勝手に判断して言い触らすんだろ。
「ねえ、しとー、今度は私と帰ろうよ」
「帰らない」
「即答? ずっるーいよ! あの子ばっかり!」
「俺だって、帰りたくはなかった。だけど、帰るしかなかったんだよ!」
「え?」
「いや、傘ないのは本当だし、あれだったけど」
「あれ?」
「助かったけど……」
「じゃあ、一緒に帰ろうよ。今日もどうせ、持って来てないんでしょ?」
私、持って来たんだ……なんて言うクラスの女子の言葉なんて店の音楽みたいにすぐに聞こえなくなった。
白見っ……と言ったかどうか、自分でも覚えてない。けれど、彼女は俺達の前から静かに消えて行った。すって、あの日の俺がそうしたように、何事もないみたいに。
そんなの知らないあの女子が言う。
「最悪、澄ましちゃって。あんなのとよく仲良くしようなんて思うよね」
しとーも。
「つまらなそうな人生してそう」
そいつの言いたいことが分かってしまって、必死に今の言葉を消そうとした。バカみたいだ。もう、終わっていることなのに。
「そう言うなよ……」
お願いだから、そう目つき悪く言うなよ、必死に耐えて、一人で頑張ってるんだから。
勝手な思い込みかもしれない。けれど、その時の俺にはそう思えたんだ。
彼女の視界から俺が消えているのが分かったんだ。
だけど、それを少し嬉しい……なんて思ってしまっている自分が居るんだ。
やっと、歩き出したって。やっと、俺から離れて、自由に笑える日々が来たのかって。近付いてんだな……って、少しはお前の盾として役に立ててるか? って、本当はずっと言いたくて、確認したくて、吐き出しそうで、心の中ではずっとそう思っているんだ。
君がどんな方法でも幸せになってくれるなら、こんな噂はやっぱり、どうでも良いよなって思えて来るんだ。




