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二人の思い
「こんな所でこんなことを言うのは良くないって分かってるけど、言いに来た」
どうしてここで? と思って彼の目を見る。その目はずっと私を見ていた。
いつも見て来る人の目ではなくて、違う感じの目だ。
「お前の盾になりたいんだ」
何を言っているのか正直分からなかった。
*
「そのせいでお前をもっと苦しめてしまったと思う! ごめん!」
クラスの女子の視線が今まで以上に冷たく、彼女を見ていることに気付いていた。無視という無視にいじめは含まれいている。
彼女の顔を見るのが怖かったが、謝る方が優先で、頭を下げた。それよりも先に彼女の声が耳に届く。
「紫桃くん……、相手に伝わるとは思わないで、自分が盾になっていましたなんて、言ってくれなきゃ伝わらない!」
彼女は続け様に言っていた。
*
「自己満足の正義なんていらない」
涙が出て来そうなのを堪えて言った。なのに、彼は「ああ、そうか」とだけ言って、空き教室から出て行った。
「紫桃くんなんて嫌いだ」
それが今の本音で、声を殺して幾筋も出て来るこの涙も本物だ。




