努力の使い道
冬の放課後、エアコンがあるからと言っても寒い空き教室で勉強をし、家に帰り、また次の日、学校に来る。そして、授業に出て昼休みを待つ。穏やかな昼休みを過ごし、午後の授業に出て、放課後。
白見はまたあの空き教室に行くみたいで、俺も付いて行くことにした。
こんな風に白見と歩くのは久しぶりだ。前は勝手に付いて行って、今日も勝手に付いて行ってる。でも、前と違うのは木造の旧校舎に入った途端、白見が話しかけても良いよ、という雰囲気になってくれたことだ。だから話した。自分達のクラスの連中がいない校舎に安堵を見出している。もし会ってしまっても白見は黙って俺から離れて歩くだけだ、それはもう随分前から分かっていることだし、俺もそれを求めているかもしれない。心のどこかで。
空き教室に着くともう赤根が居た。昨日よりも寒い廊下に立っている。「早く開けてよぉ……」と白見に泣きつきながら白見が鍵を開けるのを待っていた。そして扉が開かれると一目散に走って、空き教室のエアコンを入れた。ピ!
「あったかーい」
まだ暖まってもいないのに平気で言う。
そして定位置となっている自分の席の机の上に荷物を置いた。
昨日のように勉強が進み、少し休憩をしようとなった時、白見が口を開いた。
「アカネちゃんも紫桃くんに誘われて修学旅行的なものに行くって聞いたんだけど」
最後まで言わせないで赤根はその答えを出した。
「うん、お前も少し人に慣れなさいと、あのおっかないお父様が許してくれたの。お金なら修学旅行で使ってないのがあるだろうって」
どんなお父様だ、と思ったが白見は自然と受け入れていた。
「そうなんだ、うちもだよ」
白見がちらっと俺の方を見て来た。何だろう。
「どこに行くのか? とか、まだ決まってないけど、大丈夫?」
またちらっと見て来る白見の顔が本当に心配していた。
「ああ、紫桃君のお金がないとか?」
その理由を付け足され、即座に俺は努めて明るく言っていた。
「それは大丈夫! バイトして貯めました!」
「バイト?」
「いつ?」
ぽかんとした赤根と少し困惑とした白見がおもしろかった。
「去年の七月から最近まで着々と」
「ちゃんと届け出した?」
「出したよ。六月の終わりぐらいには出してた」
疑って来る赤根とばかり話していて、白見は何も喋らない。
「ちょうど良かったんだ。紺野も一緒にバイトしてたし、だから、行こう」
何かカッコイイとか思ってない? と赤根に言われたが、無視した。
白見が今にも泣きそうな笑いそうな、ごちゃ混ぜの表情をしたからだ。
*
嬉しかったんだと思う。
だから、こんな表情のまま、黙りこくっていた。




