言われたところで
昨日と同じ時間帯の放課後、赤根と会った。
「やっぱり、閉まってるね」
「今日も本か……」
「そうみたいだね、瑞穂ちゃんはよく本読んでないって言ってるけど、たくさん読んでるよね。でも、そう言うってことは本を読むっていうより、見ている感じなのかな? だからそう言うのかな」
何故そんなことを空き教室の前の廊下で言うのだろう。
「赤根は何でそんなことを言うんだ?」
「だって、聞いちゃったんだ」
「何を?」
「紫桃君が好きだって。でも、それは女子の皆が思う『好き』とは違うんだって。紫桃君は優しいからって」
赤根はそれまで見ていた廊下の景色から俺の顔を見る。
「お前、何言ってるんだ?」
「この前、ちゃんと最後までは聞かなかったけど、ここで聞いたことだよ」
嫌みもなく、素直にそう言った。
「赤根、お前……」
目の前の空き教室を見る。この空き教室は木造だ。いや、コンクリートの部分の方が多いけど、このドアは木で出来ていて、ちょろっと中を見ることができる少し汚れた透明ガラスがある普通のやつだ。だから、すぐ近くに行けば入らなくたって、少しの声なら聞ける。
時々、そんなことがある。
だからって……。
「お前、何言ってるか分かってるか?」
そう言っても赤根は何も言わなかった。ただ俺の顔を見る。
その間に俺は嬉しくなったり、いろいろと複雑な気持ちになった。
だって、それこそ本人から聞かなきゃいけないことなんじゃないのか?
赤根はいつも間が悪い。だから、嫌なんだ。
「ねえ、紫桃君はどうするの?」
そう言われても困る。
「ねえ?」
「考えるさ」
それしか、今は言えなかった。




