友人として
三学期が始まった。いつものように昼休みになると白見は教室を出て、職員室に向かい、鍵を借り、空き教室を開ける。そして、赤根が来るのを待つ。俺はいつも適当に行ったり、行かなかったりを繰り返している。それで、白見が怒ることはないし、困ることもない。だから、今日、昼休みの教室で紺野とこんな話をしても良いはずだ。
「白見さん、いつもどこに行くんだろうね? 昼休み以外の時はずっと教室に居るのに」
確かに本ばかり読んでいる。時々、トイレにでも行って戻って来ると席を乗っ取られていて困っている時があるが、周りの人間がそれに気付いて無言で退いたりしている。それにしても紺野が白見に興味を持つとは珍しい。
「しとーは知ってんでしょ?」
答える必要があるのだろうか。
「まあ、聞きたくもないけど」
紺野はそう言って自分の席の机に顔を突っ伏した。
「なあ」
そのまま隣の席に座ったまま俺は話した。周りには誰もいない。もう皆、ご飯を食べ終わっている。
「紺野は白見と無関係だよな?」
あ? という風に紺野が少し俺を見るように顔を上げた。
「まあ、そうなんじゃないの? クラスの女子が中心となってやってるそれに対してどうこう思わないよ。勝手にそうしてるのは本人達なんだからさ」
ここまで言われてしまうと本当に白見が言っていた人に近いような気がした。
「紺野は白見をどう思う?」
また、あ? という風に顔を上げる。今度は完全に起きた。
「別に。何にも思わないけど」
さらっと言われた言葉に俺は安堵した。
「白見さんの為に何かしたいの? しとー」
勘が良い。高校生になってから友達になった奴だが、欲しい言葉をくれる。
「バイトで貯めた金でどこかに行きたいんだ。白見ともう一人の女子と俺とお前で」
俺は前にある消し残しのある黒板を見た。この黒板のようにまだきちんとしてない所があるかもしれない。けれど、こんな事を頼めるのはこの学校でこいつしかいなかった。
「良いけどさ。しとーは、白見さんのいじめをなくすことで、過去の自分の汚点を消そうとしてるんじゃないの?」
何気なく言った話を覚えていた。紺野と仲良くなり始めた頃にさらっと言った思い出話だった。その時は笑って終わらしてくれたが、今は。
「そうかもしんねぇ……」
白見と少しずつ関わって行く、それで消えることではない。償いなのか、これは。違うと言いたい、だけど。
「優しさは、最後には自己満足になるんだよ、知ってた? しとー」
それでも、紺野の顔に背き、俺は黒板を見た。
彼女が少しでも元気になって普通に学校に来れるようになれば……と思う自分がいるのを自覚した。消し残しはまだある。




