彼の誘い
五月終わりの文化祭四日前、俺はいつもの空き教室で弁当を食べる白見に聞いた。
「本当に文化祭も体育祭も来ないの?」
「うん、文化祭は、うーん……でも本当、体育祭なんて無理……」
彼女は苦笑しながら言った。会ってしまう危険があるからか、はしゃいだ姿を見せたくないのか、意地っ張りだ。
「文化祭なら、まだ望みあるんじゃないか?」
「え?」
「だって、講堂では演劇部の劇やったり、暗い中のステージ、まあ、少しライトでキラキラするかもしれないけど、後ろに居れば分からないし、何より人が多いから目立たない。それに今年はうちのクラス、何もしないから平気だ」
去年は何か食べ物やら飲み物を出す、小腹を満たすものだったが今年はやらないことに決まった。その時、祭り好きの奴らはやろうよ! と騒いでいたが、去年の準備や当日がメチャクチャで、部活の事がある奴らが今年は多く、無理となった。
「赤根の所も確か、やらないって聞いたし」
「そうなの……」
暗い顔だった。
*
ずっと座り込んでいる。
文化祭当日、俺は体育館の裏に居た。一応、クラスでの出席確認があり、その後解散となった。何もない文化祭は適当に過ごせるから良い。だが……。
「しとー、落ち込んでんの?」
紺野だった。後ろから近付くとは。
「いや……」
「そういえば今日、白見さんいなかったもんね。白見さん、よく見れば、キレイ系美人だからもったいないよね」
そこに少しかわいいとか付け加えろ……とも、何も答える気がなく、喋らせといた。
「じゃ、そろそろ行こうか、しとー」
「は?」
「文化祭、今日しかないんだから」
グイグイ腕を引っ張られた。
紺野は男だ。これが女子ならすぐに立ったが、立たなかった。
「ったく……」
「いて!」
尻に軽く蹴りを入れられた、気合い入れだ。
「立ちますよ……」
ようやく立った俺は、紺野と文化祭を回ることにした。




