昼休みの読書
赤根から聞いた。白見がこんなことを言っていたよ……と。だからってわけじゃないけど、久々にあの空き教室へと俺は向かった。
彼女はやっぱりここに居た。席に座って本を読んでいる。少し開いたドアを全部開け、俺は中に入った。
「白見、元気か?」
うわ! という感じで見られた。読んでいた本をしっかり握ったまま、うん……と弱々しく言った。
「夏バテか? 元気ないじゃん」
「うん、そうかも、ね……。もう九月も中旬だけど」
彼女の読んでいる本を見る。小説ではない。ライトノベルだ。
「それ、赤根に借りたのか?」
「うん、でも、紺野はんも読んでるって、この前言ってた」
聞いてもいない紺野の名前が出て来た。
「それ、おもしろい?」
「うん、まあ……」
歯切れが悪い。
「どんな話?」
「なんか、異世界の話でね、タイトルが『ボクノ家系図』っていうくらいだから、家系図を作って行く話なんだけど。主人公が『ボクノ』っていう姓なの。それでその主人公は、いろんな種類の種族の血を持つ少年のようなハキハキとした物言いの男でね、そんな自分の家系図を作る為に、一番最初の役所で世話になった人間の男を旅のお供にするの。それには理由があってね、少年のような男のボクノは、これからの事を考えると、そういうのに詳しい人が必要だな……で、来いよ! って言って、役所で働いていた男は、こいつ、大丈夫か? っていう判断っていうか、ボクノの見た目はそこら辺に居る人と同じなんだけど、かなりの妄想癖とか夢見がちな空想とか、そういうあらゆる面で心配……みたいな理由で一緒に旅をすることになるんだけど。一番の理由は、これ以上の迷惑を出させない為に仕事だって辞めました! っていう責任感なのかなって。で、探し出して分かった家系図のその人物達から、あらゆる妄想をしては、こうして自分が生まれて来る前が出来たんだっていう男の二人旅の物語で、今、読んでるのは三巻目なんだけど、二巻には旅の仲間に女性と女の子が加わって、華やかになった! って紺野はんが喜んでた」
「そうか」
「うん!」
それなりに楽しんで読んでいるようだった。これなら、その一巻を買わなくても良いくらいに、ネタバレをされた。
そして、淡々と流れる昼休みの時間。本当に久しぶりに白見と話したのに、これで終わりなのか、他にないのか? 高校生らしい話題……。
「受験勉強、頑張ってる?」
「うん、ほどほどに」
「そうか、俺は夏期講習から塾に通ってる」
「知ってる、紺野はんから聞いた。夏休みに」
「会ったの?」
はっと、彼女は言ってはいけないことを言ってしまった雰囲気になった。
「あの!」
「良いよ、全然。偶然会うこともあるだろうしさ」
大きな心で受け入れよう。でも、こんな時間だったっけ? この時間……。
もっと、こう……何かが変だ。




