誕生日プレゼント
紺野はんにもらった絵には、ハッピーバースデーという字に赤いイチゴの丸い白いケーキ、あの日見た七夕の飾りのような煌く色鮮やかなテープ、リボンのつけられたプレゼント、その場を華やかにする花と風船……、今まで行った場所や思い出がポップに描かれていた。
彼はその絵について何も説明してくれなかったけど、分かった。
これは全部紫桃くんが絡んでいる。この絵の存在は紫桃くんに言ってないはずなのに。
彼は言った。
気が変わったか? と。変わるわけがない。だって、私はもう、進んでしまったんだ。思いをあきらめたら、また言って良いのかな。好きでしたって。希望のない言葉に何の意味があるんだろう。
「あと、それとは別にこっちはイラスト部から」
そう言って渡されたイラストボードの絵には、あの夏祭りの日のことが柔らかく描かれていた。
「何か、これ描いてたらさ、皆描きたいって言って」
「そうなるように、そこで描いたんじゃなくて?」
「違うよ、家で描きたくなくて、そっちは。まあ、もう部活も行かなくなるからね。最後の思い出? みたいな」
そう言って笑う彼の顔は、ちょっとわざとらしく見えた。
「紺野はん、ありがとう。大事にするね。皆にも後でメールする」
「うん、それが良いよ。誕生日おめでとう」
「ありがとう」
どんな笑顔になったのか、自分では分からない。でも、穏やかな、滑らかなクリームみたいにとろっとしていたに違いない。この気持ちを紫桃くんはさせてくれない。きっと、どろっとした味のきついチェリーパイみたいになるんだ。
「紺野はん、電車」
「うん」
そう言って、二人で立ち上がって、同じ電車、同じ車両に乗る。
そして、口当たりの良い会話をして別れる。それが今の私の理想だ。




