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白フードの正体

 それぞれの戦いに決着がついた。

 俺はセリナとシヴァに、≪聖治癒(シ・エリエル)≫の魔法を使ってやる。互いに重傷を負っていたが、瞬く間に治った。


「アムル」


 シヴァが俺の名を呼ぶ。


「リーズを助けてくれ。リーズだって、こんなことをしたくてやったわけじゃないんだ。それに、もっと生きていてほしい。だから頼む」


 それはシヴァの心からの叫びだった。

 俺は肩をポンと叩いてやる。


「あぁ、任せろ」


 血を流して意識を失っているリーズガレットにも、≪聖治癒(シ・エリエル)≫を使う。

 ついでに≪創始の聖眼≫で、リーズガレットにかけられていた洗脳と命名魔法を解いた。


 そこで俺は、あることに気がついた。


「シヴァ。リュニエは二刀流と言っていたな」


 シヴァはこくんと頷いた。


 俺はリーズガレットの身体に手を突っ込むと、ある一本の剣が奴の身体と繋がっていた。それを強引に引き抜く。

 異様な形をした魔剣だ。


「これがもう一本の魔奪剣だ」


 俺はそれを異空間にしまう。


「な、なんで魔奪剣がリーズの身体に……?」


「さぁな。それは玉座でふんぞり返っている魔王に聞いてみれば分かるんじゃないか?」


 俺たちは白フードに目を向ける。

 

「魔獣の王と我が右腕を倒すとはな。どうだ?俺の部下になってみる気はないか?」


「俺を殺しておいてよく言うよ」


「これだけのことをしておいて、はい、なります。なんて言うわけないでしょ」


 二人は嫌悪の目を向けた。


「それだけの実力を持っているとは思わなかったのだ。魔王の息子と、そして……そこのお嬢さんも人間とは思えないほどの実力だ。宝の持ち腐れだな」


 白フードは残念と言いたげに肩をすくめる。


「まぁ、無理に話せとは言わん。大体予想はついているからな」


 身体にリュニエが埋め込まれていたことで、なぜあの魔法が、リーズガレットに機能しなかったのかも説明がつく。


 くくくっと白フードは不気味な笑みを見せる。

 

「セリナ。シヴァ。俺の側から離れるな」


 フードの奥から両目を覗かせる。

 その瞳は純黒に染まっていた。


 ≪終焉の魔眼≫だ。

 その場で倒れ込んでいるリーズガレットを魔法で浮かせて、俺の近くまで持ってくる。

 こちらも≪創始の聖眼≫で対抗する。互いの力が拮抗し、相殺された。

 

「何度やっても無駄だ。創造を掌る≪創始の聖眼≫と崩壊を司る≪終焉の魔眼≫。それは互いに相殺される」


 だが、魔法祭のときよりも≪終焉の魔眼≫の効力が上がっている。白フードの身体に馴染んできたのか?


「それに今、リーズガレットすらも≪終焉の魔眼≫で崩壊させようとしていたな?」


「あぁ。一度負けた者など、魔王の右腕として相応しくない。この後、どうせ殺すつもりだったのだから、早いか遅いかの違いだ」


 ノヴェンレビィアを強く握りしめ、シヴァは忌々しそうに白フードを睨みつけた。折れた刀身からドス黒い魔力が溢れ出し、魔剣を形成していく。


「シヴァ」


 俺はノヴェンレビィアに手を当てて、魔力制御する。

 シヴァはハッとして、深く深呼吸。俺が手を離しても魔力制御はできていた。


 俺はカリュエヴァマを異空間から取り出す。

 白フードも立ち上がって、鞘に納められていたエベルスメイを抜く。


 互いに構え、間合いをはかる。

 最初に動いたのは白フードだ。床を蹴って、エベルスメイを振るう。俺はそれを難なく受け止めた。


「お前が誰なのか、ずっと考えていた」


 神創剣カリュエヴァマと神滅魔剣エベルスメイ。剣の性能、魔力はほぼ互角。つまり勝敗はその使い手の技量で決まる。


 俺は打ち払い、白フードに突きを繰り出した。

 白フードはそれを避けるも、微かにフードに掠った。しかし、魔法が付与されているのか、掠った箇所のフードは自動で修復していく。


「魔城ゼルレタを中心とした、シンベルファルスに張り巡らされているさまざまな魔法。あれは極めて特殊なものだ。相当の魔法に精通していて、尚且つ相当の実力をもつ魔導師ではないと、展開、維持することはできない」


 少なくとも、一度に五つ以上の魔法を展開している。そんな魔導師は、三百年経った今でも現れることはほとんどないだろう。それだけの芸当をやってのけているのだ。


「それが三百年後、さらに強化されていた。展開、維持するだけでもかなりの魔力消費にも関わらず、それを強化するなど本来はあり得ないのだ。それこそ、膨大な魔力の持ち主から、魔力を奪い取らなければな」


 俺は飛んで、ノヴェンレビィアを振り下ろす。

 白フードは受け止めるも、床に左膝を突いて耐えた。


「次に、ベイラムとバルド、そしてリーズガレットに施した洗脳についてだ。≪記憶追跡(ハウマ)≫で、ベイラムの記憶を辿った。そこにはお前がいて、ベイラムに対して何かを言った後、ベイラムの様子が一変した。ただ言葉に魔力を乗せただけで、普通はあんな苦しみはしない。言葉によって相手を操る。何があるかといえば一つしかない。≪言霊≫だ」


 白フードは足に力を入れて、俺を押し飛ばした。魔力だけではない。身体能力も向上している。


「そして最後。≪記憶改竄(ギル・ゼセル)≫についてだ。おそらくお前は、本来の記憶に繋がるできごとがあって記憶を取り戻したのだろうが、それだけでは≪記憶改竄(ギル・ゼセル)≫は解くことはできない」


 その他に、相当の反魔法の使い手でないといけないのだ。それも無意識で扱えるほどの。


 これだけの条件が揃えば、候補はかなり絞られてくる。


 三百年前、俺のことを憎んでいた人物。

 魔城ゼルレタにさまざまな魔法を張り巡らせ、≪言霊≫と、反魔法が扱える魔導師。


 白フードの攻撃を躱し、俺はカリュエヴァマを斬り上げた。白フードの顔でなく、奴が被っていた白フードだ。深く被られていたフードは外され、奴の顔が露わになった。


 癖っ毛が印象的な魔族だ。

 その瞳は、俺を憎々しく睨みつけていた。


 三百年前、バハルに仕えていた魔界随一の魔導師。

 ベルネル・ヴァーンの姿が、そこにはあった。

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