自分の思い
七月中旬、終業式があった。
夏休みは八月の終わりまでではない。
その間に数回、登校日もある。
部活をやっている子はもっと学校に来るのだろう。
*
終業式は半日だ。
つまり、あの空き教室に行かない。
だが、幸いなのか、今日は彼女が日直だ。
つまり、彼女は一人最後まで教室に残って日誌を書くだろう。
その時だ、言うのは。
「あの、白見?」
「うわ!」
目の前で言ったわけでもないのに、驚かせてしまった。
「日誌書けた?」
「う、うん」
彼女が喋るのは教室に俺と白見だけだからだ。俺は少し後ろの出入り口付近にある自分の席から離れて教室の真ん中にある白見の席に近付いた。くじ引きだから何も文句は言わなかったが、ここはちょっと白見にはきついような気がした。
帰宅部二人が残っているのも悪いと思ったのか、さっさと白見は帰る支度をし出した。
「白見」
「何?」
ここで言おう。
「白見は知らないかもしれないけれど、俺、中学の頃の白見に会ったことがある!」
「はあ……?」
きょとんとさせてしまった。
だが、これからもっときょとんとさせてしまうだろう。
「その時の白見、いじめられてた。でも、俺、助けられなかった。偶然、見かけたんだ。道端で一人の少女が困っているのに俺は素通りした」
「だから?」
白見は今までの白見より冷たい感情をむき出しにして、言った。
「紫桃くんに関係ない事だったんだから気にしてない。それに今更だよね?」
本当、そうだ。
「紫桃くんがわざわざ残ったのはその為?」
「違う、他にもっと」
ガラッと教室の扉が開いた。二十代後半の男、大体の生徒から好かれている担任、名取が立っていた。
「あ、お取り込み中? でも、教室、閉めるから出てけ」
ずかずかと教室にやって来た。窓は全部閉まっているか、確認する。
「名取先生、これ」
「お、さんきゅー」
白見から日誌を受け取ると、「ほら、出た出た」と教室から俺を追いやった。
追いやられる前に出ていた白見はさっさと下駄箱に向かって歩き出す。
何か言われる前に俺も後を追った。だが、途中で紺野が現れ、待ち伏せていたようにわらわらと仲間に囲まれ、それ以上何も言えずに白見と終わらせてしまった。
これは二学期前の登校日にリベンジだ! と思ったが、さっさと帰って行く彼女に追い付けず、また紺野に邪魔をされ、俺は二学期までお預けとなった。




