街の画材屋さんで
本当に落ち着いたのは紺野はんと初めて電車に乗った週の次の日曜日だった。
何となく、高校のある街に行って、デパートに入った。
何を買うでもなく、うろうろとする。
家に居ると勉強、勉強と言われるし、少しくらい息抜きしたい、私だって。
だから、歩いているのだけど。視線が気になる。何か知ってる視線だ。クラスの女子の視線とは違うし、紫桃くんのとも違う。アカネちゃんのでもないし、誰だろう。
「白見さん」
答えは簡単だった。
「紺野はん」
何で? という顔をまたしてしまったらしく、ぷぷ……と笑われてしまった。
「ここ来るの?」
「いや、楽しくはないんだけど、何かないかと思って」
「まあ、時々何かやってるよね」
紺野はんは画材屋さんから出て来たようで、その店の袋を持っていた。
「何買ったの?」
「ん、いろいろ。部活で使うのばかりかな。この辺で大きい所ってここくらいしかないから」
「ふーん」
って何聞いちゃってんの! 私。
「イラスト部ってさ、白見さんの使ってる空き教室の隣が部室なんだよね。知ってた?」
「え」
知らなかった。
「だろうなって思ったよ」
この顔を見て苦笑させてしまった。
「あの、ごめんなさ」
「謝ることではないよ。それくらい知られてないんだろうし、美術部の方がちゃんとやってるしね」
紺野はんは特に気にしてる風もなく言う。
「今度、行っても」
「良いよ、来なよ。特に今は何もないけど、白見さんみたいな人には居やすい所だよ。何かあったら、オレ以外の皆も力になってくれると思うし」
「うん、そのうち行く」
「そっか、じゃあ、言っとかなきゃな、リーダーに」
「リーダー?」
「そう、次期部長。もう、部長なのかな。女子だけどね。オレ以外皆女子なんだ」
「へー」
感心してしまった。私だったらさっさと辞めている状況だ。
「まあ、ワクワクするような所でもないし、顧問の先生は男だしね。好きな事やれるだけ良いかな」
「ふーん、そうなんだ」
「あんまり興味なさそうだね」
「あ、ごめんなさい」
「まあ、その通りなんだけど、好きな人には好きな所かな」
そういう場所があるだけでもありがたいと思う、私は少し紺野はんが羨ましくなった。もう二月も中旬だ。




