白見の話
赤根が気を遣ったのか、素で言ったのかは分からないが、出て行ってくれたおかげで空き教室に二人だけになった。
「あ、あのね……」
「どうした?」
もじもじと、白見は俺の顔を見て言う。
「お母さんがね、一緒に行くって言い出したの」
「は?」
俺は素の声が出てしまった。
「そうだよね、そうなるよね。分かってたの、こうなること……」
白見はぽつぽつと話し出した。
「いくら修学旅行的なものに行くからって、写真屋さんのように同行するのはやっぱり、ダメだよね?」
言いながら、白見の声は小さくなって行く。
「止めてよ、って言ったんだけど、行く気満々で」
白見は困っていた。俺が言えることはこれくらいしかなかった。
「心配いらないって伝えれば良いだろ。写真屋さんは楽しい思い出撮る為に行くんだ……それに、たぶん赤根や紺野もいるから写真屋さんはいらないって」
「紺野さん? 同じクラスの?」
「ああ、やっぱり、大勢の方が楽しいからな。……ダメか?」
恐る恐る訊いた。
「ううん、紺野さんって、明るいし、いつも元気に笑ってる人だよね?」
「そうだな」
少し考えた末、白見は言った。
「良いんじゃないかな……、紫桃くんがそうしたいなら、私は良いと思う。紺野さんなら」
反対するかと思ったのにしなかった。それどころかあいつのことをよく見ている。心配よりも今は楽しむ方が重要だ。赤根がとことこ帰って来て、終わったの? という顔をして俺達を見ていた。




