一日明けて
放課後、日直の日誌を職員室に持って行き、帰る為に廊下を歩いていたら「紺野君」と呼び掛けられた。そういうのはほとんどない。大体が『紺ちゃん』だ。
それに久しぶりに聞く声にオレは少し驚いた。あの時以来だ。
「紺野君、こんにちは」
挨拶をして来るとは、あの時は全然そんな感じじゃなかったのに。
「こんにちは、赤根さんも職員室に用事?」
「そう、でね、昨日、紫桃君に言っちゃった」
「何を?」
「瑞穂ちゃんが言ってたこと」
驚きが声にならなかった。
「『紫桃くんが好き』って。でも、違うってこと」
その先は? と言いたかったけれど、言えなかった。だって、言ったらまた、同じような事が起こる。
「それで、しとーは何て?」
「考えるって」
そうか……としか言えない。だって、それ以上を言う権利がオレにあるのか?
「それは、白見さんに言うの?」
「言うよ」
彼女はきっぱりと言った。
「だって、紺野君だって、知ってて言ったんでしょ? 私があの場にちょっとだけ居たこと。だから、私ならそう言うって言ったんでしょ? 私はね、それを聞いて驚いて逃げてしまったけれど、悪くない言い方だったと思ってる」
それはオレの返答についてか。
「じゃあ、赤根さんは何の為に白見さんに言うの?」
「彼女の為だよ、間違ってるとかじゃなくて、ちゃんと整理させたいの」
「整理が出来てる場合は?」
「余計なこと、お節介で終わっちゃうね」
カノジョは笑って言った。
「紺野君はそれで困らないでしょ?」
「まあ……、そのはずだけど」
カノジョはとても間が悪い。しとーがそう言っていたのを思い出した。




