電車の中で
私は一人で行くのが嫌でそれほど早くもない時間の電車に乗る。今は冬休みであまり混んでもいない。
次の駅で紺野はんが同じ電車に乗って来た。彼も私と同じように数日泊まる用の荷物を持っている。
「白見さん、おはよう」
「おはよう、紺野はん」
彼は普通に私の左隣に座った。すぐ降りてしまうのに。
「楽しみだね」
「そうだね」
それで会話が終わると思ったのに、彼は言った。
「白見さんってずっとあそこに住んでるの?」
「ううん、違う。中学までは紫桃くんとかアカネちゃんが住んでた所の近くに住んでたんだけど、高校生になる前にあそこに引っ越したの。お父さんがもっとゆっくり過ごしたいって言ったから」
「ふうん、じゃないと中学の時にしとーと会わないよね。偶然なんて滅多にないし」
「そうだね。私、別に校区外に行ったわけじゃないよ。たぶん、紫桃くんの方がそこを歩いてたんだよ」
「そうか、きっとその彼女さんが校区外の人だったんだろうね、しとーは律儀だから」
「そうかもしれないね」
彼は全く気にしてなかったけれど、今までの疑問点を解決して楽しむ為に訊いたんだろうけど、私としては聞いてほしくないことだった。
「あ、別にそれでどうこうってわけじゃないよ。ただ、ずっと疑問だったから。何であそこに住んでる白見さんがしとーの住んでる所に来たんだろうって」
「そうだよね、不思議だよね」
「あ、もしかしてしとーに彼女がいたこと知らなかった?」
「え?」
何故か、彼が私の顔をじっと見て来る。
悲しくなる顔を見られたくない。
「ううん、大丈夫。知ってたから。中学の時のことはよく知らないけど。高校では噂になるくらいだから、知ってた」
「そうか、そうだよね。二、三日でいなくなる奴だからね、あいつ」
ふふ……なんて、笑い話だろうか。
「紺野はんにもいるの? 彼女さん」
「居たら行かないよ」
「そう、だよね」
私は何を訊いているんだろう。
「まあ、過去にはいたけど。今はいない。白見さんは?」
「いない。というか、今まで本当にそれどころじゃなかったから、いないな……」
落ち込んで来る。どうして彼が今、そんなことを訊くのか理解できない。
「白見さんにも良い出会いがあるよ、きっと」
「そうかな……」
「この先は長いんだから。良い出会いがなきゃ、生きてる意味がない! っていう風に考えた方が良いじゃん。オレはキレイ系美人に会う為に生きてる! ようなもんだし」
「そんな風に言い切れるのすごいと思う」
「そうかな? あいつらの方がすごいけど」
「あいつら?」
「そ、イラスト部の奴ら。リーダーとかさ」
「ああ、あの四人!」
「あの人達はすごいよ、もっと自分を磨いてる」
「紺野はんだって、いろんな絵、描き分けられるし、すごいと思うけどな」
「そんなことないって、あの人達に比べたら」
何だか、だんだん楽しくなって来た。
嫌なことを忘れて楽しむ――という練習な気がした。
「さて、降りようか。しとー達が待ってる」
「うん、そうだね」
私達は電車を降り、新幹線のホームに向かった。




