帰りの電車
チェックアウトは行く前に済ませていたし、思う存分遊び切ったら帰るだけになっていた。自由に行動し、自由に発言する。それが少しは出来たではないか、と思ったけれど、白見としてはまだまだなようで、悩んでいるようだった。彼女は四月からまた、あの生活に戻る。俺はそんな彼女を守れるだろうか。今のように彼女と距離を作ってしまうだろうか。紺野よりも自然に彼女と居れるだろうか。彼女は独りになっても平気な顔をするだろうか。また、俺は同じような過ちをするだろうか。だから、人は皆、四月が怖いのかもしれない。帰りの新幹線も行きと同じように座っていた。
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たくさんの思い出がこの中に入っている。自然と笑顔になってしまう。疲れていたようで帰りの電車はあまり喋ることなく、眠ってしまうアカネちゃんとか、何だか怖い顔をしている紫桃くんとか、私と同じようにスマホをずっとしている紺野はんとかがどんどんいつもの現実に戻って行くような気がした。帰って、家のドアを開けたら何て言おう。楽しかったよ、は当たり前だけど。他には、お土産買って来たよ、こんな事が出来た、あんな事が出来なかった。言いたい事がたくさん出来た。これも全て紫桃くんのおかげだ。言わなければならないのは紫桃くんにだ。だから、口を開けたけど、今、目の前に居る紫桃くんは軽く寝ていた。
「寝ちゃってるね」
紺野はんが気付いてそう言った。
「うん、そうだね」
この気持ちは何だろう。紺野はんの時とは違う、穏やかな気持ちになる。もうすぐやって来るあの季節と同じような不安感もある温度に似ていた。




