放課後の空き教室の前で
紺野の協力を得た放課後、俺は空き教室に向かった。そうすれば会える気がしたから。
「あ、紫桃君」
赤根だった。授業で分からない所でもあったのか、数冊のノートと学校指定のカバンを持って空き教室の前の廊下に立っていた。
「開いてないのか?」
「うん。瑞穂ちゃん、教室に居た?」
「いや、白見はいつも四、五番目には教室を出るから」
「早いんだね」
「ああ、俺よりも早い」
数分の時が流れた。それでも白見は来ない。
「遅いねー、瑞穂ちゃんに頼まれて持って来たのだけど」
「何をだ?」
「ノート」
「どうして?」
赤根と目が合った。
「なんか分からない所があるからって」
「科としては赤根の方が上だからな」
「そうだね、でも、瑞穂ちゃんのように真面目に授業に出てないからね。教えられるか不安だよ。それを補うことはしているけれど」
赤根との話はこれくらいにした方が良い。話すことがなくなって来た。
「そういえば」
赤根は本当に今、思い出したように言った。
「瑞穂ちゃんとどこか行くの? 紫桃君」
思いもよらない言葉だった。
「あ、ああ……。でも、それは二人で、じゃなくて、お前も行くか?」
「え! 良いの!」
目が輝くように喜んでいる。
「だけど、三人じゃない。俺のクラスの奴も一緒だ」
「それは瑞穂ちゃん知ってるの?」
「いや。今から言う。だから、来たんだ」
「そっか……。悩むね……。瑞穂ちゃんとだったら行きたいかも! って気持ちだったんだけど」
「じゃあ、行かないか?」
「ううん! 行くよ! あ、でも、親に聞いてみるよ!」
白見と同じようで同じではない。少し顔がにやけている。赤根とは中学が同じなだけで、同じクラスになったことは一度もなかった。だけど、赤根の名前は知っていた。悪い意味で有名だったからだ。でも、それはこちらの都合だ。赤根は悪くなかった。だけど、周りの人間がそうするからそう扱うしかなかった。いや、少し悪い所があったか。好きでないものにはとことん鈍い。赤根と話すことが本当になくなってしまって、白見が来るまであまり上手くない吹奏楽部の音を聞いていた。
白見はその後、五分くらいしてから小走りにやって来た。
「先生がいなくて遅くなっちゃった、ごめんね」
いつもやっているように施錠を開ける。
赤根が白見よりも先に空き教室に入り、俺も入ろうとした。その時、ガッと腕をきつく掴まれた。
「話があるの」
それは予期せぬ事だった。




