九月初めの昼休み
昼休みが始まったのと同時に、白見が教室から出て行くのが見えた。
彼女はきっとあそこに行く。
だから、急いで買ってあった弁当を持って追いかけた。
きっと職員室に毎回鍵を借りて返してを繰り返しているから、借りることがない俺の方が早く着く。
だから、そうしたんだ。
君は怒るかもしれないけれど、それでも伝えたい思いがあった。
*
久しぶりの空き教室。そこに紫桃くんも居た。トイレに行っている間に来たらしい。まだアカネちゃんは来てなかった。
おう、とも、何とも言わない紫桃くんに私は困った。
お弁当を広げてあった席に着く。
紫桃くんはいつもアカネちゃんが座っている席を知っていて、アカネちゃんの向かいの席になるように座っていた。そうすると私が誕生日席になってしまうから止めてほしかったけれど、何も言えなかった。
何だかちらちらと見られている気がして、気になった。それが伝わったのか彼は口を開いた。
「髪、結ばないの?」
「え?」
紫桃くんの顔がとても近くにあってびっくりした。無意識にその事を確認しようとしてなのだろうけど。
「校則的には、そろそろ結ばないといけない長さだろ? それ」
確かに、ボブだったはずの髪は肩に付くようになって来ていた。
「大丈夫、先生に言われる前に美容院に行って、あまり変わったことが分からないように切ってもらうから」
些細な変化もしてはいけない気がして、そうしてしまっている。
クラスの女子の中には平気で校則違反をする人がいるけれど、私がそれをしてしまったら、負けになる。だから、制服だってきちんと着る。
あんまり目立たないように生きて来たのに、近頃、紫桃くんのせいでいろんな人に見られている気がする。
それでも良いと思えるようになったのはいつからだろう。今まで以上に気にしないようになったり、気にしたり……、ぐちゃぐちゃだ。
*
普通に話せて良かった……と思ったのも束の間、こんなことを言う為に来たのではないと自分を奮い立たせてみたが、無理だった。
蒸し返すのが良いのか、分からなくなって来た。
次の手は? と考えるが何も上手い事が思い浮かばない。
そうしていたら、白見が口を開いた。
あの事については触れない方が良いらしい。
それは彼女の話す内容で分かった。
避けている。
だから、俺はまだ話す時ではないのだ。
機会をうかがえと言われてる気がした。




