朝
教室に着くと、彼女がもう居た。一学期から変わらない席でじっと本を読んでいる。何人か人が居たが、彼らは真面目な方の人間だから、白見に声を掛けても、どうこう言わないだろう。
おはよう、とか、言っても良いじゃないか……と思えて来た。
だから『おはよう』と言おうとしたのに、「よ!」と声を掛けられた。
振り向けば同じクラスの奴で、その後ろに紺野が居た。珍しい、こんな朝早くから来るなんて。
「早いじゃん?」
そんな言葉に紺野はちょっと困っていた。
「まあ、早く起きちゃったからね、バイトもしなくなったし、規則正しく生きれるようになった感じ?」
やけに朝から話すようになったと少し感心した。
「良かったじゃん、それで、楽しかったか? 夏休み」
「あ、まあ……ぼちぼちと……」
ちらっと白見の方を見た気がした。けど、気のせいだ。だって、紺野は白見のことをそんなに良く思ってないと思うし、白見もこちらを一切見ない。ずっと本だけを見ている。
彼女の場所は、この教室の出入り口付近から奥、窓側の席の真ん中辺。一学期の終わりに何故か席替えをし、決まった席だった。
もしかしたら、先生が二学期始めに席替えをするのが面倒だと思って、してしまった可能性もある。
「数か月はこのままかな?」
「は?」
紺野と一緒に入って来たクラスメイトが答え、オレは慌てて言った。
「いや、席がね」
「何だよ、もう飽きちゃったの? この席良いじゃん。周り、大体女子よ?」
「まあ、でもさ、うるさいっていうか……」
ぜいたくー……なんて言う言葉を聞きながら、もう一度白見を見た。そしたら、紺野が白見を見ているのに気が付いた。何でだろう? そう思って、聞こうと思ったが、「あっちー、やっぱ風ないわな」と言った紺野の言葉で窓を見ていたんだと思った。
「まだクーラー入れてないの? 入れろよな」
そう言って、クラスメイトの男がクーラーの電源を入れる。開いてる窓閉めろーと誰かが言う。皆、そこは団結力が良い。けれど、彼女はじっと本を読んでいるだけだった。動かない。彼女は俺に気付いているだろうか。疑問だ。




