トランシーバーを持った彼女
六月中旬、ある日の放課後、あの出来事があった下駄箱で、お団子ヘアの彼女に出会った。
その彼女は何故だか片手にトランシーバーを持っていて、走って私の所に来た。
「受験勉強してますか?」
唐突の質問に答えられなくて、「それなりには」という回答しか出来ず、「じゃあ、夏祭りのご予定とか決まってますか?」と言ってくれた時にはもう、どきどきしていた。
「これはお友達になりたいイラスト部全員からの提案なんですが、白見瑞穂さん、あなたとこの夏遊びたいんです! 少しの間でも!」
彼女の必死なお願いに私は思わず、うん! と頷いてしまっていた。
「じゃあ、今日から本格的にお友達ですね、私達! みずほちゃんって呼びますね! だから」
「スズユちゃん、って、呼んでも?」
「良いに決まってるじゃないですか!」
明るく笑顔で接してくれた。こちらまで嬉しくなる。
そんな彼女とは初対面ではない。ゴールデンウィーク前以来だ。自己紹介もしていたし、連絡先も知ってる。あとは、本人を知って行くだけだ。
それは紫桃くんや紺野はん、アカネちゃんとして来たことと同じ。
頑張らなくてはいけないことだ。
イラスト部の中で一番話しやすいのは、やっぱり紺野はんだけど、その次に、同じ学年で話しやすいのは、このスズユちゃんだった。
彼女は元気いっぱい、トランシーバーを使い出し、「オッケー取れましたっ!」と誰かに報告していた。
「あ、そうだ! その友達の中には紺野はんもいるからよろしく! なんだけど、大丈夫かな?」
「大丈夫だよ?」
何故、そこを気にするのか、私には分からない。
紺野はんがイラスト部の中に居ることは不自然ではないし、居ないことの方が不自然だ。
そのくらい彼はその部活に必要な存在だ。
そう思ってしまうのは、私が紺野はんが居ないとイラスト部に近付けないからだろうか。
よく気にかけてくれる彼に、今度話してみよう。
誘われたよ! と。彼は笑って、良かったね! とか、オレも一緒に行くのか……と言うだろうか。
それを考えるだけで少しわくわくして楽しくて、嬉しくなる。
嬉しくなるのは変だろうか……それでも彼と一緒に居る時のような気持ちになった。




