これを機に
皆が『紺野はん』と言わなくなった頃、紺野君に戻って良かったな、と思った頃、白見はやって来た。
「今日はどうした?」
「うん、あのね、何か、ここに居て下さいって」
彼女の目が見ていたのは部員の女子だった。
メガネめー! こちらを見て、微笑している。
「何かあるのかな? 紺野はんは知ってる?」
「いや、知らないな」
メガネがメガネキャラ以外にもときめくとは思ってもみなかった。
「紺野はんの絵、見ても良い?」
やることがないのか、彼女はそう言う。
「どうぞ」
かわいいね、とか、かわいいね、とか、かわいいね……しか彼女が言わないことは知っていた。
その『かわいい』の言い方がいろいろあってかわいいということだ。
「ぐふふふふー」
この声、この笑いはリーダー!
「ねえ、白見さん」
「はい!」
部室に入って来てすぐにこちらに来るとは、まさか! あいつら!
「私達もー、紺野君のこと、白見さんが言うように『紺野はん』って呼びたいなー」
どうかな? という顔で覗き込む。
「え、私が言い出したことだけど、それを許可したのは紺野はんで」
ほう、ほう……とメガネが頷く。
チッ、やられた。
「分かりましたよ、もうどうぞ、好きなようにお呼びください」
「シャー! 今日から紺野はん呼び、決定じゃー!」
「来たー!」
野太い声、メガネ、そんな声も出せるのか、芸達者だな、おい。
「ごめんね、なんか、巻き込んじゃって」
「ううん、おもしろい。ワイワイするの初めてだから楽しい」
ぽそっと言われた言葉だったけど、これをしとーが聞いたらどう思うだろう。
まあ、教えないけど。
「さあ、皆にも教えないとね」
そう言って、黒板に書き描きされたのはデッカイ頭のカラフル棒人間、その頭の所に『今日から、紺野はん呼び可! 皆、呼ぼっ、紺野はん!』という大々的なカラフルなお知らせがあった。さすがに先生が来る前には消してほしいと思う。




