珍しい彼女
空き教室、ここに来るのは本当に久しぶりだった。
いつ来ても白見が居る。そう思って来たのに今日は居なかった。
でも、教室は開いている。だから、入って待つことにした。きっとすぐに戻って来る。その証拠にお弁当と水筒が机の上に置いてある。
少ない数の椅子の一つに座って待つ。赤根はまだ来てない。
数分もしないうちに彼女は来た。「あ」と言って教室に入る。
彼女は何だか言いたそうに口をもぞもぞさせ、こちらを見た。
目が合った瞬間に聞こえていた。
「紫桃くんって、選択、音楽なの?」
「そうだけど」
珍しく彼女の方から声をかけて来た。
「そうなんだ」
それで会話を終わらせたくなくて俺は言った。
「親がさ、音楽関係で働いてて、母親はピアノの先生でさ」
「じゃ、紫桃くん、ピアノ弾けるの?」
「まあ、一応。でも、俺的には運動の方が好きだから」
「そうなんだ」
「白見は来年の選択授業、何にするんだ?」
「分からない。紫桃くんは?」
「俺は……、一年の時もそうだったけど、美術」
「何で?」
「サボれそうだから」
彼女はそこで会話を切って、席に座った。
「白見?」
「何?」
「白見は真面目な教科だろ?」
「うん、そうだね。情報とか良いかもって思うんだ」
本当に白見は真面目なやつだ。行事以外は。
「白見は行事が嫌いなのか?」
「ううん、そんなにはね……。家族で行く行事は好き」
少し悲しそうにさせてしまっただろうか、だけど聞かなければならなかった。
「もし、修学旅行的なものに行けるとしたら行くか?」
「え……」
「いや、白見が嫌がる要素はない。と、仮定してだけど」
「そうだね、私が嫌がる要素はクラスの人達かな……。何も関わってない人だったら良いけど、そういう人ってほんと少ないから」
「そうだな……」
彼女の希望は通らないかもしれない。それでも、と思う時がある。
だけど、今はその時ではない気がして、その話を終わらせた。




